この会社は、パソコンやサーバーの“頭脳”にあたるCPU(中央演算処理装置)の最大手だ。チップを設計するだけでなく自前の工場でつくり、他社のチップを請け負ってつくる“受託製造(ファウンドリー)”にも乗り出している。
2026年の第3四半期(7〜9月)は、売上が前年より+21%の165億ドル、調整後の1株利益は0.52ドルと前年の2倍超になった。背景はAIだ。注目すべきは“伸びの中身”で、AIエージェント(自律的に作業をこなすAI)の広がりでサーバー用CPUの需要が急増し、データセンター部門が+78%と伸びた。一方、パソコン部門はメモリー不足のあおりで減収だった。次の四半期(10〜12月)は売上150億〜160億ドル、調整後の1株利益0.25ドルを見込む。
かんたん解説:むずかしい言葉を最小限にして説明します。
●CPU=計算の司令塔となるチップ。
●DCAI=データセンター・AI部門。サーバー用CPUが主力。
●CCPG=パソコン用CPUなどを扱う部門(旧CCG)。
●ファウンドリー部門=製造部門。社内外のチップをつくる。
●18A/14A=インテルの最先端の製造技術の世代名。
●調整後=一時的な損益などを除いた会社独自の数値(Non-GAAP)。会計基準どおりの数値はGAAP。
| 売上(第3四半期) 165億ドル 前年比 +21% 会社見通しを上回る | 調整後1株利益 0.52ドル 前年 0.23ドル 会計基準どおり 0.60ドル | 調整後の粗利率 44.1% 前年 40.0% 会計基準どおり 43.0% | データセンター部門 73億ドル 前年比 +78% 営業利益率 41.5% | 次の四半期の売上見通し 150億〜160億ドル 調整後1株利益 0.25ドル 調整後粗利率 38.0% |
1. まず結論——AI時代に、CPUの出番が戻ってきた
今回のインテル決算は、売上の伸びより“どこが稼いだか”に注目すると読みやすい。部門ごとの明暗がはっきり分かれたからだ。データセンターが伸び、パソコンが沈み、工場の赤字が縮んだ。要点は3つだ。
①サーバー用CPUが急伸。 データセンター部門の売上は前年より+78%の73億ドル。会社は“データセンターとしてこの15年で最も強い伸び”と説明する。AIエージェントの広がりが、サーバー用CPUの需要を押し上げたという。
②工場部門の赤字が縮んだ。 製造を担うファウンドリー部門は売上が+58%の67億ドルに増え、営業赤字は23億ドルから19億ドルへ縮んだ。良品率と製造期間の改善で、ウエハーのコストが下がっていると会社は説明する。
③パソコンは逆風。 パソコン部門の売上は前年より5%減の81億ドル。業界全体のメモリー不足で市場そのものが縮んでおり、会社はこの減速が少なくとも来年前半まで続くとみる。パソコンは今も売上で最大の部門で、ここが戻るかが次の焦点になる。
2. 会社全体の成績——粗利も利益も、会社見通しを上回った
売上は165億ドルで前年より+21%、7月時点の会社見通しの中央値を2億ドル上回った。調整後の粗利率は44.1%と前年から4.1ポイント上がり、調整後の営業利益率は11.2%から19.6%へ改善した。会計基準どおりの営業利益も25億ドルと、前年の7億ドルから大きく増えた。営業活動で得た現金は51億ドル。42億ドルの設備投資などを差し引いた調整後のフリーキャッシュフローは16億ドルで、前年の9億ドルから増えた。売上・粗利率・1株利益のすべてが会社見通しを上回った点は、評価してよい。

図1:四半期の売上(棒)と調整後の粗利率(線)。次の四半期は売上・粗利率とも下がる見通し(点線)。
3. 事業別——データセンターが牽引、パソコンは減収
インテルの事業は、チップを売る2つの製品部門と、製造を担うファウンドリー部門に分かれる。牽引役はデータセンター部門で、売上は41億ドルから73億ドルへ増えた。顧客ごとに作り分ける専用チップ(Purpose Built Silicon)の売上も、前年の2倍を超えたという。パソコン部門は81億ドルと前年より5%減ったが、最先端の18A世代でつくる新しいパソコン用CPU(開発名Wildcat Lake)への需要は強いと会社は説明する。ファウンドリー部門の売上は自社製品の製造を請け負う社内取引が中心で、全社の売上を計算する際には差し引かれる点も覚えておきたい。

図2:部門別の売上(灰=前年同期、色=今期)。データセンターが+78%と伸び、全体を引っ張った。
4. 伸びの中身——サーバー用CPUが“稼ぎ頭”に育った
この決算最大の論点は、データセンター部門の“稼ぐ力”の変化だ。部門の営業利益率は1年前の23.4%から段階的に上がり、今期は41.5%に達した。営業利益は30億ドルと前年の約3倍で(編集部算出)、パソコン部門の23億ドルを2四半期続けて上回った。会社は、AIエージェントの広がりで顧客の関心が製品ロードマップ全体に広がっていると説明する。次世代のサーバー用CPU(開発名Diamond Rapids)では、Oracleのクラウドで使う複数年の協業計画も発表した。CEOは“供給を増やすことが当面の最優先”と述べており、需要に生産が追いついていない様子がうかがえる。

図3:データセンター部門の売上(棒)と営業利益率(線)。利益率は1年で23%→42%へ上がった。
5. 地域別——内訳は開示なし、カギは米国での増産
今回の資料には、四半期の地域別売上は示されていない。代わりに読むべきは製造の足場だ。会社はオハイオを含む全拠点で増強を加速すると説明する。ASMLとは次世代の露光装置(High-NA EUV)で、Lam ResearchやApplied Materialsとは新しい施設での共同開発で手を組んだ。米政府向けの安全な製造の取り組み(Secure Enclave)も前進している。ファウンドリー部門の赤字は売上の55%分から28%分まで縮んだ。米国での製造が“お荷物”から“戦力”に変わるかが、地域面での最大の焦点だ(編集部の見立て)。

図4:ファウンドリー部門の売上(上の棒)と営業赤字(下の棒)。赤字は1年で23億→19億ドルへ縮小。
| 「21%増収」という見出しの内側で起きているのは、稼ぎ頭の交代だ。パソコンが足踏みするなか、AIを支えるサーバー用CPUが利益の柱に育ち、赤字の工場部門も縮み始めた——インテルは“つくれる量が業績を決める”局面に入りつつある。 ワンポイント=インテルは、パソコンとサーバーの“頭脳”を設計から製造まで手がける会社。AIが広がるほど、その頭脳の出番も増える。 |
6. 数字を読むときの注意点
■ 会計基準どおりでは減益:会計基準どおりの1株利益は0.60ドルで、前年の0.90ドルから33%減。前年はアルテラ株売却の利益が乗っていた。
■ 今期も一時的な利益を含む:米政府に引き渡す予定の預託株の評価益が約10億ドル計上され、会計基準どおりの利益を押し上げた。
■ 株数が17%増えた:230億ドルの株式発行などで、希薄化後の株数は45億株から53億株へ増えた。1株利益はその分薄まる。
■ 前年比較にアルテラが混在:前年同期はアルテラ(2025年9月に過半を売却)の売上を含む。その他部門の30%減には、この影響が含まれる。
7. この先のシナリオ
会社は次の四半期(10〜12月)の売上を150億〜160億ドルと見込む。中央値の155億ドルは前年より18億ドル多いが、今期からは約6%減る(編集部算出)。調整後の粗利率は38.0%と今期の44.1%から下がる見通しで、調整後の1株利益は0.25ドル、会計基準どおりでは0.10ドルだ。会計基準どおりの税率は31%と高く、利益の目減りに効く。CFOはパソコンの減速が少なくとも来年前半まで続くとみる。それでも生産能力と運転資金への投資は続け、供給を増やす方針だ。なお粗利率が下がる理由は、今回の資料では詳しく示されていない。
8. この先のチェックポイント
■ 粗利率:会社見通しの38%前後を守れるか、上振れできるか。
■ サーバー用CPUの供給:強い需要に対し、出荷をどこまで増やせるか。
■ パソコン市場:メモリー不足がいつ和らぎ、減収が止まるか。
■ 最先端の製造技術:18A-Pの立ち上げと14Aで、社外の顧客を獲得できるか。
9. 市場環境
今回の数字からは、AIへの投資が画像処理用のチップ(GPU)だけでなく、CPUにも広がってきた様子が読める(編集部の見立て)。会社は、多くの作業を自律的にこなすAIエージェントの広がりが、サーバー用CPUの継続的な需要を生んでいると説明する。一方で、業界全体のメモリー不足はパソコンに逆風となっており、資料は基板やメモリーの不足をリスクにも挙げる。AIの追い風と部材不足の向かい風——その両方を受けながら、インテルは“どれだけつくれるか”が業績を左右する局面に入った。
10. 主要データ



注:本文・カード・図は概数、表は一次資料の正確値。前四半期比の売上見通しの増減、部門の営業利益の倍率、株数の増加率は編集部算出。調整後は会社定義の非GAAP値。見通しの粗利率と1株利益は、売上レンジの中央値が前提。
11. 出典・ご注意
■ 出典:インテル2026年第3四半期の決算プレスリリース、財務諸表、決算説明会資料(米国会計基準と会社定義の調整後数値)。
■ 見通しは会社の見込み:次の四半期の数値は会社の見通しで、実際の結果は異なり得る。
| 本記事は公表資料にもとづく決算の解説で、投資を勧めるものではありません。調整後の数値は一時的な損益などを除いた会社独自の基準で、会計基準どおりの数値とは異なります。今回の資料に四半期の地域別売上は含まれておらず、地域別の数値は記載していません。金額は「億ドル」へ概数換算しており、丸めにより合計が一致しない場合があります。投資の判断はご自身の責任でお願いします。 |
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