AMDの2026年第2四半期(4-6月)は、売上高$11,536百万($11.5B、前年同期比+50%、前四半期比+13%)と四半期ベースで過去最高を更新。GAAP営業利益$1,990百万(利益率17%)、GAAP純利益$2,297百万、EPS $1.38。Non-GAAPでは営業利益$3,094百万(利益率27%)、純利益$2,760百万、EPS $1.66だった。牽引したのはデータセンター事業で、売上$6,718百万(前年同期比+107%)と全社売上の58%を占め、EPYCとInstinctが両輪となった。ただし前年同期(2Q25)は対中輸出規制に伴うMI308関連で$800百万の引当を計上して沈んでおり、前年比の伸び率は割り引いて読む必要がある。会社は第3四半期の売上を約$13B(±$300百万)と見込む。

1. 結論——データセンターが売上を倍増、ただし前年比には“かさ上げ”がある
まず要点を三つ。第一に、第2四半期は売上$11.5Bと四半期最高を更新した(前年同期比+50%、前四半期比+13%)。牽引役はデータセンター事業で、売上$6,718百万(前年同期比+107%)と倍増し、全社売上の58%を占めた。会社の説明では、EPYCの需要加速とInstinctの展開拡大、新型ラック「Helios」の立ち上がりが背景だ。
第二に、前年比の伸び率は“かさ上げ”されている。前年同期(2Q25)は、米政府の対中輸出規制(Instinct MI308)に伴い$800百万の在庫等引当を計上して利益が沈んでいた。このためGAAP営業利益は前年の△$134百万から$1,990百万へ「+1585%」、純利益は+163%と伸び率が実力以上に大きく出る。実勢は前四半期比(売上+13%)や過去最高という絶対水準、第3四半期の約$13Bガイダンスで測るのが妥当だ。
第三に、利益の“質”を見ておく。GAAP純利益$2,297百万はGAAP営業利益$1,990百万を上回るが、これは営業外の「その他収益」$598百万(うち長期投資の評価益$483百万)による。Non-GAAPはこの評価益を除外する一方、Non-GAAP営業利益$3,094百万はGAAP($1,990百万)を大きく上回り、差の約$1.1Bは株式報酬$503百万・買収無形資産償却$544百万等。GAAPとNon-GAAPは両建てで読むべきだ。
2. 業績の変遷——過去最高の売上と、利益率の急回復
四半期売上は前年同期$7,685百万、前四半期$10,253百万を経て、今回$11,536百万に達した。GAAP粗利率は40%→53%→54%、Non-GAAP粗利率は43%→55%→56%へ改善。GAAP営業利益率は△2%→14%→17%、Non-GAAP営業利益率は12%→25%→27%へ急回復した。前年のMI308引当の反動もあるが、データセンターの構成比上昇とミックス改善が収益性を押し上げている。

図1:四半期売上高(百万ドル)とNon-GAAP営業利益率(%)。
オレンジ=実績、琥珀の点線=Q3見通し(計画、約$13B)。
GAAP純利益は$2,297百万(前年同期比+163%、前四半期比+66%)、Non-GAAP純利益は$2,760百万(同+253%、+22%)。前四半期比で見れば、Non-GAAPの純利益・EPSは+21〜22%と、規制費用の反動に依存しない足元の伸びを示す。
3. 会社計画と進捗——第3四半期は約$13Bへ
会社の見通しでは、第3四半期(7-9月)の売上は約$13B(±$300百万)。中央値は前年同期比 約+41%、前四半期比 約+13%。Non-GAAP粗利率は約56%を見込む。CFOは「データセンターの売上は2026年下期に加速し、全体の増収と増益をさらに押し上げる」と説明。これらは会社の将来見通しであり確定値ではない。
| 前年比の“見かけの爆発力”ではなく、前四半期比+13%と第3四半期+13%見通しという連続した二桁増が、AMDの実力を映す。 用語=Instinct: AMDのデータセンター向けAIアクセラレータ(GPU)。学習・推論向けでMI300→MI350→MI400と世代を重ねる。 |
4. KPI・先行指標——データセンターの黒字化と、ゲーミングの弱さ
セグメント別では明暗が分かれた。データセンターは売上$6,718百万(前年同期比+107%)、営業利益$2,103百万と前年同期の△$155百万から大きく黒字転換。クライアント(Ryzen等PC向け)は$3,062百万(+23%)と好調な一方、ゲーミングは$779百万(△31%)とセミカスタムの減少で弱含んだ。組込みは$977百万(+19%)と回復した。

図2:セグメント別売上高の前年同期比(百万ドル)。
データセンター+107%が牽引、ゲーミングは△31%。

図3:2026年2Qのセグメント別売上構成。データセンターが58%を占める。

図4:データセンター事業の売上・営業利益(百万ドル)。
前年同期の赤字(規制費用)から$2,103百万の黒字へ。
全社営業利益$1,990百万は、データセンター$2,103百万+クライアント/ゲーミング$582百万+組込み$386百万から、全社項目(All other=株式報酬・買収償却等)△$1,081百万を差し引いたものだ。データセンターがほぼ全社の営業利益を稼ぐ構造がより鮮明になっている。
5. 財政状態
2026年6月27日時点で、現金・現金同等物+短期投資は$13,111百万($13.1B)、総有利子負債は$3,226百万と手元資金は潤沢。総資産$84,464百万、株主資本$67,224百万。棚卸資産は$8,468百万へ積み上がった。第2四半期のFCFは$1,558百万(FCFマージン14%、営業CF $2,366百万−設備投資$808百万)。前四半期のFCF($2,566百万)より低いのは、売上債権・棚卸資産の増加(運転資本の拡大)と設備投資増によるもので、増産局面の仕込みを映す。調整後EBITDAは$3,315百万だった。
6. トピックス——MI400/Heliosとハイパースケーラー提携
■ Instinct MI400シリーズ発表:大規模AI学習・推論向け「MI455X」、HPC・ソブリンAI向け「MI430X」、既存インフラ向け「MI350P」を投入。
■ Helios ラックシステム:「世界最強のAIサーバーラック」を発表。会社資料によれば、Anthropic、Meta、Microsoft、OpenAI、Oracle、Cirrascale、HUMAIN、Tensorwave、Vultr等が採用・展開する。
■ Anthropicとの戦略的提携:Heliosラックに最大2ギガワットのMI450シリーズGPUを展開する提携、およびClaudeを用いてInstinct GPUとROCmソフトウェア開発を最適化する複数年の協業を発表。
■ Microsoft/その他協業:Azure上でHeliosを大規模展開しフロンティアモデルの推論を担う。Cerebras・Ciscoとの協業、第6世代EPYC、AI開発体験「ROCm.ai」も投入。
■ M&A:AIワークロードのメモリ利用を最適化する予測メモリ技術「MEXT」を買収。ZT Systemsの製造事業は2025年第4四半期に売却済み(非継続事業)。
7. 中期の方向性——AIが全市場の計算需要を押し上げる
会社の説明では、AIがAMDの全市場で計算需要の大幅な拡大を促しており、リーダーシップ製品群と拡大する顧客の可視性が今後数年の大幅な増収増益を支えるという。とりわけデータセンターは、EPYCの需要加速・Instinctの展開拡大・Heliosの立ち上がりを背景に2026年下期に売上が加速する見込み。MI400シリーズとHeliosの本格ランプ、ハイパースケーラーとの複数年提携が中期成長の軸となる。
8. 市場環境——AI計算需要の拡大と、規制リスク
会社の説明では、AIがクラウド・AIインフラからPC・組込みまであらゆる市場で計算需要を押し上げている。一方、前年同期のMI308引当が示すように、米政府の輸出規制・通商政策はデータセンターGPU事業の変動要因であり、会社もリスク項目に「輸出規制・国家安全保障に基づく規制・関税」を明記する。半導体市況のサイクル性、メモリ等の部材供給、為替も留意点だ。
9. 今後のチェックポイント
■ 第3四半期の達成度:約$13B(±$300百万)・Non-GAAP粗利率約56%という見通しを実現できるか。
■ データセンターの下期加速:会社が掲げる「下期加速」がMI400/Heliosのランプで数字に表れるか。
■ 提携の実売上化:Anthropic(最大2GW)やMicrosoft等との提携が、いつ・どの規模で売上に変換されるか。
■ ゲーミングの底打ち:△31%と弱いセミカスタムが次世代機サイクルで持ち直すか。
■ GAAPとNon-GAAPの差:株式報酬・買収償却・投資評価損益による乖離。実力ベースの利益水準。
■ 規制・地政学:対中輸出規制の再燃リスクと、データセンターGPUへの影響。
10. 主要データ一覧


注:前年同期(2Q25)のGAAP・Non-GAAPには、対中輸出規制(Instinct MI308)に伴う$800百万の在庫等引当を含む。GAAP純利益は営業外の投資評価益($483百万)等を含み、Non-GAAPはこれを除外。手元資金(現金+短期投資)$13,111百万、総有利子負債$3,226百万、FCF $1,558百万。第3四半期は会社の将来見通し。
11. 出典・免責
■ Advanced Micro Devices, Inc.「AMD Reports Second Quarter 2026 Financial Results(News Release)」2026年8月4日(売上・利益・セグメント・見通し・GAAP/Non-GAAP調整の一次数値)。
■ 同「Condensed Consolidated Financial Statements / Selected Corporate Data(Financial Tables)」2026年8月4日(財政状態・キャッシュ・フロー・セグメント・EBITDA・FCF)。
■ 同「Q2 2026 Slide Presentation」2026年8月4日(補足)。
■ 第3四半期見通し、下期加速、提携の展開規模は会社の開示・見通しであり確定値ではない。市況・規制・為替の変化により実際の結果は異なり得る。
本記事はAdvanced Micro Devices, Inc.の公表資料(US GAAP/Non-GAAP)に基づく決算解説であり、投資勧誘または投資助言を目的としたものではない。将来見通し(第3四半期・下期)は会社公表資料に基づくもので、実際の業績は変動し得る。Non-GAAP指標は会社が定義する調整後指標であり、GAAPを代替するものではない。前年同期比はMI308引当($800百万)等の影響で伸び率が大きく出る点に留意されたい。数値は丸め処理により端数が一致しない場合がある。投資判断はご自身の責任で行っていただきたい。
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