製造の「自己完結」に向かう中国半導体——需給曲線が“多点均衡”へ移行するその先は?

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2025年は、中国が半導体の製造工程のほとんどを自国で行う、つまり「自己完結」を念頭に入れた動きを、量(成熟ノード量産)・組み合わせ(先端パッケージ/Chiplet)・設計基盤(EDA/IP)の三方向で加速した年だった。

前工程ではSMICが堅調な売上と増産方針を示し、後工程ではJCETが過去最高の売上を更新。設計ではSAMR(国家市場監督管理総局)が米国のSynopsys–Ansysの大型買収を条件付き承認し、SiCarrierの子会社Yunqifangが国産EDAを発表した。メモリではCXMTが上海での上場計画を進める。さらに、NVIDIAは中国向けにHBM(高帯域メモリ)非依存の新GPUを報じられた仕様で準備し、パッケージ前提の再設計が現実味を帯びた。

本稿は、このような中国半導体の「自己完結」実現に向けた動きを考察する。

「質より量」で攻めるSMIC

SMICは、2025年8月に2025年4–6月期(Q2)の売上22.09億USD、稼働率92.5%を公表した。2024年通期は売上80.30億USD(前年比27%増)、粗利18.0%、CAPEX73.30億USDで、設備投資と操業水準の双方が底上げされている。

2025年7–9月期(Q3)については、会社計画で売上前期比5〜7%増、粗利18〜20%のレンジ感が示されている(いずれも同社開示)。

先端EUVがどれだけこの好調に寄与しているかは限定的だが、電源IC/MCU/センサ読み出し/ディスプレイ駆動といった“質より量”の用途での置き換えが、国内の供給の確実性と価格弾力に大きく影響していると言える。

DUV多重露光+プロセス最適化でEUV非依存のアプローチを補完

SiCarrierは、2025年3月27日、DUV多重露光(マルチパターニング)と高選択比エッチ/成膜を組み合わせることで、「5nm級相当も視野に入る」と発表した。これは、歩留まり・スループットのコスト関数が鍵となる。成熟ノードで蓄積したプロセス統計を用い、発電量を抑制・制御することを図る“工程起点の微細化”が追求されている。

さらに、BSPDN(Backside Power Delivery Network)のような電源配線をチップ裏面から供給し、表面の信号配線混雑やIRドロップを軽減する設計潮流は、配線抵抗やIRドロップを抑え、PPA(性能/消費電力/面積)の配分余地を広げる。露光負担の一部を配線・電源配分側に逃がす設計最適化は、EUV非依存のアプローチを補完する可能性がある。

HBM前提と“HBMレス設計”が並走

JCETは2025年8月20日の中間報告で、上半期売上1,861億元RMB(前年同期比20.1%増)、Q2 927億元RMB(同7.2%増)と過去最高を公表した。

2.5D/3D、駆動能力の向上、通信プロトコルであるSiPへの投資を継続し、FC-BGA基板/RDL(再配線層)/信頼性検査といったボトルネック領域の設備前倒しが続く。

これと並行して、NVIDIAについては2025年5月24日付の報道で、中国向けGPUアーキテクチャ「Blackwell」がGDDR7には採用されたが、TSMCのCoWoSには非採用となり、その価格6,500〜8,000USD帯と伝えられた。

このようなHBM依存を下げた構成により、グラフィックス処理に特化した高速なメモリChiplet×GDDRや駆動能力向上/ブリッジ等の組み合わせで、帯域・コスト・供給確実性のトレードオフを調整する設計自由度が広がる、との見方がある。

CXMTの調達資金はHBM開発や後工程設備などへ向かう

CXMTについては、2025年10月21日に、上海でのIPO計画(評価額最大3,000億元=約421億USD)が報じられた。調達資金はHBM開発や上海での後工程設備などへ向かう可能性が指摘されている。

先端AIチップの対中供給制約が続く前提では、演算とメモリに不均一なボトルネックが生じやすい。HBMを使いにくい設計制約の下で、GDDR+Chiplet等の折衷構成が広がるほど、材料(フォト/エッチ/成膜/検査)と後工程(スタック良率/熱/テスト)の連動需要が高まる。価格形成は用途別・構成別に分岐し、“ビット当たりコスト×歩留まり”の改善が業績に直結する。

EDA/IP相互運用性やモデル相関の可視化が重視

2025年7月14日、SAMRは米国SynopsysによるAnsys買収を条件付き承認した。中国顧客への公平な供給・価格・相互運用性の維持などを前提に、EDAアクセス確保を政策的に担保した格好でとなった。

さらに2025年10月15日には、SiCarrierの子会社Yunqifangが国産EDAツールを発表したと報じられた。EDAはPDK(Process Design Kit)/ライブラリ互換、検証フロー、モデル精度が採用の要件となる。今後は国産EDA/IPとの相互運用性やモデル相関の可視化(例:誤差分布、設計ルール適合率)が、見積段階での評価軸としてより重視されるだろう。

量×組み合わせ×設計の3点セットで“多点均衡”に

SMICの量産増とJCETの後工程強化により、中国の成熟ノード供給力は着実に積み上がっている。SiCarrier(Yunqifang)の動きは、DUV多重露光+工程最適化を起点にEUV非依存の微細化を補完し、NVIDIAの中国向けBlackwell派生に関する報道は、“HBMレス”という別系統の実装アーキテクチャを選択肢に押し上げた。CXMTの資本調達は、DRAM/将来のHBMの国内吸収力を押し上げる可能性がある。

結果として2025年の中国市場は、量(成熟)×組み合わせ(パッケージ)×設計(EDA/IP)の3点セットで、需給曲線が一様低下ではなく、安定した均衡状態が複数存在する“多点均衡”へ移行している。短期はタクト×歩留まりの改善による稼働最適化、中期はHBM前提とHBMレスの並走に応じた配線・熱・検査の作り分け、横断では国産EDA/IPとの相互運用性を前提にしたDesign–Technology–Packageの一体設計が競争力の核になる。

*この記事は以下のサイトを参考に執筆しました。
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