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SEMICON.TODAY 6 min · 2026.08.26

【シーメンス_2026年度第3四半期決算深堀記事】注文(受注)が過去最高の279億ユーロ、本業4部門の利益も+25%で最高益。半導体・AIとの“2つのつながり”が業績を牽引——①半導体の設計ソフト(EDA)、②AIデータセンター向けの電気設備だ。

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シーメンスは、工場の自動化、電力・電気設備、鉄道、医療機器まで幅広く手がける、ドイツの総合電機大手だ。一見すると半導体とは遠そうだが、実はAI・半導体と“2つの太いパイプ”でつながっている。
2026年度の第3四半期(4〜6月)は、これから納める注文(受注)が過去最高の279億ユーロ(前年比+13%)、売上208億ユーロ(+7%)と非常に好調だった。注文の多さを示す指標「受注÷売上」は1.34で、1を大きく超える=将来の売上が積み上がっているサインだ。本業4部門の利益(インダストリアル・ビジネス利益)は+25%の35億ユーロで過去最高。最終利益も+15%と伸びた。ここでSEMICON.TODAYの読者に効くのが“半導体・AIとの2つのつながり”だ。①デジタル部門は半導体の設計図を描くソフト(EDA)を持ち、ソフト売上が+16%。②電気設備部門はAIデータセンター向けの電源需要で受注が+40%と急増した。会社は通期の見通しも上方修正している。

かんたん解説:むずかしい言葉を最小限にして説明します。
●受注(注文)=これから納める仕事の積み上がり。
●受注÷売上(book-to-bill)=1を超えると「注文>納品」で将来の売上が積み上がっているサイン。
●EDA=半導体の設計図を描くための専用ソフト。
●データセンター向け電源/電気設備=AIの計算を支える施設に必要な電気の設備。
●本業4部門の利益(インダストリアル・ビジネス利益)=シーメンスの中核4事業の利益合計。
●実質(comparable)=為替や買収の影響を除いたベース。金額はユーロ(€1=約170円前後)。

1. まず結論——記録的な四半期、半導体・AIとの“2つのつながり”が主役

要点は3つだ。

①記録ずくめの四半期。 これから納める注文(受注)が過去最高の279億ユーロ、本業4部門の利益(インダストリアル・ビジネス利益)も+25%の35億ユーロで過去最高。注文の多さを示す「受注÷売上」は1.34で、将来の売上が積み上がっている状態だ。

②半導体との接点①=設計ソフト(EDA)。 デジタル部門は、半導体の“設計図”を描く専用ソフト(EDA)を持っている。この四半期はソフト売上が+16%と伸び、部門の採算も改善した。AIチップの設計が活発になるほど、この設計ソフトの出番も増える。

③半導体との接点②=AIデータセンターの電気設備。 電気設備部門は、AIのデータセンターに必要な電源・電力設備の需要を取り込み、注文(受注)が+40%と急増した。AIの計算は大量の電気を使うため、その“電気のインフラ”を支える事業が伸びている。要するに、シーメンスは半導体そのものはつくらないが、“設計ソフト”と“電気設備”の両面からAI・半導体の波に乗っている。

2. 会社全体の成績——注文も利益も過去最高

会社全体では、注文(受注)が過去最高の279億ユーロ(+13%、為替等を除く実質で+14%)、売上208億ユーロ(+7%、実質+8%)。注文が売上を大きく上回り(受注÷売上=1.34)、将来の売上の“貯金”が積み上がった。本業4部門の利益は35億ユーロ(+25%)で、売上に占める利益率は17.3%。最終利益は26億ユーロ(+15%)、会社が生み出す現金(フリーキャッシュフロー)も約41億ユーロへ増えた。

図1:会社全体の注文(受注)と売上(百万ユーロ)。受注は過去最高の27,902、受注÷売上は1.34。

3. 半導体との接点①:デジタル部門——設計ソフト(EDA)が牽引

デジタル部門(工場の自動化などを手がける)は、売上+12%・利益+44%と回復した。その中で存在感を示したのが、半導体の設計図を描くソフト(EDA)を含むソフトウェア事業で、売上は+16%。ソフトは利益率が高いため、部門の利益率も14.5%→18.7%へ改善した。AIチップの設計が活発になるほど、EDAの需要も伸びる——半導体業界にとって見逃せないつながりだ(なお、買収したソフト会社の合流も伸びに寄与している)。

図2:デジタル部門の売上・ソフト売上・利益率。
ソフト(EDA中心)が+16%、利益率は14.5%→18.7%へ改善。

4. 半導体との接点②:電気設備部門——AIデータセンターで受注+40%

もう一つの接点が、電気設備部門(スマート・インフラストラクチャー)だ。AIのデータセンターは膨大な電気を使うため、電源・受変電などの電気設備の需要が急拡大している。この四半期、同部門の注文(受注)は+40%と急増し、四半期として過去最高を記録した。AIブームの“電気の側”を支える事業が、シーメンスの受注を押し上げている。

図3:部門別の注文(受注)の前年比。
電気設備部門がデータセンター向けで+40%と急増。

シーメンスは半導体そのものはつくらない。しかしAIの波に“2つの側面”で乗っている——チップを設計するソフト(EDA)と、AIデータセンターを動かす電気設備だ。
ワンポイント=AIは「設計」でも「電力」でも需要を生む。シーメンスはその両方を押さえている。

5. 部門別の利益——本業4部門が全体を押し上げ

本業4部門の利益を見ると、デジタル部門(+44%)と医療機器部門(+28%)が牽引した。電気設備部門も好調で、一部に一時的なプラス要因(関税の還付など)を含みつつ、利益率が改善した。一方、鉄道部門(モビリティ)は利益がやや減った。総じて、複数の部門がそろって伸び、全社の記録的な利益につながった。

図4:部門別の利益の前年比。デジタル部門+44%・医療機器+28%が牽引、鉄道はやや減少。

6. 財務・株主還元

会社が生み出す現金(フリーキャッシュフロー)は約41億ユーロ(+42%)へ増加し、財務は良好だ。最終利益は26億ユーロ(+15%)、1株あたり利益は2.93ユーロ(買収に伴う会計上の償却を除くと3.14ユーロ)。もっとも、最終利益の伸び(+15%)が本業4部門の利益の伸び(+25%)より小さいのは、前年に一時的なプラス要因が多かったことの反動という側面がある。

7. 会社計画(見通しの上方修正)

好調を受けて、会社は通期の1株あたり利益の見通しを引き上げた(買収の償却を除くベースで11.20〜11.50ユーロ、従来は10.70〜11.10ユーロ)。半導体の設計ソフト(EDA)と、AIデータセンター向けの電気設備という2つの追い風が続くとの見立てだ。ただし、EDA単体は想定どおりのやや弱めの動きで、ソフト+16%には買収の合流分が含まれる点、電気設備の利益率には一時的なプラス要因が含まれる点には留意したい。

8. この先のチェックポイント

  • 設計ソフト(EDA):AIチップ設計の活発化で、EDAの“実力”の伸びが続くか(買収分を除いた地力)。
  • データセンター電源:電気設備部門の受注+40%の勢いが持続するか。
  • 受注の消化:積み上がった注文(受注÷売上=1.34)が、今後の売上に着実に変わるか。
  • 利益の質:前年の一時要因の反動を除いた、本業の伸びの持続力。

9. 市場環境(用語のかんたん整理)

AIの拡大は、半導体の「設計」と「電力」の両面で需要を生む。シーメンスは、設計ソフト(EDA)でチップ設計を、電気設備でデータセンターの電源を支えており、その両方で恩恵を受けている。加えて、工場の自動化や医療機器など幅広い事業を持つため、特定分野の変動を分散できる強みもある。一方で、為替(ユーロと各国通貨)や、買収に伴う会計処理、前年の一時要因の反動などが、利益の“見え方”に影響する点は理解しておきたい。

10. 主要データ(数字の一覧)

注:受注÷売上(book-to-bill)1.34は、注文が売上を上回り将来の売上が積み上がっている状態を示す。ソフト+16%には買収の合流分を含む。電気設備の利益率には一時的なプラス要因を含む。最終利益+15%が本業4部門の利益+25%より小さいのは前年の一時要因の反動。数字は会社開示にもとづく。

11. 出典・ご注意

本記事は公表資料にもとづく決算の解説で、投資を勧めるものではありません。ソフト+16%には買収の合流分、電気設備の利益率には一時的なプラス要因を含みます。最終利益の伸びが本業4部門の利益の伸びより小さいのは前年の一時要因の反動という面があります。金額は丸めにより合計が一致しない場合があります。投資の判断はご自身の責任でお願いします。

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