この記事のポイント
- 2025年の車載電池の廃棄量約50万トンに対し、湿法製錬の処理能力は400万トンを超え大幅な原料不足に直面しています。
- 2030年には累計廃棄量が300万トンを突破する見通しで、低収益なリン酸鉄リチウム(LFP)電池の比率拡大が課題となります。
- トレーサビリティの義務化や拡大生産者責任を定めた新管理規則が施行され、製品設計段階からの見直しが進んでいます。
先行する処理能力と原料不足による需給ギャップ
近年、新エネルギー自動車(NEV)の普及と車載電池の搭載量拡大に伴い、業界の関心は「どれだけ生産・搭載するか」から「使用済み電池をどう処理するか」へと移っています。これまで成長市場と見なされてきた車載電池リサイクルは、政策の具体化と使用済み電池の増加が進む新たなフェーズに入りました。
しかし、業界が現在直面している喫緊の課題は、処理しきれないほど電池が溢れていることではなく、処理能力が先行して整備された一方で原料となる使用済み電池が足りないという点です。中国物資再生協会廃電池回収利用分会の統計によると、2025年の中国国内における車載電池の廃棄量は約50万トンであるのに対し、湿法製錬(Hydrometallurgy)ベースのリサイクル処理能力はすでに400万トンを超えています。今後2〜3年は「原料不足とリサイクル処理能力の過剰」が業界の大きな特徴になるとみられています。
この需給ギャップにより、リサイクル事業者は低い設備稼働率と設備の遊休化に直面しており、規模の経済が働きにくく利益率が圧迫されています。限られた原料を巡って事業者間での買取り価格のつり上げ競争が発生しており、多額の投資を行った正規事業者の中には、十分な原料を確保できず受託加工業務へシフトする動きも見られます。
2030年には累計廃棄量が300万トン超へ、LFPの比率拡大が課題に
中国公安部のデータによると、2025年末時点の新エネルギー車保有量は4397万台に達しています。また、中国電池工業協会のデータでは、2025年の車載電池搭載量は前年比40%超増の769.7GWh、2026年1〜7月は前年同期比15%超増の410.2GWhを記録しました。同協会の予測によると、2030年までに中国国内の累計廃棄量は300万トンを超える見込みです。乗用車向けが回収の主力となり、2030年には乗用車の廃車に伴う電池廃棄が120万台分を超える一方、バス向けは2025年から2026年にかけて14GWh以上のピークを迎えた後に減少すると予測されています。
量的な拡大だけでなく、回収される電池の構成変化も事業環境に影響を与えています。車載電池は通常5〜8年で使用済みとなりますが、2021年にリン酸鉄リチウム(LFP)電池の搭載量が三元系電池(NCM/NCA)を初めて逆転しました。これに伴い、今後はLFPの廃棄比率が急速に高まる見込みです。2026年1〜7月の搭載量データでは、LFPが全体の81.7%を占めており、2030年までにLFPの累計廃棄量は200GWhを突破すると試算されています。三元系電池も2025年以降、毎年10GWh以上の廃棄規模で安定推移する見通しです。
これまでの主流だった三元系電池に比べ、LFPは金属価値が低く、収益性が炭酸リチウムの市況に大きく左右されます。「回収量は増えても、1トンあたりの利益は低下する」という状況が予想されるため、従来の湿法製錬だけでなく、電極シートの直接再生や、鉄・リン・黒鉛材料の高付加価値回収といった新たな技術開発が急務となっています。
トレーサビリティ義務化と設計見直しで再構築へ向かう回収サプライチェーン
法規制の面では、2025年4月1日より「新エネルギー自動車廃旧動力電池回収および総合利用管理暫行弁法」が施行されました。国家レベルのトレーサビリティ情報プラットフォームが構築され、生産、販売、保守、交換から解体、リサイクルに至るライフサイクル全体の追跡管理が義務付けられたほか、電池メーカーや自動車メーカーの回収責任が明確化されました。
自動車メーカーに対しては販売エリアに応じた回収拠点の整備が求められており、中国全土ですでに7000カ所以上(試行地域で5000カ所以上)の回収拠点が設置されています。ただし、現状は使用済み電池そのものに経済的価値があるため、メーカーが回収する前に他社に買い取られてしまうケースも多く、生産者責任の枠組みが完全に機能するまでには需給バランスの調整が必要とされています。
さらに、電池の解体やリサイクルを容易にするための「製品設計」も重要視されています。現行の車載電池パック(PACK)には安全確保のために多量の接着剤が充填されているケースがあり、解体時にセルを取り出せないといった問題や、プラスチック等の固形廃棄物が増加する原因となっています。新管理規則では、保守や解体が容易な固定・締結部品の採用が求められており、自動車メーカーや電池メーカーには、開発の初期段階からリサイクル性や標準化を意識した製品設計への対応が求められています。
出典: 元記事を読む
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