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SEMICON.TODAY 6 min · 2026.08.27

【グローバルウェーハズ_2026年上期決算深堀記事】最終利益は+80.9%の“大増益”。でも中身に注意——営業利益はむしろ▲42.3%と悪化。利益が増えた本当の理由は、保有する金融商品の“含み益”という一時的な要因だった。

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この会社は、スマホやパソコン、AIサーバーに入る半導体チップの“土台”になるシリコンウェーハ(直径30cmほどの円盤)をつくる、世界大手のメーカーだ。
2026年上期(1〜6月)の決算は、最終利益(純利益)が前年から+80.9%と大きく伸びた。ところが、会社の営業利益はむしろ▲42.3%と落ち込んでいる。なぜ本業が悪いのに最終利益は増えたのか——答えは「本業以外の利益」にある。同社は保有する金融商品の値上がり(含み益)などで大きな利益を計上し、それが最終利益を押し上げた。ただしこの含み益は“売って現金が入ったわけではない”一時的なもの。つまり今回の決算は、本業の実力が落ちているのに、一時的な利益で“増益”に見えている——そこを見分けるのがポイントだ。

かんたん解説:むずかしい言葉を最小限にして説明します。
●シリコンウェーハ=半導体チップをつくる土台の円盤(いわば“チップのピザ生地”)。
●営業利益=本業で稼いだ利益。●営業外の利益=本業とは関係ない、利息や為替、持っている株・金融商品の値上がりなどの利益。
●含み益(評価益)=保有資産の“値上がり分”。まだ売っていないので現金は増えていない、帳簿上の利益。
●EPS=1株あたりの利益。金額は「億台湾ドル」で表記(1台湾ドル=おおよそ数円)。

1. まず結論——“大増益”の正体は本業ではなく一時的な含み益

今回の決算は、ひとことで言うと「本業は苦しいのに、最終利益だけが大きく伸びた」決算だ。ポイントを3つに整理する。

①本業は縮んでいる。 売上は前年より▲7.6%減り、粗利率も26.1%→20.7%へ低下。営業利益は▲42.3%と、ほぼ半分近くまで落ち込んだ。シリコンウェーハの市場が“谷”にあり、値段や数量が伸び悩んでいるためだ。

②なのに最終利益は+80.9%も増えた。 その理由は本業ではなく「本業以外の利益(営業外損益)」にある。ここが前年の▲6億台湾ドルから+40億台湾ドルへと大きく改善し、営業利益(29億台湾ドル)を上回る規模で利益を押し上げた。中身の大半は、同社が保有する金融商品の“含み益”(評価益)だ。

③含み益は“現金が入っていない”一時的なもの。 この含み益は、保有資産の値段が上がったことを帳簿に反映しただけで、売って現金を得たわけではない。市場が逆に動けば“含み損”にもなり得る。だから最終利益の数字だけを見て「絶好調」と判断するのは危うい。会社の実力は、営業利益で見るのが正しい。

2. 本業と最終利益が“逆方向”に動いた

上期の数字を並べると、そのちぐはぐさがよく分かる。売上(▲7.6%)と営業利益(▲42.3%)は下を向いているのに、税引き前の利益(+56.8%)と最終利益(+80.9%)は上を向いている。売上と本業が下がっているのに最終利益が上がる——この“逆方向の動き”こそ、今回の決算の特徴だ。両者の差を生んだのが、本業と最終利益のあいだに入る「本業以外の利益」である。

図1:本業(売上・営業利益)は減少なのに、税引き前・最終利益は増加。
差を生んだのは本業以外の利益。

3. 本業が苦しい理由——シリコンウェーハ市場は“谷”

本業の苦しさは「利益率」に表れている。粗利率は26.1%→20.7%へ、営業利益率は15.9%→9.9%へ低下した。売上が減っても工場の固定費(設備の維持費など)は簡単には減らないため、利益率が下がりやすい。シリコンウェーハは半導体づくりの“いちばん最初の材料”で、AI・先端向けの一部は強いものの、汎用品を中心に在庫調整や値下げ圧力が続いている。要するに、業界全体が需要の谷にあり、その影響が本業の採算低下として出ている。

図2:利益率が低下(上期)。粗利率26.1%→20.7%、営業利益率15.9%→9.9%。

4. 最終利益を押し上げた“本業以外の利益”の正体

最終利益を押し上げたエンジンは、本業以外の利益(営業外損益)だ。内訳を見ると、「その他の利益・損失」という項目が前年の▲12億台湾ドルから+35億台湾ドルへと激変している。これは主に、同社が持つ金融商品の“含み益”(時価が上がった分を帳簿に載せたもの)で、現金を伴わない一時的な利益だ。さらに、手元資金から得る利息収入が利息の支払いを上回り、+5億台湾ドルほど利益に貢献した。この2つで、本業以外の利益は前年の▲6億台湾ドルから+40億台湾ドルへと大きく好転した。

図3:本業以外の利益の中身(上期)。
「その他の利益・損失」(金融商品の含み益など)が+35億台湾ドルと急増。

“最終利益+80.9%”という見出しだけを見ると絶好調に見える。だが営業利益は▲42.3%。増益の主役は、金融商品の含み益という“売って現金が入ったわけではない”一時的な利益だ。
ワンポイント=会社の本当の実力は「営業利益」で見るのがコツ。最終利益は一時的な要因で大きく上下することがある。

5. 四半期で見ると——利益の急増は4〜6月に集中

上期を3カ月ごと(1〜3月と4〜6月)に分けると、からくりがさらにはっきりする。営業利益は1〜3月が14.8億台湾ドル、4〜6月が14.2億台湾ドルとほぼ横ばい。ところが最終利益は1〜3月の19.0億台湾ドルに対し、4〜6月は37.8億台湾ドルとほぼ倍増した。本業は変わっていないのに最終利益だけが跳ねた——その差の正体が、4〜6月に集中した金融商品の含み益である。

図4:四半期別の営業利益と最終利益。
本業(営業利益)は横ばいなのに、4〜6月の最終利益だけが急増。

6. 財務の健全性は高い

会社の体力(財務)はしっかりしている。2026年6月末で、資産の合計は2,192億台湾ドル、自己資本(返さなくてよい自前のお金)は967億台湾ドルで、総資産に占める自己資本の割合は44%と健全だ。手元資金も厚い。一方で、成長に向けた大型の設備投資を続けており、そのための社債(借金)は約245億台湾ドルへ増えた。市況が谷でも将来の増産に備えて投資を続けている、という姿勢がうかがえる。

7. この先のシナリオ

シリコンウェーハは、AI・データセンター向けの先端分野では強さがある一方、パソコンやスマホなど汎用向けでは在庫調整・値下げが続いている。同じ業界の日本のSUMCOでも似た“谷”が決算に出ており、業界共通の局面といえる。カギは、①汎用品の需要と価格がいつ底を打つか、②AI向けの伸びがいつ営業利益の回復につながるか、だ。なお、今回利益を押し上げた金融商品の含み益は、市場次第で反対(含み損)にも振れる。だからこそ、実力は営業利益で見極めることが大切になる。

8. 市場環境(用語のかんたん整理)

シリコンウェーハ市場は「AI・先端は強いが、汎用は弱い」という二極化の局面にある。加えて、台湾の会社なので為替(台湾ドルと米ドルの動き)の影響を受けやすく、これが本業以外の利益(為替差益や金融商品の評価)を大きく揺らす。金利の動き(利息の受け取り・支払い)や、大型投資に伴う費用も、利益の“見え方”に影響する。今回の“大増益”も、こうした本業以外の要因が重なって生まれたものだ。

9. 今後のチェックポイント

  • 営業利益は戻るか:粗利率20.7%・営業利益率9.9%まで下がった採算が、市況回復とともに底打ちするか。
  • 一時要因を除くとどうか:最終利益を押し上げた含み益(+約35億台湾ドル)は一時的。これを除いた“実力ベース”の利益水準に注目。
  • 市況と価格:汎用シリコンウェーハの在庫・価格が底を打つ時期、AI・先端向けの伸びるペース。
  • 為替・金利:台湾ドルの動きが本業以外の利益(為替・含み益)に与える影響、借金の利息負担。
  • 投資の回収:続けている大型投資が、需要回復時にどれだけ稼働率・採算の改善につながるか。

10. 主要データ(数字の一覧)

注:最終利益+80.9%は「本業以外の利益」(前年▲605→今回+4,033百万台湾ドル)の改善が主因で、営業利益は▲42.3%。中身の中心は金融商品の含み益(+3,513百万台湾ドル、現金を伴わない一時的な利益)。4〜6月に利益が集中した。数字は台湾MOPS開示の原資料(千台湾ドル単位)を換算。

11. 出典・ご注意

本記事は公表資料にもとづく決算の解説で、投資を勧めるものではありません。最終利益の大幅増は、金融商品の含み益など“本業以外・一時的”な要因が主因で、営業利益は減少しています。含み益は市場次第で反対(含み損)にも変わり得ます。金額は原資料(千・百万台湾ドル)を億・百万台湾ドルに換算しており、丸めにより合計が一致しない場合があります。投資の判断はご自身の責任でお願いします。
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