半導体製造では長く、回路を微細化する前工程が技術競争の中心とされてきた。しかしAI半導体の時代には、チップを“どうつなぐか”が性能を左右する。半導体製造装置大手のApplied Materialsと、接合装置のBesiが2026年10月1日に発表した協業拡大は、その最前線を示している。
| この記事のポイント ■ Applied MaterialsとBesiは2026年10月1日、AIの性能向上に向けた次世代パッケージングの協業拡大を発表した ■ BesiはAppliedがシリコンバレーに設ける研究開発拠点「EPIC Center」にInnovation Partnerとして参加する ■ 研究開発の対象は、ハイブリッドボンディングの新プラットフォーム、TCB(熱圧着)の高度化、die-on-wafer/die-on-die/die-on-panel、CPO向けのフォトニクス接続に広がる ■ AI半導体の性能向上は、前工程の微細化だけでなく、チップレット、HBM、3D IC、パネルレベル実装で決まる段階に入っている ■ パネルレベルの実装は有力だが、歩留まり、反り、位置合わせ、標準化に課題が残る |
ひとことで言うと
AIチップは、複数のチップを積み重ねたり並べたりして1つにまとめる時代に入った。AppliedとBesiは、チップ同士を“より細かく、より短く”つなぐ技術と、大きな四角いパネルでまとめて作る技術を、共同で開発する範囲を広げた。
何が発表されたのか
Applied MaterialsとBesiは10月1日、AIの性能向上(AI scaling)に向けた次世代パッケージングの戦略的協業を拡大すると発表した。BesiはAppliedがシリコンバレーに設けるEPIC Centerに、Innovation Partnerとして参加する。協業はハイブリッドボンディングの枠を超え、新しい接続のアーキテクチャへと広がる。
両社の協業は2020年に始まった。同年、シンガポールにあるAppliedの先端パッケージング開発センターに共同のCenter of Excellenceを設け、その成果として、ダイとウエハを接合するハイブリッドボンディング装置「Kinex」を生み出している。

出典:各社・各団体の公表資料をもとにSEMICON.TODAY編集部作成

出典:各社・各団体の公表資料をもとにSEMICON.TODAY編集部作成
基礎から理解する:ハイブリッドボンディングとは
ハイブリッドボンディングは、銅の電極同士と絶縁膜同士を直接貼り合わせ、チップ同士やチップとウエハを高密度につなぐ技術である。従来の「マイクロバンプ」(はんだの小さな突起)に比べて接続の間隔を細かくでき、配線が短くなるため、電力効率と帯域を高められる可能性がある。

出典:各社・各団体の公表資料をもとにSEMICON.TODAY編集部作成
パネルで作れば安くなるのか
die-on-panelは、大型のパネル上にチップを配置して接合する考え方である。円形のウエハに比べて四角いパネルは面積を無駄なく使えるため、理論上はコスト低減につながる可能性がある。しかし、パネルはウエハより大きく、反り、熱膨張、位置合わせ、搬送、欠陥密度が課題になる。パネルにすれば必ず安くなるわけではない。

出典:各社・各団体の公表資料をもとにSEMICON.TODAY編集部作成
日本企業への示唆
日本企業にとっては、CMP、洗浄、接合材料、熱材料、検査、計測、搬送、精密ステージ、基板材料が重要になる。AI向けの実装が高度になるほど、表面の平坦化、清浄度、低温での接合、反りの制御、壊さずに中を調べる非破壊検査の価値は高まる。
注意すべき点
今回の発表は研究開発の協業範囲の拡大であり、新しい製品の発売や量産時期を示したものではない。協業の金銭的な条件も開示されていない。
パネルレベルの実装は有望だが、歩留まり、反り、位置合わせ、標準化といった課題を解決できるかは今後の開発次第である。
まとめ
Applied MaterialsとBesiの協業拡大は、AI半導体の性能向上が前工程の微細化だけでは進まないことを示す。ハイブリッドボンディング、TCB、die-on-wafer、die-on-die、die-on-panel、フォトニクス接続は、ロジック、HBM、チップレット、光をまとめて統合するための重要技術である。
先端パッケージングは、もはや後工程ではない。前工程と同じレベルの材料工学、表面制御、洗浄、検査、信頼性評価が求められている。
用語解説
| 用語 | 説明 |
| ハイブリッドボンディング | 銅の電極同士と絶縁膜同士を直接接合し、チップ同士を高密度につなぐ技術。 |
| TCB | Thermo-Compression Bondingの略。熱と圧力でチップを接合する技術。HBMや高密度パッケージングで重要。 |
| die-on-panel | 大型のパネル上にチップを配置・接合する実装方式。面積効率の向上が期待される。 |
| チップレット | 機能ごとに分けた小さなチップ。組み合わせて1つの大きなチップのように使う。 |
| 3D IC | 複数のチップを縦方向に積み重ねて接続する集積技術。 |
| EPIC Center | Applied Materialsがシリコンバレーに設ける、半導体製造装置とプロセス技術の研究開発・事業化の拠点。 |
出典(Sources)
本文での主な参照箇所:協業拡大、EPIC Center参加、ハイブリッドボンディング、TCB、die-on-panel、フォトニクス接続、2020年からの協業、Kinex
本文での主な参照箇所:EPIC Center、Innovation Partner、研究開発領域
※本記事は各社・各団体の公表資料および報道をもとに作成したものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の公開情報に基づきます。
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