営業利益、前年の19倍。ーサムスン電子2Q(4月~6月)ーサムスン電子2Q26が映す、「メモリ・スーパーサイクル」の現実

SEMICON.TODAY
この記事を読むのにかかる時間: 7

たった1年で、営業利益が19倍になった。

サムスン電子が7月7日に開示した2Q26の暫定ガイダンスは、連結売上高171兆ウォン、連結営業利益89.4兆ウォン。四半期として過去最高益、しかも3四半期連続の記録更新である。牽引したのはAIサーバー向けのHBMと汎用DRAM——世界の半導体産業をいま揺らしている「メモリ・スーパーサイクル」そのものだ。ところが、記録的な数字を出したその日、株価はむしろ下落した。この記事は、その一見矛盾した反応の意味までを読み解く。

連結売上高
171兆W
YoY +129.3%
QoQ +27.7%
連結営業利益
89.4兆W
YoY 約19倍
QoQ +56.2%
営業利益率
52.3%
2Q25 6.3%
1Q26 42.8%
会社提示レンジ
170–172兆W
営業益
89.3–89.5兆W
確定決算
7/30
部門別内訳を
開示予定

1.  89.4兆ウォン——「四半期利益」で語れる規模を超えた

まず、数字の大きさに立ち止まりたい。2Q26の営業利益89.4兆ウォンは、前年同期(2Q25)の4.68兆ウォンの約19倍にあたる。前四半期の57.23兆ウォンからも56.2%積み増した。サムスンはこれで3四半期連続の最高益更新となり、四半期利益として過去最高を塗り替えた。

経営陣の自信も、平時のトーンではない。半導体部門(Device Solutions)トップは決算開示に先立つ7月上旬の社内会合で、2026年通期の利益が過去40年間の半導体事業で積み上げた累計利益を上回るとの見通しを示したと報じられている。市場では通期営業利益が300兆ウォン規模に達するとの見方も出ている。

今年1年の利益が、過去40年で積み上げた半導体の累計利益を超える。
— サムスン電子DS部門幹部の社内発言として報道

本記事の171兆ウォン・89.4兆ウォンは、いずれも会社提示レンジ(売上高170〜172兆ウォン、営業利益89.3〜89.5兆ウォン)の中央値である。韓国の開示規制上、会社は業績見通しをレンジで示せず、その代表値として中央値を公表している。確定値は7月30日の本決算で更新され得る。

Bar chart of sales: blue bars are actuals (2025: 74.57; 1Q26: 133.87); orange bar is 2026 forecast (171.00); title notes +129% YoY from AI memory demand.

図1:売上高の推移。2Q25→1Q26→2Q26で階段状に拡大(会社公表値、K-IFRS連結)。

2.  主役は「売上」ではなく「利益率」だ

売上が前年同期比+129%というのは、確かに大きい。だが本当のニュースはそこではない。

営業利益率が、前年同期の6.3%から52.3%へ跳ね上がった点にある。売上が約2.3倍になる間に、利益は約19倍。伸びの桁が違う。売上1ウォンあたりに残る利益が、この1年で劇的に厚くなったということだ。

Bar chart showing operating profit (left axis) and operating margin (right axis) across three periods: 2025 (前年同期) with ~4–6% margin, 2026 first half (1026 前四半期) with 42.8% margin and profit around 57.23, and 2026 provisional with profit around 89.40 and margin 52.3%. The blue bars represent profit, the orange bar marks the provisional 2026 figure, and the dark line tracks the rising operating margin.

図2:営業利益(棒)と営業利益率(線)。利益の伸びが売上の伸びを大きく上回る。

なぜ利益率がこれほど動くのか。答えはメモリの「単価」にある。調査会社などによれば、AIアクセラレータに不可欠なHBM(広帯域メモリ)は、ウエハ1枚あたりの収益が従来型DDR5のおよそ3〜5倍とされる。生産ラインをHBMや高付加価値DRAMへ振り向けるほど、同じ設備から生まれる利益が膨らむ。DRAM価格自体も2025年初からおよそ2倍に上昇したと報じられており、単価上昇がそのまま利益率に効いている。

財務指標の表。2025年比・1Q26・2Q暫定の売上高・営業利益・営業利益率とYoY・QoQの成長率を示す。

表:主要指標の推移。利益率は前年同期比+46.0pt(会社公表値ベース)。

3.  背景にある「メモリ・スーパーサイクル」

この決算は、サムスン一社の好調というより、メモリ産業の構造変化の一断面と見たほうが理解しやすい。

DRAM市場はサムスン・SKハイニックス・マイクロンの3社で売上の9割超を占める寡占市場だ(調査会社IDC)。その3社がそろって、生産能力をコンシューマ向けDRAM・NANDからAI向けHBMへ振り替えている。結果として、AI用メモリは潤沢になる一方、汎用メモリが構造的に不足する——という、従来の景気循環とは質の違う逼迫が起きている。

▪  供給は売り切れ:主要各社ともHBMは2026年分がほぼ完売とされ、供給側が価格の主導権を握る状況が続いている。

▪  価格は連続上昇:サムスンは汎用DRAMの参照価格を2026年1Qに前四半期比+約90%、2Qにさらに+50〜60%引き上げ、3Qも二桁の追加値上げを狙うと報じられている。

▪  割を食うのは消費者向け:容量の奪い合いで、2026年のスマートフォン出荷は約13%、PCは約11%の減少が見込まれるとの調査もある(IDC等)。AIの裏側で、身近な製品の部材が細っている。

つまりサムスンの89.4兆ウォンは、「AIインフラ投資 → HBM/DRAM逼迫 → 単価上昇 → メモリ各社の記録的マージン」という一本の線の上にある。この線がどこまで続くかが、次の論点になる。

4.  では、なぜ過去最高益で株価は下がったのか

記録づくめの開示に対し、市場の反応は祝福一色ではなかった。発表後、株価はむしろ一時6%超下落したと報じられている。理由は大きく二つに整理できる。

第一に、売上が「増収なのに未達」だったこと。
171兆ウォンという売上は、市場コンセンサス(報道ベースで約172.18兆ウォン)をわずかに下回った。利益は歴史的でも、トップラインは事前の強気な織り込みに届かなかった。

第二に、そして本質的に、「この利益率は続くのか」という問い。
市場では、メモリ不足は2027年以降まで続くとの見方が主流だが、DRAM価格が5年以上も高値を維持し続けた歴史はない。どこかの供給者が想定より早く増産すれば、価格の弾力性は一気に失われ得る。記録的な数字ほど、そのピークがいつ来るかへの警戒を強める——という逆説的な反応が、株価の動きに表れたと考えられる。

市場コンセンサス・株価反応・需給や価格に関する記述は各種報道および調査会社データに基づくもので、会社公表の確定値ではない。

5.  見逃せない伏線:サムスンの「HBM巻き返し」

この四半期をサムスンの物語として読むなら、もう一つの文脈がある。HBMでの巻き返しだ。

HBM市場では、2025年時点でSKハイニックスが売上シェア6割超(IDC)を握り、先行してきた。サムスンは一時、最先端HBMのNVIDIA向け認定で苦戦したと報じられたが、2025年後半に認定を通過し、2026年に入るとHBM4の本格供給へと駒を進めたとされる。

今回の記録的マージンは、その巻き返しが数字として表れ始めた可能性を示す。だからこそ7月30日の本決算では、「利益の大きさ」だけでなく「その中身」——とりわけHBMがどれだけ寄与したか——が問われることになる。

6.  7月30日、確定決算で何を確かめるか

暫定ガイダンスは売上高と営業利益しか語らない。物語の「答え合わせ」は、部門別内訳が開示される本決算で行われる。

▪  どこが稼いだのか:半導体(メモリ/ファウンドリ)、モバイル、ディスプレイの部門別内訳。増益がどこまでメモリに集中しているか。半導体が牽引し、モバイル等は相対的に低調とされる点の確認。

▪  HBMと価格の実像:HBM・DRAM・NANDの出荷ビット成長率と平均販売単価。需給逼迫がいつまで続くかについての会社の見立て。

▪  利益に潜む一過性:労使交渉に伴う従業員賞与引当(営業利益の約1割を賞与に配分する等の報道がある)が、確定利益をどれだけ押し下げるか。

▪  還元と投資:純利益・EPS・キャッシュフロー、そして記録的利益をどう再投資・還元に回すか。

7.  同日の関連開示:従業員への自己株式処分という「人への投資」

決算ガイダンスと同じ7月7日、サムスンはもう一つの開示を出している。従業員株式報酬を目的とした自己株式の処分だ。処分予定は普通株1,083,434株、対象は49,345人。処分対象株価318,000ウォン(7月6日終値基準)で、金額は約3,445億ウォンにのぼる。市場での売却ではなく、対象従業員の口座へ入庫する形をとる。

発行済株式5,846,278,608株に対する比率は約0.019%で、希薄化はごく軽微。金額の派手さより、メッセージ性が読みどころだ。メモリ人材の争奪が激しいスーパーサイクルのただ中で、記録的利益を株式報酬として従業員に配分する——増益の還元先が株主だけでない、という姿勢がにじむ。

Bar chart titled with employee stock compensation scale, showing 82.09 million ordinary shares before disposal and about 1.08 million ordinary shares planned for disposal, with percentages 0.019% issued and ~1.32% treasury.

図3:自己株式処分の規模。処分予定は保有自己株式のごく一部にとどまる。

財務開示テーブル。項目と内容が2列で並ぶ表。開示日は2026年7月7日。

8.  主要データ一覧

4列の財務表。分類・項目・数値・備考の見出しと、2Q6暫定の連結売上高169兆円/ウォン相当などの中央値が並ぶ。

9.  出典・免責

▪  Samsung Electronics, “Samsung Electronics Announces Earnings Guidance for Second Quarter 2026”, Samsung Global Newsroom, 2026年7月7日(売上・営業利益・レンジ・比較値の一次情報)。

▪  DART(韓国電子公示システム), サムスン電子「主要事項報告書/自己株式処分決定」, 2026年7月7日。処分前自己株式数(82,086,705株・1.40%)は関連報道とも整合。

▪  メモリ市場シェア・HBM市場構造・DRAM価格動向は調査会社IDCおよび各社開示・各種報道による。市場コンセンサス(約172.18兆ウォン)・株価反応・DRAM値上げ幅・経営陣発言・従業員賞与引当は各種報道ベースであり、会社公表の確定値ではない。

本記事はサムスン電子の公表資料および各種報道に基づく情報整理であり、投資勧誘または投資助言を目的としたものではない。暫定ガイダンスは外部監査前の見積りであり、確定決算では更新される可能性がある。市場コンセンサス・株価反応・部門別動向など報道ベースの情報は会社公表の確定値ではない。数値は丸め処理により端数が一致しない場合がある。

この記事で取り上げた分野では、現在も採用が活発です。以下は、semicon.todayの編集部が記事のテーマをもとに選定した求人情報です。広告・PRではありません
※採用状況により求人内容が更新される場合があります

応募前に。履歴書アップだけでマッチ度がわかる。
TOP
CLOSE
 
SEARCH