この記事のポイント
- 京セラと東北大学が、レーザー熱処理による光アイソレータのシリコンフォトニクスチップへの直接集積技術を開発。
- データセンターにおける省電力化と情報処理能力向上の鍵となる、シリコンフォトニクスチップの性能向上に貢献。
- 従来の高温処理ではチップ周辺部品が損傷する問題に対し、局所的な熱処理で解決。
- 光通信波長帯で反射光を約95%低減し、光アイソレータを「外付け」から「内蔵」へ。
- この定点加熱技術は、他の精密製造分野への応用も期待される。
次世代データセンターを支えるシリコンフォトニクスチップ
生成AIなどのデータ集約型技術の進化に伴い、データセンターには省エネルギー化と情報処理能力の向上が求められています。光による効率的なデータ伝送が可能なシリコンフォトニクスチップは、この課題解決に不可欠な存在です。
特に、光学回路と電子回路を同一チップ上に集積する「コ・パッケージ・オプティクス(CPO)」は、信号伝送距離の短縮、信号損失と消費電力の低減を実現し、次世代データセンターの光インターコネクトにおける重要な技術として注目されています。
光アイソレータの集積における課題と新技術
シリコンフォトニクスチップ内の光学回路では、レーザー光源へ反射する光が性能低下を引き起こす問題があります。これを防ぐために光アイソレータが使用されますが、チップの小型化・高集積化が進むにつれて、チップ上に直接光アイソレータを集積する技術が求められていました。
しかし、一般的に光アイソレータには磁気光学ガーネット結晶が用いられ、その性能を引き出すには600℃以上の高温加熱が必要です。この高温処理は、チップ上の電極や配線など、他の部品を損傷させるリスクがありました。
レーザー熱処理による局所集積技術の実現
この課題に対し、京セラと東北大学の研究チームは、レーザー熱処理を用いた革新的な単体集積技術を開発しました。この技術では、高エネルギーのレーザービームを照射し、処理が必要な領域のみを瞬間的に加熱・冷却することで、シリコンフォトニクスチップに光アイソレータを直接集積することを可能にしました。
具体的には、近赤外レーザーを、光アイソレータを配置する約700マイクロメートル×700マイクロメートルの領域にのみ照射します。この領域には磁気光学ガーネット薄膜が含まれており、局所的な高温によりガーネット結晶が生成され、反射光を抑制する特性が付与されます。この技術により、光干渉に基づいた光アイソレータ機能を持つデバイスが作製され、実験でその効果が証明されました。
性能向上と今後の展望
実験では、光通信波長帯において、正方向の信号光と逆方向の反射光の出力を比較しました。その結果、反射光が約95%低減されることが確認されました。また、電子顕微鏡による観察でも、レーザー照射領域の磁気光学ガーネットがシリコン導波路上に正常に結晶化していることが確認されました。
この技術により、光アイソレータは「外付け部品」から「チップ内蔵部品」となり、小型化と低損失化が実現します。さらに、この局所加熱というアプローチは、他の精密製造分野への応用も期待されています。
出典: 元記事を読む
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