半導体のイベントは、その開催地域ごとにどのような需要と供給のポイントがあるかを把握する格好の指標となる。その点で、北米の「SEMICON West」は、米国産業における半導体のポジションを知るうえで欠かせない存在だ。
本稿では、「SEMICON West 2025」の出展社数・小間数・入場(来場)規模の推移に焦点を当て、フェニックス移転という文脈まで含めて、米国半導体の存在感の低下を読み解く。
SEMICON Westの現状:出展は回復、開催地は“製造クラスタ”へ

「SEMICON West 2024」(サンフランシスコ、7月9–11日)の出展社数は646社であった。2023年は580社であり、年単位で回復が確認できる。
それにはAI投資サイクルの立ち上がりが背景にあり、北米の展示需要も戻り基調となっている。
同時に、2025年の開催地はアリゾナ州フェニックスへ移った。
50年以上続いたサンフランシスコ開催からの転換は、米国内クラスタの重心が内陸へ移る兆候と整合する。
製造拠点・サプライヤの集積とCHIPS法に連動した投資が、来場動線をIT・設計中心(湾岸)から製造に近い内陸(アリゾナ)へ引き寄せている。
アジアの主要イベント:出展規模が示す供給網の密度

アジア主要イベントの出展規模を、2024年の公式公開値で比較すると、
- SEMICON China 2024(上海、2024年3月):出展社数 1,030社
- SEMICON Japan 2024(東京ビッグサイト、2024年12月):出展社数 1,182社
- SEMICON Taiwan 2024(台北、2024年9月):出展社数 700社/ブース数 2,450小間
これらと比べると、SEMICON West 2024の646社は、中国・日本の2/3〜1/2程度、台湾にもブース総量では及ばない。
出展の幅広さは装置・材料・後工程・周辺インフラまで含む裾野の広さとほぼ相関するため、“展示会規模=市場の近さ×供給網の密度”という関係式が成り立つ。米国は設計・需要面の主導力を維持しながらも、製造装置・材料の展示密度という観点ではアジアが厚いのが現実だ。
「入場者数」が語るもの:北米は意思決定層の来場が多い

入場者数は、現地の産業密度と再投資意欲を反映している。
ただしその計測方法(延べカウントか、ユニーク来場か)が主催者ごとに異なる点には留意が必要だ。
アジアのメガイベントは数万〜十万人規模になる年が珍しくない。一方、SEMICON Westは総量で見劣りしても、意思決定層の来場比率が高いと評価されることが多い。
実務上は、「来場規模(量)×決裁関与度(質)×出展密度」=出展投資の費用対効果という見立てが有効である。
米国の相対的低下は主として“量”に表れ、“質”では競争力を維持している。
このような量と質のねじれが、グローバル展示ポートフォリオの最適化を難しくする本質なのだ。
フェニックス移転が意味するもの:米国イベントの“質的転換”

今回のPhoenix Convention Centerへの移行は、単なる会場変更にとどまらない。
製造クラスタの近傍で開催することにより、来場者の属性(製造・調達・設備投資に関与する層)を増やし、商談の確度を引き上げる狙いがある。
これまでのサンフランシスコに象徴されるようなIT・設計エコシステム中心から、製造現場に寄った議題設計への切り替えだ。
結果として、北米のイベントは“量”の不足を“関与の深さ”で補う方向へ舵を切っている。先端プロセス材料、先端パッケージング、EHS/規制(PFAS等)といった製造現場直結のテーマを厚くすることで、米国内サプライチェーンの即応性を高める効果が見込める。
米国が“量の不足”を“質の濃さ”で補う設計への転換点

こうしてみると、アジアは出展・来場の絶対量で市場の近さと供給網の密度を示し、北米は意思決定密度で差別化するという構図になる。
2025年のフェニックス移転は、米国が“量の不足”を“質の濃さ”で補う設計への転換点となっているのだ。
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