この記事のポイント
- インフィニオン初となるオープン標準命令セットアーキテクチャRISC-V採用の車載マイコンプラットフォームを発表
- 複数ドメインで共通の拡張性に優れたマイコン基盤を提供し、SDV(ソフトウェア定義車両)の開発を大幅に簡素化
- 最大12の32ビットコアやエッジAI向けユニットに加え、将来的には64ビットMPU機能を取り込んだハイブリッド構成も展開
- 包括的な「DRIVECORE」エコシステムにより、既存プラットフォームからの移行負荷低減と開発加速を支援
共通のRISC-V基盤でSDV開発を加速
Infineon Technologies AG(以下、インフィニオン)は、ソフトウェアデファインドビークル(SDV:Software-Defined Vehicle)やその他のソフトウェア定義(SDX)システム、およびフィジカルAI(Physical AI)アプリケーションに向けたポートフォリオを戦略的に拡大し、車載向けリアルタイム制御を担う業界最先端の「AURIX™」シリーズにおいて、抜本的に新しいマイコン(MCU)プラットフォーム「AURIX RC1」を発表しました。
AURIX RC1は、インフィニオンとして初めてオープン標準命令セットアーキテクチャであるRISC-Vの利点を活用したMCUプラットフォームです。従来のマイコンからマイコンとマイクロプロセッサ(MPU)のハイブリッド構成まで拡張可能で、電力効率に優れたリアルタイム処理能力を提供します。インフィニオンは、ドイツ・ミュンヘンで開催される「electronica 2026」(11月10日〜13日)で本コンセプトを公開し、2027年上半期にサンプル提供を開始する予定です。
近年のSDVでは、車両全体に分散していた機能やソフトウェアが中央のビークルコンピューターやゾーンコントローラーへと集約される傾向にあります。AURIX RC1は、ドメインごとに個別のソリューションを適用するのではなく、共通のMCU基盤を設計チームに提供することで、統合アーキテクチャの開発を簡素化します。これまでのAURIXの強みと、ボディやコネクティビティ、ディスプレイ向けマイコン「TRAVEO™ T2G」ファミリーの特長を次世代プラットフォームに統合しており、ゾーン、ボディ、シャシー制御、バッテリーマネジメントシステム(BMS)、パワートレイン、ADAS(先進運転支援システム)の安全管理からコックピットまで、クロスドメインコンピューティングに向けた拡張性を提供します。
また、RISC-Vのモジュール性を活かすことで、プラットフォーム共通の基盤を維持しながら、アプリケーションごとの要件に合わせて演算リソースや電力管理機能を最適化できます。これにより、特定のドメイン向けに開発されたソフトウェア資産や開発環境、知見を他のドメインでも再利用でき、開発サイクルの短縮に寄与します。
ハイブリッドMCU/MPU構成への拡張と高度な安全性・通信機能
AURIX RC1は、用途に応じて最大12基の32ビットプロセッシングコア、エッジAI向けの高度な並列処理ユニット、および最大40メガバイトの組み込みメモリを統合します。さらに製品ラインアップには、従来のMCUの領域を拡張し、64ビットMPU機能を追加したハイブリッド構成の導入も計画されています。これにより、中央コンピューターへの機能統合トレンドに対応する演算性能の拡張が可能になります。
高い演算性能に加え、機能安全、将来の変化に対応するサイバーセキュリティ、高速な車載ネットワーク機能も網羅しています。自動車向け機能安全規格の最高レベルであるASIL Dに対応する設計となっており、ISO/SAE 21434や欧州のサイバーレジリエンス法(Cyber Resilience Act)などの国際規格・規制に準拠したセキュリティ機構を備えています。さらに、耐量子暗号(PQC:Post-Quantum Cryptography)など、将来的なセキュリティ要件の進化を支えるハードウェア保護機構および暗号アジリティ(Crypto-Agility)も搭載しています。
車載通信においては、CAN-XL、10BASE-T1S、マルチギガビットEthernetといった最先端規格をサポートしています。特定製品にはBRIGHTLANE™ Ethernetスイッチング技術やハードウェアアクセラレーションによるデータルーティング機能が組み込まれており、外付け部品の削減とアプリケーションプロセッサの負荷軽減を実現します。また、最適化された電源ソリューション「OPTIREG™」ファミリーとも連携し、シームレスな電力管理を提供します。
移行を容易にするDRIVECOREエコシステムと業界連携
AURIX RC1は、同シリーズ史上最も包括的なソフトウェアエコシステム「DRIVECORE」によってサポートされます。インフィニオンおよびパートナー企業のソフトウェアを事前に統合したパッケージとして提供することで、既存のAURIXやTRAVEO T2Gプラットフォームからの移行工数を削減し、開発期間を短縮します。
DRIVECOREは、AUTOSAR、オープンソースソフトウェア、機能安全、サイバーセキュリティをサポートしています。ハードウェアの完成前から開発や検証に着手できる仮想プロトタイピング環境や、既存のソフトウェア投資を保護するAI支援型の移行ツールも用意されています。
インフィニオンは車載RISC-Vの普及に向けて積極的な業界連携を進めており、RISC-V Internationalのプレミアメンバーであるほか、合弁会社Quintaurisの創設メンバーとしても活動しています。ソフトウェア、ツール、ミドルウェア、仮想化、システム開発などの業界各社と緊密に連携し、共通の産業基盤の確立と相互運用性の向上を推進することで、量産に対応した車載RISC-Vソリューションの提供を進めています。
出典: 元記事を読む
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