この記事のポイント
- 海博思創が内蒙古包頭市で蓄電システムとAI計算センターを一体運用するプロジェクトを着工しました。
- 蓄電設備の供給にとどまらず、電力供給やAI計算能力、さらには「トークン(Token)」の生成・提供へと高付加価値化を図ります。
- AIデータセンター(AIDC)の電力消費急増を背景に、蓄電業界では電力網との協調や市場取引を通じた新ビジネスの開拓が加速しています。
- 初期投資負担や異分野での運用ノウハウ不足、電力市場ルールの未整備といった課題も存在します。
蓄電とAI計算の融合が生む新たな付加価値
内蒙古自治区包頭市において、北京海博思創科技股份有限公司(以下、海博思創)が運用する2.4GWh規模の蓄電ステーションの敷地で、新たなプロジェクトが動き出しました。同社が着工した「包頭蓄電・計算一体化プロジェクト」および「トークン工場」は、電力網側の蓄電設備と分散型AI計算センター(智算中心)を統合配置し、共同運用する試みです。従来の蓄電設備の納入から、長期的な電力供給および計算能力サービスの提供へと事業領域を広げる狙いがあります。
この取り組みは、中国国内の蓄電産業が計算能力インフラへと事業を越境させる最新の動きを象徴しています。新エネルギーの出力変動緩和を支える役割から、計算インフラの必須電源へと応用の裾野が広がっています。電力市場化改革や計算・電力協調(算電協同)政策に後押しされ、システムインテグレーター各社は技術と設備を継続的なサービス収益に変える新たな事業機会を模索しています。
急成長する計算センターが高価値な需要先に
国家エネルギー局のデータによると、2025年末時点における中国全国の新型蓄電の設備容量は1億3,600万kW/3億5,100万kWhに達し、前年比84%増を記録しました。そのうち独立型蓄電が51.2%を占めています。
新エネルギー発電所に対する蓄電設備の義務的併設が撤廃されたことで、蓄電事業には独立した市場取引による収益性と経済性が一段と強く求められるようになりました。アモイ大学中国エネルギー政策研究院の林伯強院長は、安価な時間帯に充電し高価な時間帯に放電する市場取引を通じてリターンを得る重要性が高まっていると指摘します。
こうした中、急成長を遂げるAI計算インフラが有望な市場として浮上しています。2026年4月に国家発展改革委員会など4部門が発表した「人工知能とエネルギーの相互エンパワーメント促進行動方案」でも、計算施設へのグリッドフォーミング(構網型)蓄電の導入や、電力市場価格のシグナルに応じたエネルギー管理の最適化が推奨されています。
海博思創の張剣輝会長兼CEOは、今後5年間で最も電力消費が急増する分野として計算センターを挙げ、「革新的なAIアプリケーションが登場すれば電力消費は指数関数的に跳ね上がる。計算センターは蓄電にとって最も潜在力のある高価値な応用市場だ」と語っています。
「物理的な併設」から「深い結合」へ
従来のプロジェクトでは、計算センターの敷地内に蓄電設備を並べて配置し、独立した負荷に対して安定給電を行う形態が主流でした。しかし今回の包頭プロジェクトでは、蓄電所とAI計算センターを同一構内に配置し、電力供給と計算処理を一体的に制御します。「電力供給に合わせて計算を実行し、計算負荷に応じて電力を調整する」という協調運用を実現する計画です。
AIサーバーは負荷変動が激しく、高速な応答速度と高品質な電力が求められます。そのため、外部系統からの変動を蓄電システムで吸収するだけでなく、サーバルーム側にも急速充放電が可能な高レートの蓄電設備を配備します。さらに、蓄電設備を活用して基本料金(契約電力・最大デマンド)を抑制するほか、系統側のピークシフトや周波数調整などの電力サービス市場へ参入し、多重の収益化を目指します。
また、計算センターの運営に向けて、海博思創は北京並行科技股份有限公司と提携し、計算・電力協調やクラウドサービスを展開します。張剣輝CEOは、「電力を売るだけでは原材料を売るようなものだが、計算能力として提供すれば加工品になり、さらに『トークン(Token)』として出力すれば付加価値は何倍にも拡大する」と、エネルギーからデジタル経済へとつながるバリューチェーンの意義を強調しています。
参入各社が直面するコストと制度の壁
蓄電と計算能力の融合には、陽光電源や双登股份などの大手蓄電企業も相次いで参入しており、AIデータセンター(AIDC)向けの蓄電池や受変電システムの開発を加速させています。
ただし、事業の本格普及には課題も残されています。アモイ大学の林伯強院長は、データセンターの安定稼働とグリーン電力比率向上の両立において、依然として蓄電システムの導入コストが最大の制約要因になっていると分析しています。また、中国化学・物理電源行業協会の劉勇副主任委員は、異分野にまたがる運用経験の不足、多額の設備投資、電力市場取引ルールの未統一といったリスクを挙げ、各社が自社の強みを見極めて参入することの重要性を呼びかけています。
蓄電ビジネスの競争軸は、単体の機器性能からシステムの協調制御や長期運用能力へと移行しつつあります。再生可能エネルギーの有効利用とAI時代の電力需要急増という双方の課題を解決する手段として、蓄電と計算インフラの一体化が注目されています。
出典: 元記事を読む
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