生成AIサーバー向けのロジック需要が、2025年後半の投資配分を左右している。AIインフラの中核である“加速サーバー(GPU/アクセラレータ搭載機)”は、2024年にAIサーバー支出の約70%を占め、2028年には75%超へ比率が高まる見通し。AI投資は特殊な“山”ではなく“新しい平地”になりつつあり、前工程(EUV/材料/エッチ/成膜)から後工程(先端パッケージ)までの装置・材料に継続的な追い風が吹いている。
その起点にあるのが、TSMCのN2(2nm)量産立ち上げ、Samsungの2nm(SF2)量産安定化、そしてインテルの「High-NA EUV」導入構想(14A)だ。
本稿では、各社の最新公式発表・主要報道に基づいてロードマップと投資の勘所を再点検し、装置・材料メーカーにとっての“伸び代”を整理する。
TSMC:N2量産開始とA14のPPA指標

TSMCは、N2(2nm)を2025年内に量産入りさせる計画を公式イベントで明確にし、次のA14(約1.4nm)を2028年量産開始とした。A14ではN2比で同電力時に最大15%の性能向上、同性能時に最大30%の消費電力削減、ロジック密度20%以上の向上というPPA(Performance/Power/Area)指標を提示。標準セルはNanoFlex Proへ進化し、HPCに最適化した設計自由度を確保する。
パッケージでは、SoW-X(System-on-Wafer拡張)を2027年に量産する計画を打ち出し、HBMの多段積層や超大面積のRDL形成を前提とした“巨大パッケージ”の量産技術を先行させている。ファイナンス面でも2025年Q2の売上300.7億ドル・粗利58.6%と過去最高水準で、先端ノードと先端パッケージへの資金循環は盤石だ。
設計エコシステム側では、MediaTekが2025年9月にN2でテープアウト予定と表明しており、IP/LIB、EDAフローのGAA最適化が加速している。
N2初期はLow-NA EUV中心でレイヤ増・多重パターニングの最適化が続く。したがって、高感度かつ低LWRなEUVレジスト、高耐久ペリクル、マスク欠陥検査、線幅ばらつきを抑えるCD計測といった領域が、良率・タクトの立ち上がりを左右するだろう。
Samsung:“GAAの量産品質”で勝負

Samsungは、2nm(SF2)を2025年に投入する方針をIR資料で明確化した。GAAの実装は、MBCFET系で、チャネル応力、スペーサ、コンタクト抵抗、BEOLのRC最適化といった“工程間の相関”が歩留まりの鍵となる。HPC/AI/モバイルを横断する設計プラットフォームの拡充を進めつつ、大型の外部案件(Tesla向けAIチップ)の報道もあり、2nm世代の稼働を押し上げる可能性が注目されている。
選択エピ×ALD×高アスペクト比エッチ×精密洗浄の“複合最適化”が要。プロセス温度と歪制御(応力ライナー、低温成膜、低ダメージエッチ)の整合を図れるサプライヤが優位に立つだろう。車載・基地局・エッジAI向けの拡張では、長時間信頼性とテスト工程(バーンイン、自動検査)の装置需要が伴走する。
インテル:外部顧客獲得が不調なら先端製造からの撤退も

インテルは、14A(約1.4nm)でHigh-NA EUVを採用するというファウンドリ戦略を2025年春に再提示した。High-NAは解像度とプロセス自由度を押し上げる一方、装置価格が極めて高額で周辺エコ(レジスト、ペリクル、メトロロジ、マスクブランクス)の同時高度化が必須。同社は、PDKやテストチップを軸に外部顧客の確約を取りにいくというスタイルと取らざるを得ない状況だが、四半期決算では、外部顧客獲得が不調なら先端製造からの撤退もあり得るとの警鐘を投資家向けに示している。
High-NA対応の感度×ラチチュード最適レジスト、高透過・高耐熱ペリクル、マスク欠陥検査とCD-SEM/散乱計測の面積カバー率が新基準。量産でのスループットと欠陥密度(D0)のトレードオフを顧客と仕様合意(DTCO)できるかが勝負だ。
先端パッケージの重心移動:CoWoS-Lがもたらす“前工程化”
NVIDIAは、Blackwell世代でCoWoS-Lを主軸に据え、Hopper世代(CoWoS-S)も併走させる方針を示した。「需要は強いが必要技術が変わる」というメッセージは、RDL配線の微細・多層化、樹脂・アンダーフィルの熱機械特性ウィンドウの再定義、LSIブリッジ採用や大判サブストレートの反り管理といった“パッケージ側の前工程化”を意味する。
TSMCは9.5レチクル相当の大判CoWoSやSoW-Xの2027年量産開始を掲げており、搬送・露光・検査・計測の一体拡張が装置・材料の新たな需要曲線を形成する。
AIサーバー偏重が示す「量産KPI」
AIインフラでは、アクセラレーテッド・サーバーの構成比が2024年に約70%、2028年に75%超という見立てが提示されている。これは、ロジック(N2/14Aなどの先端ノード)とパッケージ(CoWoS-L/SoW-X)の同時能力増強を市場の既定路線にする。結果、量産KPIは歩留まり(D0/Yield)×タクト(CT)×信頼性(高温動作/長期ドリフト)の三つ巴になる。
EUV周辺材料(レジスト/ペリクル/マスク)、GAA工程(エピ/ALD/エッチ/洗浄)、大判パッケージ(RDL/樹脂/熱材)の“地味だが効果のある“改善が供給能力を底上げする。
装置・材料メーカーへの“実務的示唆”5点
以下に装置・材料メーカーへの“実務的示唆”5点を記す。
1. EUV周辺の改良が最短距離:N2初期はLow-NA中心。レジスト感度×LWR、ペリクル耐久、マスク欠陥検査を同時に上げる提案は歩留まりを直撃。High-NA本格化前にTSMC/インテル両対応の境界条件を固める。
2. GAAは“工程の総合格闘技”:選択エピ→ALD→高アスペクト比エッチ→精密洗浄の相関最適化が鍵。チャネル応力、コンタクト抵抗、BEOL RCの縦横トレードオフをモデル化して顧客と共有。
3. 先端パッケージはCT短縮勝負:RDL微細化・多層化、樹脂/アンダーフィルの粘弾性窓、基板反り制御で“CT=実需”の構図をつくる。大判化に合わせ、露光/検査/搬送の自動化をパッケージ工程に持ち込む。
4. DTCO/PKG-COの“使える”資料:設計者が採用判断に使えるアプリノート(界面抵抗の実測分布、熱/応力モデル、配線抵抗低減のデータ)を先出し。設計—製造の壁を跨ぐ資料が採用率を上げる。
5. KPIは“顧客コミット×量産指標”:TSMCのN2良率曲線/A14パイロット、Samsungの2nmデザインウィン、IntelのHigh-NA量産適合と外部顧客確約。四半期IRとテックイベントで“具体数字と名指し“をトリガーに動き出す。
“N2/SF2の量産実装”ד先端パッケージのタクト短縮”が主戦場に

2025年後半のロジック投資は、“N2/SF2の量産実装”ד先端パッケージのタクト短縮”が主戦場となるだろう。TSMCはN2立ち上げとA14の明確なPPA指標で前へ進み、SamsungはGAA量産の実務で追撃、インテルはHigh-NAをテコに14Aで逆転を狙う。
装置・材料サプライヤにとっては、EUV周辺の地味な改善、GAAの界面工学、CoWoS-L/SoW-Xの量産タクトといった“手触りのあるKPI”にリソースを集中させることが、最短で受注とスイッチングコスト(顧客の乗り換え難易度)を上げる道になる。生成AIは一過性ではない――その前提で、次の四半期から着手できる“量産KPI直結の提案”を持って顧客と接したいものだ。
*この記事は以下のサイトを参考に執筆しました。
参考リンク
企業公式
- TSMC Unveils Next-Generation A14 Process at North America Technology Symposium
- 2025 Q2 Quarterly Results – TSMC IR
- Samsung Electronics Announces First Quarter 2025 Results
- Intel Foundry Direct Connect 2025(Press Kit)
メディア
- MediaTek to tape out 2nm chip at TSMC in September, CEO says(Reuters)
- TSMC still evaluating ASML’s “High-NA” as Intel eyes future use(Reuters)
- Nvidia CEO says its advanced packaging technology needs are changing(Reuters)
- Intel shares slide on quarterly loss, foundry business exit risk(Reuters)
- Samsung Elec signs chip supply deal with Tesla, sources say(Reuters)
- Samsung to Make Tesla AI Chips in a $16.5 Billion Deal(Bloomberg)
調査機関