DRAM寡占に置かれた「第四の椅子」上場CXMTの実力と中国メモリーの次の10年

世界の業界リーダー動向
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3社で約9割を握るDRAM市場に、中国本土のCXMTが世界4位として浮上した。売上の3分の2をLPDDRが占め、2025年に急黒字化。一方、AIメモリーの本丸HBMは、商用量産を公式には確認できない。KioxiaとYMTCを手掛かりに、その実力と残された壁を読み解く。

データ基準日:2026年8月6日

世界のDRAM市場は、Samsung Electronics、SK hynix、Micron Technologyの3社が9割を握る「三人の部屋」だった。そこに今、初めて中国本土企業のための第四の椅子が置かれた。 2026年7月に上海・科創板へ上場したCXMTは、直近の2026年1〜3月期に売上高シェア7.6%で世界4位となった。8月6日の終値は54.66元、時価総額は約3.66兆元。2025年平均為替による参考換算では約76.1兆円に達する。市場は、中国DRAMの将来に巨額の値札を付けた。 しかし、この会社はまだBig 3の小型版ではない。売上の3分の2はモバイル向けLPDDRで、2年で巨額赤字から黒字へ転換した一方、AIメモリーの本丸であるHBMは、公式資料で商用量産を確認できない。強さと空白が同居するCXMTを読み解くことは、中国半導体の次の10年を占うことでもある。

第四の椅子に「76兆円」の値札

2026年7月27日、長鑫科技集団股份有限公司が上海証券取引所の科創板に上場した。証券コードは688825、公開価格は1株8.66元。8月6日の終値は54.66元と公開価格の約6.3倍に達し、上場後総株式数668.81億株を掛けた時価総額は約3.66兆元となった。

上場時に市場で流通した株式は総数の約6.7%にとどまる。巨大な時価総額は、CXMTへの期待だけでなく、限られた流通株を巡る需給の上にも成り立っている。上場直後の株価は企業価値の確定値というより、「市場がどれほど第四の供給者を待っているか」を示す温度計として読むべきだろう。

市場で広く使われるCXMTは、ChangXin Memory Technologiesの略称である。上場主体は持株・事業統括会社の長鑫科技集団で、DRAMの設計、研究開発、生産、販売を担う長鑫存儲技術有限公司を100%子会社として持つ。以下では、上場グループ全体を一般的な呼称であるCXMTと表記する。

CXMTの招股書は2025年10〜12月期のDRAM売上高シェアを7.67%としていた。TrendForceも2026年1〜3月期のシェアを7.6%で世界4位、Samsung、SK hynix、Micronの上位3社合計を89.7%としている。出所と四半期は異なるものの、いずれも売上高ベースであり、CXMTが7%台の規模に定着し始めたことを示す。

日本の鏡としてのKioxia――同じメモリー、違う戦場

日本の読者にとって、CXMTを最も身近に考える入口はKioxiaである。KioxiaはNANDフラッシュ、CXMTはDRAMが主力で、両社は直接競合しない。DRAMは演算中のデータを高速に読み書きする作業メモリー、NANDは電源を切ってもデータを保持するストレージであり、技術も市場も異なる。

それでも両社を並べる意味は大きい。2025年平均為替で概算すると、CXMTの2025年売上高は約86億ドル、営業利益は約11億ドル。Kioxiaの2026年3月期は売上高約156億ドル、営業利益約58億ドルである。Kioxiaは売上高でCXMTの約1.8倍、営業利益で約5.4倍となる。

日本はNAND、中国はDRAMという別の戦場で、それぞれ自国に残ったメモリー製造基盤を資本市場で支えようとしている。KioxiaからCXMTを見ると、問いは「中国企業は日本企業より強いか」ではなくなる。巨額投資、激しい市況循環、絶え間ない技術世代更新を背負うメモリー企業を、国家と資本市場がどう育てるのか。日本と中国は、異なる製品で同じ難題に向き合っている。

誕生――合肥から始まった中国DRAM国産化

CXMTの上場グループは2016年に発足し、中核子会社の長鑫存儲は2017年に設立された。2019年には中国本土企業として8Gb DDR4の量産を実現し、DRAMを「輸入する国」から「自ら量産する国」へ移す第一歩を刻んだ。現在は合肥と北京に3つの12インチDRAM工場を展開し、2025年末の従業員数は約1万9,300人に達する。

製品はスマートフォン向けLPDDR、PC・サーバー向けDDR、各種DIMMモジュールに広がった。DDR5、LPDDR5Xといった規格名だけを見れば、製品ラインアップはBig 3に近づいている。だが、同じ規格を製品表に載せることと、ビット密度、歩留まり、消費電力、原価、顧客認証で同等になることは別である。CXMTの物語は、製品を「作れた」段階から、世界市場で「同じ条件で稼げるか」を問われる段階へ移った。

売上の3分の2はLPDDR――スマートフォンで築いた足場

CXMTの成長を理解する鍵は、サーバーではなく、まずスマートフォンにある。2025年の主力事業売上612.8億元のうち、LPDDRシリーズは407.0億元、66.43%を占めた。DDRシリーズは195.3億元、31.87%である。

CXMTはLPDDR5を2023年に量産し、2025年にはLPDDR5Xも量産へ移行した。Xiaomi、OPPO、vivo、Honor、Transsionなど中国系端末メーカーの巨大な需要が、数量を増やし、歩留まりを学習し、次世代製品へ投資するための足場になった。標準DRAM市場の第四極は、まずモバイルDRAMから生まれたのである。

しかし、その足場は今、スマートフォンからサーバーへ広がり始めている。TrendForceは、CXMTがサーバーDRAMを積極的に拡大する一方、製品構成に占めるモバイル・PC向けの比重を下げる方向にあると指摘する。Reutersは2026年7月、CXMTがByteDanceと5年間・70億ドル超のDRAM供給契約を結んだと報じた。両社による公式発表は確認できないものの、契約が履行されれば、CXMTの成長物語は「中国スマートフォンで量産学習」から「中国クラウド・AIサーバーで規模拡大」へ、次の段階に入る。

LPDDR dominates with 66.4% (4070億円) vs DDR 31.9% (195億円) in mobile memory mix (CXMT 2025)

図1 CXMTの2025年主力事業売上高の製品別構成(出所:CXMT招股書)

57%が「海外売上」の正体

招股書を読むと、2025年の「中国本土外売上」は57.21%に達する。一見すると、売上の過半が海外顧客向けに見える。しかし、そのうち54.42%は香港での計上である。CXMTは、香港が半導体取引と外貨決済の拠点であり、顧客が米ドル建て取引を選択するためと説明している。57%は海外最終需要の比率ではなく、商流と決済通貨の比率に近い。

一方、100%中国国内向けとも言えない。LenovoやTranssionは世界で端末を販売し、代理店経由品の最終組立地や最終需要地はすべて開示されていない。TrendForceは8月4日、HP、ASUS、Acerが非米国市場向けノートPCの一部でCXMT製DRAMを限定採用し始めたと報じた。現時点の実態は、「中国系顧客・中国需要が中心だが、100%国内向けではない」と整理するのが最も正確である。

2年で193億元の赤字から77億元の黒字へ

財務面の転換は劇的だ。売上高は2023年の90.9億元から2024年241.8億元、2025年618.0億元へ拡大した。営業損益は2023年の193.4億元赤字、2024年の89.7億元赤字から、2025年には77.2億元の黒字へ転換した。LPDDRの数量拡大、DDR5・LPDDR5Xの量産、工場稼働率の上昇、DRAM価格の上昇が同時に作用した。

会社開示ベースの2026年1〜3月期売上高は508億元(約508億人民元)と、わずか3カ月で2025年通期の8割を超えた。一方、TrendForceが同四半期の市場シェア算定に用いたCXMTのDRAM売上推計は73.09億ドルで、人民元換算額は一致しない。前者は企業会計上の売上高、後者は市場調査会社によるDRAMベンダー売上推計であり、対象範囲、認識時点、換算レートが異なるためである。

CXMTの上場は、同社の技術進歩だけでなく、AI需要によるメモリー不足と価格上昇が利益を押し上げる「超回復局面」と重なった。この追い風を平常時の収益力と取り違えないことが重要になる。

最新通期の営業利益率はCXMTが12.5%、Samsung DSが19.1%、Micronが26.1%、SK hynixが48.6%だった。KioxiaはNAND専業の参考値として37.2%である。利益額で見ると、CXMTの約11億ドルに対し、Micronは約98億ドル、Samsung DSは約175億ドル、SK hynixは約332億ドル。第四の椅子は置かれたが、椅子の大きさはまだ同じではない。

表1 主要メモリーメーカーの売上高・営業利益比較

企業(決算期)主領域売上高
(十億USD)
営業利益
(十億USD・利益率)
CXMT(2025/12)DRAM8.61.1(12.5%)
Samsung DS(2025/12)半導体総合91.517.5(19.1%)
SK hynix(2025/12)DRAM/NAND68.333.2(48.6%)
Micron(2025/8)DRAM/NAND37.49.8(26.1%)
Kioxia(2026/3)NAND・参考15.65.8(37.2%)
注:各社の最新通期を、米連邦準備制度理事会の2025年年平均レートで概算換算。決算期・事業範囲・会計基準は異なる。Samsung DSはFoundry・System LSIを含み、KioxiaはNAND専業の参考比較。
Bar chart of operating margin gaps by memory makers: CXMT 12.5%, Samsung DS 19.1%, Micron 26.1%, SK hynix 48.6%, Kioxia 37.2% (reference).

図2 主要メモリーメーカーの営業利益率比較(出所:各社最新通期開示)

最後の壁はHBM――公式資料に見えないAIメモリー

収益力の差を生む最大の壁がHBM(広帯域メモリー)である。AIアクセラレーターは膨大なデータを演算器へ供給する必要があり、HBMの帯域と容量が性能を左右する。SK hynixはHBMで先行し、MicronとSamsungも量産と顧客認証を競う。高単価のHBMは、Big 3の利益率を押し上げる中心製品になった。

CXMTについては、業界報道でHBM開発やサンプル供給が取り沙汰されている。しかし、2026年8月6日時点で、CXMTの公式製品ページ、招股書、上場後公告からHBMの商用量産や顧客採用は確認できない。重要なのは「HBMを開発していない」と断定することではない。「公式資料に量産実績がまだ見えない」こと自体が、標準DRAMの世界4位とAIメモリーのBig 4が同義ではないことを示している。

輸出規制も、企業指定と品目規制を分けて読む必要がある。米商務省BISは一定のHBMと先端半導体製造装置を対中輸出規制の対象としている。一方、2026年8月6日時点でCXMTのBIS Entity List掲載は確認できない。米国防総省の1260Hリストや米政府調達規制とは別制度であり、「米国のリストに載った」という一括りの表現は実態を誤らせる。

YMTCと中国メモリー「二本柱」の次の10年

中国のNANDフラッシュ大手、長江存儲(YMTC)も上場へ動いている。2026年5月に上場指導を開始し、7月には第1期進捗報告を開示した。8月6日時点では、なお取引所への正式申請前の段階である。CXMTに続いてYMTCも上場すれば、中国はDRAMとNANDの双方に大型上場メモリーメーカーを持つ。

AI半導体というチップ単体に、DRAMとNANDの双方が必ず内蔵されるわけではない。しかしAIサーバー全体では、HBMやDDR5が演算中の高速な作業領域を担い、NAND SSDがモデル、学習データ、チェックポイント、キャッシュを保存する。高性能なAIシステムは、DRAMとNANDを階層的に組み合わせることで、速度、容量、コストを両立している。

その意味で、CXMTとYMTCは中国AIインフラの相互補完的な二本柱である。CXMTがHBM・サーバーDRAMへ進み、YMTCがエンタープライズSSDと高性能NANDを拡大すれば、中国製AIアクセラレーターを取り囲むメモリー・ストレージ層は国内でより完結する。次の競争は、DRAMとNANDを個別に量産できるかではなく、AIシステムとして結び付けられるかに移る。

第四の椅子が本物になる三つの条件

CXMTが真のBig 4となる条件は三つある。第一に、DDR5とLPDDR5Xで製品の存在だけでなく、歩留まり、ビットコスト、電力効率、国際顧客認証を高めること。第二に、HBMで商用量産と主要AI顧客の採用を獲得すること。第三に、DRAM価格が下落する局面でも研究開発と設備投資を維持し、黒字を残せる財務体質を作ることである。

CXMTの上場は、中国企業がBig 3に追いついたというゴールではない。三社寡占の市場に、長期戦を挑むための資本と第四の椅子を得た出来事である。そして日本にとっては、Kioxiaという自国の椅子を、AI時代にどのような形で守り、育てるのかを問い返すニュースでもある。

注記・主要出典

・株価・時価総額は2026年8月6日終値54.66元と上場後総株式数668.81億株から算定。円換算は、米連邦準備制度理事会が公表した2025年年平均レート(1米ドル=7.1875元、149.5686円)による参考値。

・市場シェアは売上高ベース。CXMT招股書の2025年10〜12月期7.67%と、TrendForceの2026年1〜3月期7.6%は、期間と出所が異なるため単純な連続比較ではない。

・財務比較は各社の最新通期を使用。決算期、事業範囲、会計基準、通貨が異なるため、厳密な同条件比較ではない。

・2026年1〜3月期の508億元は会社開示ベースの売上高。TrendForceの73.09億ドルは市場シェア算定用のDRAM売上推計で、定義と換算条件が異なる。

・長鑫科技集団股份有限公司「招股説明書」(上海証券取引所、2026年5月17日開示)

・長鑫科技集団股份有限公司「科創板上場公告」(2026年7月24日)および2026年8月6日市場データ(取引所配信に基づく株価情報)

・TrendForce「CXMT’s 471% STAR Debut Makes It China’s Top Listed Firm, Reshaping Global Memory Dynamics」(2026年7月27日)

・TrendForce「CXMT Reportedly Eyes Second Beijing 12-inch DRAM Fab; HP, Asus, and Acer Said to Begin Limited Use」(2026年8月4日)

・TrendForce「DRAM Market Bulletin – Jun. 17, 2026」(サーバーDRAM拡大と製品構成の変化)

・Reuters「China’s memory chip makers ride AI boom to new power – and U.S. scrutiny」(2026年7月24日、ByteDanceとの5年・70億ドル超契約の報道)

・CXMT公式サイト「About」「Products」

・Samsung Electronics、SK hynix、Micron Technology、Kioxia Holdingsの各社最新通期開示

・米商務省BIS「Commerce Strengthens Export Controls to Restrict China’s Capability to Produce Advanced Semiconductors for Military Applications」(2024年12月2日)およびEntity List(2026年8月6日確認)

・長江存儲(YMTC)の上場指導备案・第1期進捗報告(2026年5月・7月)

・米連邦準備制度理事会「Foreign Exchange Rates – G.5A Annual」(2025年年平均)

オンライン参照:CXMT招股書TrendForce(2026年1Qシェア)CXMT製品情報BIS輸出管理発表

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