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SEMICON.TODAY 5 min · 2026.10.07

ASMのFlowable Carbon、微細化は“炭素材料”で進むのか―High-NA時代のパターニングを支える新ハードマスク

この記事を読むのにかかる時間: 5 分

半導体の微細化といえば、EUV露光装置に注目が集まる。しかし、露光で描いた線を正確に削り出すには、その“周辺”の材料と工程が欠かせない。ASMが2026年9月22日に発表した「XP8 Vertos Flowable Carbon」は、まさにその周辺を支える技術である。

この記事のポイント
■ ASMは2026年9月22日、「XP8 Vertos Flowable Carbon」を発表した
■ Flowable Carbonは、流動性を持つ炭素系の膜で、凹凸を埋める「gap fill」と表面を平らにする「planarization」を組み合わせた材料技術
■ ASMは、PECVDによるflowable carbon filmとして「市場初」と説明している(同社の主張)
■ 微細化は露光装置だけでは進まない。ハードマスク、成膜、平坦化、エッチング、検査を含むパターニング全体の最適化が必要

露光装置が“設計図を描くペン”なら、ハードマスクは“削るときに形を守る型紙”。Flowable Carbonは、凸凹だらけの表面を流れ込むように埋めて平らにし、その型紙をきれいに作るための新しい膜である。

何が発表されたのか

ASMは9月22日、「XP8 Vertos Flowable Carbon」を発表した。同社はこの技術を、PECVD(プラズマを使って薄膜を形成する成膜技術)による流動性のある炭素膜(flowable carbon film)として市場初と説明し、次世代の微細化(スケーリング)に向けたパターニングの課題に対応するものと位置づけている。対象は先端ロジックとメモリである。

基礎から理解する:パターニングとハードマスク

半導体は、ウエハ上に光で回路の模様を焼き付け(露光)、その模様どおりに膜を削る(エッチング)工程を何度も繰り返して作られる。この「模様を作って転写する」一連の工程をパターニングと呼ぶ。

露光で模様を付けるのはレジストという感光材だが、薄く柔らかいため、深く削る加工には耐えられない。そこで、レジストの模様をいったん硬い膜に写し取り、その膜を“型”にして下の層を削る。この硬い膜がハードマスクである。

図1 パターニング工程とFlowable Carbonの位置

出典:各社・各団体の公表資料をもとにSEMICON.TODAY編集部作成

Flowable Carbonは何が新しいのか

ASMの技術ページによると、同技術は先端の「gap fill(すき間埋め)」と「planarization(平坦化)」に向けたPECVD技術であり、複雑な構造を埋め、平らにし、パターニングするために設計された材料である。

加工途中のウエハ表面には、すでに作られた溝や段差がある。そこに膜を重ねると、凹凸がそのまま残りやすい。表面が凸凹のままだと、次の露光でピントが合いにくく、削る深さもそろわない。流れ込む性質を持つ炭素膜で溝を埋めつつ表面を平らにできれば、その上の工程が安定する。

図2 Flowable Carbonによる埋めると平らにするの概念図

出典:各社・各団体の公表資料をもとにSEMICON.TODAY編集部作成

なぜ今、この技術が求められるのか

先端ロジックとメモリでは、パターンが細かくなるだけでなく、構造が立体化している。3D NANDでは、高アスペクト比(細くて深い)の穴や溝が課題になる。先端ロジックでは、配線層の微細化、マルチパターニング、EUVで描いたパターンを転写する難しさが増している。

Flowable CarbonはHigh-NA EUV装置そのものではない。しかし、High-NA EUV時代のパターニング課題と深く関係する。EUVで作った微細なパターンを実際のデバイス構造へ正確に転写するには、ハードマスクの性能が重要になるからだ。

日本企業への示唆

日本企業は、レジスト、CMPスラリー(研磨剤)、洗浄薬液、エッチング装置、検査・計測、材料評価で強みを持つ。Flowable Carbonのような技術は、こうした周辺領域への需要を押し上げる可能性がある。微細化の主役は露光装置だけではなく、その前後を支える材料・工程の総合力である。

注意すべき点

ASMが「市場初」と説明している点は、同社の公式な主張として扱う必要がある。業界全体での独立した比較を行わずに、記事側で「世界初」と断定するのは避けるべきだ。

また、今回の発表は技術・製品の発表であり、どの顧客のどの工程で、どの程度の規模で採用されるかは公開情報からは確認できない。

まとめ

ASMのXP8 Vertos Flowable Carbonは、「露光の周辺」にある重要技術である。凹凸を流れ込むように埋め、表面を平らにし、ハードマスクとしてパターン転写を支える。

微細化はEUVやHigh-NA EUVだけでは進まない。レジスト、ハードマスク、成膜、エッチング、CMP、洗浄、検査が一体で機能して初めて実現する。材料と工程の総合力で競う時代に、日本企業の出番は多い。

用語解説

用語説明
Flowable Carbon流動性を持つ炭素系の膜を用いるパターニング材料。溝を埋めて表面を平らにする。
パターニング露光とエッチングを組み合わせ、ウエハ上に回路の模様を作って転写する一連の工程。
PECVDプラズマを使って薄膜を形成する成膜技術。
ハードマスクエッチングの際にパターンを保護・転写するための耐久性の高い膜。
Planarizationウエハ表面の凹凸を平坦化すること。
High-NA EUVより大きな開口数(NA)のレンズ系を持つ次世代EUV露光装置。より細かい模様を描ける。

出典(Sources)

・S1|ASM / GlobeNewswire|ASM launches breakthrough Flowable Carbon technology for the next era of semiconductor scaling|2026-09-22

本文での主な参照箇所:XP8 Vertos Flowable Carbon、PECVD、logic/memory

・S2|ASM|ASM Flowable Carbon: PECVD technology for advanced gap-fill and planarization|2026

本文での主な参照箇所:gap fill、planarization、advanced patterning

※本記事は各社・各団体の公表資料をもとに作成したものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。
記載内容は執筆時点の公開情報に基づきます。

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