“第2期トランプ政権×半導体”の現在地──関税・CHIPS・対中輸出を〈制度と現場〉で読む

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2025年は、半導体サプライチェーンにとって、米国の政策が直接影響を及ぼした年であると言える。
第2期トランプ政権の発足(2025年1月20日)以降、相互主義を掲げる関税の新枠組み、「CHIPS法」の運用をめぐる綱引き、対中輸出管理の再調整が連続している。
加えて、2025年10月7〜9日にアリゾナ州フェニックスで開催される「SEMICON West 2025」は、米国の製造回帰を可視化する舞台となる。

本稿は、①関税、②CHIPS法、③対中輸出、④展示会で見て取れた“現場の動き”の4軸で、第2期トランプ政権の政策が半導体にどのような影響を与えたかを整理する。

関税: HTSUSから読み取る実務線引き

2025年4月2日の大統領令14257「Reciprocal Tariff Strategy(相互主義関税)」は、追加従価税の例外品目として「半導体」を挙げた。また、「米国関税率表(HTSUS)」には、半導体デバイスや半導体製造装置などが示されている。

一方で、完成品側の課税設計が新たな論点として浮上した。2025年9月26日、トランプ米政権は外国から輸入される電子機器について、搭載している半導体の数に基づいて関税を課すことを検討していると報じられた。具体的なレートや免除要件は未確定だが、企業に製造拠点の米国への移転を促すことが目的だという。

これに対し、調達の現場で取るべき方策は次の3点である。第一に、対象品目のHS/HTSUSコードの再点検。第二に、「関税込み見積もり」と「除外適用後見積もり」の二重提示を原則化すること。第三に、代替サプライヤの通関実装能力(免税適用の実績・体制)の評価。これらを四半期ごとに連動し、制度変更を価格・納期・在庫方針へ速やかに織り込むのである。

CHIPS法:廃止論は後退か

2025年3月5日、トランプ大統領は上下両院合同会議でCHIPS法の廃止を求めたが、議会のキープレイヤーは否定的立場を示し、即時廃止は困難との見方が優勢になった。

同年8月15日には、CHIPS資金を活用した特定企業(Intel)への資本性支援(持株取得)を検討する報道が浮上した。これは、交付金中心のスキームに、融資や資本性手段を組み合わせる案が議論段階で具体化してきたことを示す。これにより、選択肢を増やす再設計が始まったと言える。

対中輸出:性能グレードとSKU設計を“設備条件”まで束ねる

2023〜2024年の規制強化を経て、2025年は「どのグレードまで、どの条件で」許可するかが焦点である。中国市場向けGPU(例:H20)をめぐっては、中国側の国家系メディアが安全保障上の懸念を主張する論調が続いた。他方、米側の制度運用は、演算性能・帯域・相互接続といった技術的閾値で線引きし、個別許認可の枠内で限定的な出荷経路を残す構えである。政策と技術の両面で“再調整”が続く状況になった。

現場の優先課題は3つ。①SKU設計では、中国向け限定SKUとグローバルSKUの差分(演算性能、I/O、メモリ帯域、NVLink等)を明確化し、同一ボード/同一シャーシでの混載可否を検証する。②ソフトウェア互換性では、CUDAやドライバの整合、主要フレームワークの最適化、推論・学習の再現性を検証し、SKU差異が運用コストへ与える影響を金額換算まで落とす。③データセンター設計では、電力密度(kW/ラック)、冷却方式(空冷・液冷)、ラックあたりGPU枚数、光配線要件を、許認可のタイムラインと連動させて二本立て計画(許認可獲得時の高グレード構成/不許可時の代替構成)を事前に用意する。

SEMICON West 2025:政策変数を“商談の変数”へ翻訳する

SEMICON West 2025は、2025年10月7〜9日にアリゾナ州のフェニックスで開催される。TSMC・Intelの新工場が集積するアリゾナは、装置・材料・人材需給が強く可視化される地域だ。会期中は、経営者級セッション、サプライチェーン、異種集積(アドバンストパッケージング)、スマートマニュファクチャリング、ワークフォースなど、製造回帰の実装に直結するテーマが並んだ。

ここでのポイントは、政策変数を見積条件へ“読み替える”ことである。関税では、適用除外のHTSUSコード(例:8542、8486など)を前提に、装置・部材の価格条件へ反映する。輸入完成品側の「チップ価値連動」案が検討段階にあるため、二重見積もり(除外適用/非適用)をデフォルトにして交渉する。CHIPSでは、交付・融資・資本性のミックス可能性を織り込んだ資金計画の組み替えと、四半期KPI(雇用、国産化率、研究集積)の外部説明パッケージ化を進める。輸出管理では、SKU・ライセンス・納期を一体管理し、前世代SKUやCPU+アクセラレータ等の代替案を同時提示して意思決定を加速する。

展示会は、制度の“読み替え”を商談票に落とし込む場でもある。バイヤーは、除外の証憑、輸出許認可の見通し、補助金・融資のマイルストーンを、価格・納期・体制の3軸で突き合わせる。ベンダーは、通関・許認可・資金調達といった政策対応力を製品仕様と並列で示し、価格以外の差別化に転化する。

制度の理解度で左右される競争力

第2期トランプ政権下では、半導体の競争力は技術指標だけでなく制度の理解度で左右されると言える。
関税は、相互主義関税の追加従価税からの除外を正確に読みつつ、完成品側の新課税設計の検討に備える。
CHIPSは、資金の出し方の議論拡張を前提にキャッシュフローを再設計し、四半期KPIで継続性を高める。
対中輸出は、性能グレード管理・SKU設計・ソフト互換・設備計画を一体で最適化する。

展示会は、これら前提を見積・契約・工程計画へ読み替える“現場の中心機器”である。四半期ごとの制度アップデートを設計条件表に反映し、意思決定の鮮度を保つことが、次の投資機会を確実に掴む最短経路なのだ。

*この記事は以下のサイトを参考に執筆しました。
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