この記事のポイント
- 中国国務院常務会議が「AI+」行動の進捗を報告し、実用化起点の技術革新を推進する方針を明示。
- AI投資の収益化を見据え、欧米の仮想経済偏重と一線を画し実体経済への実装に注力。
- 電力消費課題に対し、計算能力と電力の協調(算電協同)やグリーン技術の導入を加速。
- AIによるセキュリティ運用の自動化と、AIモデル自体の堅牢化という両面からの安全対策を提唱。
実用化起点の技術革新を掲げる「AI+」行動の新展開
10月16日に開催された中国国務院常務会議において、「AI+(人工知能プラス)」行動の進捗状況に関する報告が行われ、一連の新たな施策が打ち出されました。その中で、現場への実用化によって技術革新を牽引していく方針が明確に示され、中国におけるAI発展の道筋が示されました。
AIは現在、前例のない深さと広がりで経済社会の各領域に浸透しており、新一輪の科学技術革命と産業変革を主導する戦略的な推進力となっています。先ごろ発布された「新質生産力の発展に関する意見」においても、「AI+」行動を全面的に実施し、従来型産業のAIによる刷新や新世代スマートデバイスの応用シーン開拓を迅速に進める方針が示されています。
国務院常務会議では、AIが将来の発展を左右する極めて重要な変数であると指摘されました。中国が有する整った産業体系、豊富な応用シナリオ、優れたエンジニアリング能力といった強みを活かし、現場への実用化を起点に技術革新を加速させ、「AI+」行動を深耕・拡大していく必要があります。
収益化を重視した実体経済へのAI適用
専門家は、この方針の背景には中国の発展段階における比較優位性と、AI産業の進化における本質的な論理が存在すると分析しています。
北京交通大学中国ハイエンド製造業研究センター執行主任の朱明皓氏は、「中国は産業体系が完全で製品の種類も豊富であり、AIを適用できるシーンが整っているため、重要プロセスにおけるAI技術の反復適用を迅速に実現できます。『AI+』行動の実施は、超大規模な市場の強みを活かし、経済の高品質な発展を促進するための重要施策です」と述べています。
工業情報化部(工信部)情報通信経済専門家委員会の盤和林委員は、投資の視点から次のように指摘しています。現在、AIを巡ってはバブルか否かの議論が続いていますが、焦点は「AIの応用によって収益を上げられるかどうか」にあります。将来的に利益を生み出せるのであれば、この投資ブームの本質は技術革命といえますが、そうでなければ後退を余儀なくされます。中国が現場での実用化を技術革新の前提条件と位置づけたのは、明確な応用先を起点としてAIによるソリューションを導き出すためです。
「計算能力と電力の協調」によるインフラ基盤の強化
国務院常務会議では、発展の基盤を固め、技術開発やアルゴリズムの革新を強化することに加え、「計算能力と電力の協調(算電協同)」の促進や高品質なデータ供給の拡充、弱点の補強と強みの伸長に取り組むことが求められました。
浪潮信息(Inspur Electronic Information Industry)の副総経理である趙帥氏は、「計算能力と電力の協調は、構想から実践の段階へと移行しています」と語ります。従来のデータセンターの給電方式は電力損失が大きいという課題を抱えていました。浪潮信息ではエネルギー消費のロスを低減するため、800V高圧直流(HVDC)に基づく給電アーキテクチャの研究開発に注力し、中間工程での損失を削減しています。同社はすでに中国西北部で高密度・低消費電力のAI計算センターを複数開設し、「現地発電・現地演算」による協調モデルを開拓しています。同地域の電力企業向けに構築されたAI計算センターでは、太陽光発電、蓄電池、廃熱回収などの省エネ技術を融合し、年間で320万度の節電を達成しています。
スマート製造への全面展開とセキュリティ対策の高度化
また会議では、実体経済への支援を重点に需給連携を強化し、共同研究開発や実証検証(パイロットプラント試験)を推進して、AI技術を実体的な生産力へ転換することが強調されました。
盤和林氏は、中国が実体経済へのエンパワーメントに注力している点は、仮想経済に重きを置く欧米のアプローチとは異なると指摘します。データ要素の活用、AIサービス事業者の育成、現場への実用化の徹底など、いずれも実体経済を強化し、製造業やサービス業の競争力を高めることを目的としています。
朱明皓氏は、新世代スマート製造を主力分野とし、国家先進製造業クラスターを基盤として業界共通の高品質データセットや企業専用データベースを構築することを提案しています。汎用基盤モデル、業界特化型モデル、企業知識ベースを統合したアルゴリズム体系を整備し、単点での適用から製品ライフサイクル全体やサプライチェーン全体への適用へと拡大すべきだと提言しています。さらに、従来型産業の技術改良を通じて、研究開発設計やエンボディドAI(具身知能)装備への応用を深め、スマート製品への転換を図ることが重要です。
発展と安全の統括も重要なテーマとなりました。緑盟科技集団(NSFOCUS)副総裁の湯旭氏は、サイバー攻撃が産業化する一方で、防御側はルールや人手だけに頼る体制では対応が困難になっていると述べています。対応策としては、AIを活用して防御運用を自律型へ進化させると同時に、AIシステム自体を評価・防護・対応の全方位で保護する「双方の駆動」が必要であると提唱しています。
出典: 元記事を読む
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