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未分類 6 min · 2026.11.02

【キオクシアホールディングス_FQ2-27_決算深堀記事】|SEMICON.TODAYー売上2兆4,800億円(+453%)

この記事を読むのにかかる時間: 6 分

この会社は、スマートフォンやデータセンターのSSDに入る“データを保存するメモリー(NAND型フラッシュメモリー)”をつくる大手メーカーだ。東芝のメモリー事業を源流とし、四日市と北上(岩手)の工場でメモリーを量産している。
2027年3月期の第2四半期(2026年7〜9月)は、売上が前年同期の5.5倍の2兆4,800億円と過去最高。1株利益(Non-GAAP)は833.94円だった。背景はAIだ。注目すべきは“伸びの中身”で、出荷量の伸び以上に販売単価が上がり、営業利益率は80%に達した。売上に占めるSSD&ストレージの比率も、1年前の55%→65%へ上がった。次の四半期(10〜12月)は円高を吸収し、売上2兆5,000億円・1株利益854.24円を見込む。

かんたん解説:むずかしい言葉を最小限にして説明します。
●NAND型フラッシュメモリー=電源を切ってもデータが残るメモリー。スマホやSSDの記憶部分。
●SSD=NANDを使った記憶装置。データセンターのサーバーやPCに入る。
●出荷量(ビット)=出荷したメモリーの記憶容量の合計。会社は「GB物量」と呼ぶ。
●販売単価(ASP)=記憶容量あたりの平均の販売価格。
●長期契約(LTA)=顧客と複数年の供給量を前もって取り決める契約。
●Non-GAAP=株式報酬などを除いた会社独自の“ならし”の指標。会社の「過去最高」はこの基準。金額は「億円」の概数。
売上(7〜9月)
2兆4,800億円
前年比 5.5倍
前四半期比 +40%
Non-GAAP営業利益
1兆9,883億円
前四半期比 +50%
営業利益率 80%
1株利益(Non-GAAP)
833.94円
前四半期 540.60円
株式分割後の値
コアFCF
1兆4,380億円
前四半期比 1.7倍
自社株買い 8,000億円
次四半期の売上見通し
2兆5,000億円
前四半期比 +1%
営業利益 2兆円

1. まず結論——AI需要で単価が急騰、稼ぐ力が別次元に

要点は3つだ。

①すべて見通しを上回った。 売上2兆4,800億円は前四半期比+40%、Non-GAAP営業利益1兆9,883億円は+50%で、どちらも過去最高を更新した。7月末に会社が示した見通し(売上2兆3,900億円・営業利益1兆9,000億円)も上回った。販売単価と出荷量の両方が、想定より上振れたためだ。

②主役は“値上げ”。 出荷量(記憶容量)の伸びが前四半期比で10%台前半だったのに対し、販売単価は20%台半ば上がった。メモリーをつくる費用はあまり増えていないため、値上げ分の多くがそのまま利益になる。営業利益率は1年前の19%から80%へ跳ね上がった。

③2027年分は“売り切れ”。 会社は、2027年(暦年)の生産能力をほぼ顧客に割り当て終えたと説明する。2028年分も複数年の長期契約で、出荷量の5割を大きく上回る量を確約済みだ。需要の見通しが2年先まで固まりつつある。

2. 会社全体の成績——売上も利益も、見通しを大きく超えた

第2四半期の売上は2兆4,800億円で、前年同期の5.5倍、前四半期比+40%だった。Non-GAAP営業利益は1兆9,883億円で、前年同期の約23倍に増えた。営業利益率は80%に達した。純利益(Non-GAAP)は1兆3,486億円、1株利益は833.94円。本業で得た現金から設備投資を引いたコアFCFは1兆4,380億円と、前四半期の1.7倍になった。8月に8,000億円の自社株買いを実施してもなお、現金が借入金を上回るネット・キャッシュは8,127億円(会社算出)ある。

図1:四半期の売上(棒)と1株利益(線)。次の四半期も高い水準を保つ見通し(緑・点線)。

3. 事業別——SSDが牽引、スマホ向けも急伸

キオクシアはメモリーの単一事業で、売上を用途別に3つに分けて開示している。最大のSSD&ストレージは1兆6,160億円で、前年同期の6.6倍に膨らんだ(編集部算出)。うち6割台半ばがデータセンター・エンタープライズ向けで、この分野のSSDの出荷量は過去最高を更新した。スマートフォンなどに組み込むスマートデバイスは7,889億円で、前年同期の5倍。前四半期比でも+50%と最も伸び、会社は販売価格の大幅な上昇が主因と説明する。

図2:用途別の売上(灰=前年同期、紺=今期)。SSD&ストレージは前年の6.6倍に膨らんだ。

4. 伸びの中身——出荷量より“値段”、原価はほぼ横ばい

この決算最大の論点は、売上の伸びが“量”より“値段”から来ていることだ。前四半期と比べて出荷量は10%台前半の増加にとどまったが、販売単価は20%台半ば、同じ製品どうしで比べると30%台前半も上がった。一方、研究費を除く売上原価は3,881億円で、前年同期の3,028億円から3割弱しか増えていない(編集部算出)。売上が5.5倍になっても費用はあまり変わらず、増えた売上の大半が利益に残る。最先端の第8世代品の生産比率を、2027年3月末に8割超へ高める計画も順調に進んでいる。

図3:四半期の売上(紺)と研究費を除く売上原価(橙)。売上が急増しても原価はほぼ横ばいだ。

5. 地域別——開示はなく、需要の重心はデータセンターへ

キオクシアは今回の資料で、地域別の売上を開示していない。代わりに読み取れるのは、需要が“どの用途”から来ているかの変化だ。売上に占めるSSD&ストレージの比率は、1年前の55%→65%へ上がった。会社によると、スマートフォンのNAND需要は2027年にかけて大きく変わらず、PC向けは部材コストの上昇で減る。その弱さを、データセンター向けのAI需要が吸収している構図だ。なお売上は為替の影響を受け、1円の円高で四半期の売上が約150億円減ると会社は試算する。

図4:用途別の売上構成比(四半期)。地域別の開示はないが、需要の重心はSSDへ移った。

「過去最高」という見出しの内側で起きているのは、メモリーの“値段”の急上昇だ。AIがデータを生み続け、それをしまう場所が足りない——キオクシアは、その“記憶の器”を量産する側にいる。
ワンポイント=キオクシアは“データを保存するメモリー”のメーカー。AIが扱うデータが増えるほど、この会社の製品の出番も増える。

6. 数字を読むときの注意点

■ 「過去最高」はNon-GAAPベース:会社が強調する利益は、株式報酬などを除いた社内指標。IFRSの営業利益は1兆9,947億円。

■ 1株利益は分割後の値:2026年10月1日に1株を3株に分けた。過去の1株利益も、分割後の株数に置き直している。

■ 為替の追い風は弱まる:第3四半期は1ドル161円→157円の円高を想定し、営業利益に約550億円のマイナスと会社は試算する。

■ 多額の納税が控える:未払法人所得税が上期に8,702億円増えた。会社は納税に備え、手元の現金を厚めにしていると説明する。

7. この先のシナリオ

会社は第3四半期(10〜12月)に、売上2兆5,000億円(前四半期比+1%)、Non-GAAP営業利益2兆円を見込む。円高による約550億円の目減りを吸収し、営業利益は4四半期連続で過去最高になる計画だ。出荷量は、一部を第2四半期に売ったことに加え、リードタイムの長いデータセンター向けの一部が第4四半期にずれるため、横ばいにとどまる。そのため会社は、成長の勢いが第4四半期に向けてさらに強まるとみる。1株利益は854.24円と、自社株買いの効果で利益の伸びを上回る見通しだ。

8. この先のチェックポイント

■ 第4四半期の出荷量:会社が「大きく増加」とみる出荷が、計画どおり伸びるか。

■ 販売単価の上昇:2027年も上昇傾向とみる単価が、どこまで続くか。

■ 長期契約の積み増し:2028年分で5割超を確約した契約を、さらに増やすか。

■ 株主還元の次の一手:期末配当の金額と、追加の自社株買いがいつ示されるか。

9. 市場環境

会社は、NAND市場の需給が引き締まった状態が続くとみる。自ら作業をこなすエージェント型AIの普及で、AIの推論で使う“KVキャッシュ”向けや、大容量のQLC型SSDの需要が伸びている。市場全体の出荷量の伸びは2026年に10%台後半、2027年に20%台前半と予想し、会社も市場並みの成長を見込む。北上工場では新しい製造棟(K3)の建設予定地の整備を始め、2029年度中の稼働を予定する。値上げが続く局面ほど、供給が追いついた後の反動にも目を配りたい(編集部の見立て)。

10. 主要データ

注:本文・カード・図は概数、表は一次資料の値。Non-GAAPは会社の社内指標で、監査法人の監査・レビューを受けていない。1株利益は2026年10月の株式分割(1株→3株)後の値。前年同期との倍率と売上原価の伸びは編集部算出。ネット・キャッシュは外貨建て社債をスワップレートで換算した会社算出値。地域別の売上は開示されていない。

11. 出典・ご注意

■ 出典:キオクシアホールディングス 2027年3月期第2四半期の決算短信、決算説明会資料と質疑応答集(IFRS・Non-GAAP)。

■ 見通しは会社の予想:第3四半期の見通しや市場の見通しは会社の予想で、実際の結果は異なり得る。

本記事は公表資料にもとづく決算の解説で、投資を勧めるものではありません。中間期の決算短信は、公認会計士または監査法人のレビューの対象外です。「過去最高」はNon-GAAP(会社の社内指標)ベースを含みます。1株利益は株式分割を考慮した値です。金額は「億円」の概数で、丸めにより合計が一致しない場合があります。投資の判断はご自身の責任でお願いします。

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