この会社は、できあがった半導体が正しく動くかを確かめる“検査装置(テスタ)”をつくる、世界大手のメーカーだ。AI向けの高性能なチップほど検査に時間と手間がかかり、この会社の装置が多く必要になる。
2026年4〜9月の上期は、売上が前年より+61%の8,452億円、1株利益は+119%の509円と、ともに過去最高だった。背景はAIブームで、データセンター向けチップの生産が増えている。注目すべきは“伸びの中身”で、7〜9月はSoCテスタの売上が前年の2倍に増えた。出荷先では台湾の比率が44%→55%に上がった。会社は通期予想を引き上げ、売上1兆8,630億円・1株利益1,027円を見込む。
かんたん解説:むずかしい言葉を最小限にして説明します。
●テスタ=できあがった半導体に電気信号を送り、正しく動くかを調べる装置。
●SoC=計算や制御を1つにまとめたチップ。AI向けのプロセッサーなど。
●メモリ=データを記憶するチップ。DRAMや、電源を切っても消えない不揮発性メモリがある。
●上期=4〜9月の6か月。3月決算の会社の、1年の前半にあたる。
●営業利益率=売上のうち、本業のもうけとして残る割合。
●金額=「億円」の概数で示す。会計基準は国際会計基準(IFRS)。
| 売上(4〜9月) 8,452億円 前年比 +61% 中間期で過去最高 | 営業利益 4,568億円 前年比 +97% 利益率 44.1%→54.0% | 7〜9月の営業利益率 55.9% 前年 41.3% 四半期で過去最高益 | 通期の営業利益予想 9,670億円 7月予想 8,460億円 前期比 +94% | 新たな自社株買い 2,800億円 上限・1,100万株 2027年3月24日まで |
1. まず結論——AIチップの“検査”需要が、利益を倍増させた
アドバンテストの上期決算は、伸び率の大きさより“何が伸びたか”に目を向けたい。AI向けのチップが増え、しかも複雑になったことで、検査の仕事そのものが膨らんでいる。要点は3つだ。
①過去最高の上期。 売上は前年より+61%の8,452億円、営業利益は+97%の4,568億円で、ほぼ2倍になった。7〜9月の営業利益率は55.9%に達し、四半期の売上と利益も過去最高を更新した。
②主役はSoCテスタ。 AI向けのプロセッサーなどを検査するSoCテスタの売上は、7〜9月に前年の2倍強の3,533億円。出荷先では台湾向けが2,613億円と、全体の5割強を占めた。
③予想を引き上げ、還元も拡大。 通期の営業利益予想を8,460億円から9,670億円へ引き上げた。中間配当は49円(前年29円)に増やし、上限2,800億円の自社株買いも決めた。
2. 会社全体の成績——利益がほぼ倍増、利益率は5割を超えた
上期の売上は8,452億円(前年比+61%)、営業利益は4,568億円(+97%)。営業利益率は44.1%→54.0%と、10ポイント近く上がった。会社は、増収に加えて売上の構成(ミックス)が良くなったことを理由に挙げる。7〜9月だけを見ると、売上は4,777億円で前年比+82%、前四半期比+30%。営業利益は2,668億円で、前年の2.5倍だ。会社が7月に示した7〜9月の見通し(売上4,345億円)も上回った。円安も追い風で、平均為替は1ドル160円と前年の146円から円安に振れた。

図1:四半期の売上(棒)と営業利益(線)。通期予想から逆算すると、下期も高い水準が続く(点線)。
3. 事業別——SoCテスタが主役、メモリとサービスも伸びる
検査装置を売るテストシステム部門は、上期の売上が+61%の7,702億円、部門利益は+89%の4,556億円。中でもSoCテスタが伸び、7〜9月の売上は3,533億円で前年の2倍強になった。7〜9月は、テストシステム部門の売上の8割をSoCテスタが占めた(編集部算出)。メモリテスタも、データセンター投資を背景にDRAM向けと不揮発性メモリ向けが増え、+22%の534億円。保守や消耗品を扱うサービス他部門は、売上が+54%の750億円に伸びた。装置の設置台数が増えるほど、保守の売上も積み上がる“ストック型”の稼ぎだ。

図2:製品別の7〜9月の売上(灰=前年同期、紺=今期)。SoCテスタの売上が前年の2倍強に増えた。
4. 伸びの中身——AIチップの複雑化が、検査の量を増やした
この決算最大の論点は、検査の“量”そのものが増えていることだ。会社は、AI向けの高性能チップは生産数量が増えるだけでなく、複数のチップを1つにまとめる先端パッケージの採用などで複雑になり、必要な検査が増えていると説明する。会社の推定では、テスタの市場規模は2024年の約60億ドルから、2025年に約90億ドル、2026年は130億〜145億ドルへ広がる。SoCテスタはその見通しの上限近くで推移しているという。需要に応えるため、SoCテスタの年間生産能力は5,000台以上に達した。10,000台の目標も、大幅な前倒しを目指す。

図3:テスタの市場規模(会社推定・暦年)。2026年は前年から5割前後広がる見通し(点線)。
5. 地域別——台湾向けが急増し、過半を占めた
アドバンテストの売上は、ほぼすべて海外向けだ(上期の海外比率99.4%)。出荷先で見ると、7〜9月は台湾向けが2,613億円と前年の2倍強に増えた。台湾の比率は44%→55%に上がり、全体の増収分の約7割を台湾向けが占めた(編集部算出)。AI向けの先端チップの生産が、台湾に集まっていることを映す。中国向けは+73%の901億円で、比率は2割弱とほぼ横ばい。一方、韓国向けは+15%の646億円にとどまり、比率は21%→14%に下がった。生産の中心がどこにあるかを、地域の数字がよく表している。

図4:出荷先地域別の7〜9月の売上(灰=前年同期、紺・橙=今期)。台湾向けの伸びが突出した。
| 「過去最高」という見出しの内側で起きているのは、検査の“量と難しさ”の同時拡大だ。チップが賢くなるほど、確かめる手間も増える——アドバンテストはその関門を押さえている。 ワンポイント=アドバンテストは“半導体の検査装置”の大手。AI向けのチップが複雑になるほど、この会社の出番も増える。 |
6. 数字を読むときの注意点
■ 税引前利益に評価益:上期の税引前利益5,102億円には、戦略投資に関わる金融商品の評価益542億円が含まれる。
■ 円安の追い風:平均為替は1ドル160円で前年より円安。会社は1円の円安で通期の営業利益が58億円増えるとみる。
■ 在庫が大きく増加:棚卸資産は3月末から1,207億円増えて3,524億円。増産に備えた積み増しとみられる(編集部の見立て)。
■ 地域は出荷先ベース:地域別は装置を届けた場所で集計しており、最終的な顧客の国籍とは一致しない。
7. この先のシナリオ
会社は通期予想を上方修正し、売上1兆8,630億円(前期比+65%)、営業利益9,670億円(+94%)、1株利益1,027円とした。逆算すると下期は売上1兆178億円、営業利益5,102億円で、上期をさらに上回る(編集部算出)。下期の営業利益率は50%を超える見通しだ。部材コストの上昇を織り込みつつ、SoCテスタの売上拡大と製品構成の改善で、7月時点の予想より約3ポイント高くなるという。下期の為替は1ドル150円と、上期より円高を前提にしている。テスタ市場は2027年も需要が供給を上回る状態が続くと会社はみる。
8. この先のチェックポイント
■ 生産能力の拡大:SoCテスタの年間10,000台体制を、どこまで前倒しできるか。
■ 利益率の維持:部材コストが上がる中で、50%超の営業利益率を保てるか。
■ 台湾への集中:台湾向けが過半を占める構成が、今後どう動くか。
■ 自社株買いの実行:上限2,800億円の枠を、3月までにどこまで使うか。
9. 市場環境
会社は、2026年の半導体市場がAI向けの高性能チップを牽引役に高い成長を続けるとみる。テスタ市場も、推論AIの広がりで過去最大の規模を更新する見通しだ。一方で、メモリなど主要部品の需要は供給を上回っており、部材の調達と生産能力の確保が成長の制約になり得る。会社は、中東情勢による物流コストの増加なども挙げつつ、直接の影響は現時点で限定的だとする。AIチップの“量と難しさ”が増え続ける限り、検査装置の需要は追い風を受けやすい。供給網を広げる力が、次の成長を左右する(編集部の見立て)。
10. 主要データ



注:本文・カード・図は概数、表は一次資料の値。製品別・地域別と7〜9月の数値は決算説明会資料(10億円単位)を億円に換算した。SoCテスタの比率、台湾向けの増収寄与、下期の逆算値は編集部算出。テスタの市場規模は会社推定。
11. 出典・ご注意
■ 出典:アドバンテスト 2027年3月期第2四半期(中間期)決算短信と決算説明会資料、同日の適時開示(IFRS・連結、レビュー対象外)。
■ 予想は会社の見込み:通期の業績予想と市場規模の推定は会社の見込みで、実際の結果は異なり得る。
| 本記事は公表資料にもとづく決算の解説で、投資を勧めるものではありません。「過去最高」は会社の開示にもとづきます。地域別の比率は出荷先ベースの構成比の変化で、顧客の国籍を示すものではありません。SoCテスタの比率、台湾向けの増収寄与、下期の逆算値は編集部の算出です。金額は「億円」の概数で示しており、丸めにより合計が一致しない場合があります。投資の判断はご自身の責任でお願いします。 |
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