三つの最新トピックから読み解く!──HBM以外の帯域と容量の選択肢

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現在の半導体市場の主役は、非常に高い帯域幅を持つ次世代DRAMメモリであるHBM(High Bandwidth Memory)のように見える。しかし、設計現場ではHBMだけではコスト・容量・消費電力の最適化が成立しないのが現実だ。事実、サーバー/PC/車載/エッジは、DDR系の汎用帯域とNANDの大容量を組み合わせる階層設計となっている。

本稿は、公式発表に基づく三つの最新トピック――①中国の長江メモリ(YMTC)のXtacking® 4.0を用いた「Gen5 TLC」、②台湾Nanyaの「1B世代DDR5(5600量産・6400 ES)」、③日本Kioxiaの「4.8Gb/s NANDインターフェース+CBA」――を取り上げ、“物理I/O速度(Gb/s・MT/s)”と“実効帯域(GB/s)”の違いや、HBM以外の選択肢を確認する。

YMTC: Gen5 TLCとXtacking® 4.0の現状

YMTCは「Xtacking® 4.0」について、I/O速度 最大3,600MT/s(X3比+50%)、および1Tb品の6-plane動作を発表している。ここでいうMT/s(メガトランスファー毎秒)は、NANDインターフェースの転送レートを示す物理層の指標で、コントローラとのチャネル設計・キュー深度・ウェアレベリングなど実装要素でSSD実効スループット(GB/s)は別途決まる。

Xtacking®は、周辺回路CMOSとセルを別ウエハで最適化→後工程で接合する方式で、I/Oの高速化と世代更新の柔軟性(ロジック側の独立進化)を狙う技術だ。公表範囲のスペックに限定すれば、Gen5 TLCは「I/O 3,600MT/s・1Tbクラス・6-plane」という設計の土台を提示しており、クライアントからデータセンターまでのSSDで“容量あたりの取得コスト”を抑えつつI/Oを押し上げる方向性が確認できる。

Nanya:1B DDR5──5600量産・6400 ES

Nanyaは、IRで、1Bノードの16Gb DDR5-5600量産と16Gb DDR5-6400のESを公式に公表している。“1チャネル=64-bit(=8Byte)”の一般的前提とすると、

  • DDR5-5600:5,600MT/s × 8Byte = 44.8GB/s
  • DDR5-6400(ES):6,400MT/s × 8Byte = 51.2GB/s

となる。これはHBMの数百GB/s/スタックには及ばないが、DIMMの入手性・コスト・消費電力・実装の成熟度を含むTCOで優位な局面は依然多い。特に車載では、長期供給(10年以上)の前提やAEC-Q100等の品質要件が重視されるため、ジェネリック帯域を堅実に底上げするDDR5の世代進化が“基盤の選択”として有力になってくる。

Nanyaは、TSV/DDPの検証済みも発表しており、将来的な大容量化オプションへの地ならしという位置づけになっている。

Kioxia :4.8Gb/s世代+CBA

Kioxiaと米国SanDiskは、「ISSCC 2025」で、NANDインターフェース 4.8Gb/s(ピン当たり)と、低消費電力・高密度化に資する一連の技術要素を発表した。公式リリースでは、

  • CBA(CMOS directly Bonded to Array):ロジックとセルを別製造→直接接合し、信号経路短縮と電力効率向上を狙う
  • Toggle DDR 6.0+SCA(Separate Command Address)+PI-LTT(低電圧電源の活用)
  • 第10世代3Dフラッシュ(BiCS10)で332層、インターフェース速度は第8世代比+33%(=4.8Gb/s)、入出力の電力効率も改善

といった“要素技術→I/O→電力効率→密度”の流れで整理されている。ポイントは、4.8Gb/sは“インターフェース速度(Gb/s)”であり、SSD全体のGB/sはチャネル構成・コントローラ・PCIe世代などシステム設計次第で決まることだ。改善ベクトルは、AIサーバー/データセンターSSDのI/O効率と電力性能の底上げに直結しうる。

“HBM以外”をどう選ぶか——三つの物差し

公式発表の範囲だけでも、HBM以外の選択肢は前進していると言える。YMTC Gen5 TLC(I/O 3,600MT/s, Xtacking® 4.0)は、容量コストを抑えつつI/Oを前進、Nanya 1B DDR5は汎用帯域を世代更新、Kioxiaの4.8Gb/s+CBAはI/O効率・電力の同時改善を狙う。それぞれ狙いどころが異なるため、比較の物差しを以下の三点に絞るのが現実的だろう。

  1. 帯域密度(GB/s/GB):限られた容量にどれだけ帯域を載せられるか
  2. 容量密度(TB/ラック):設定電力枠の中で積める容量の上限
  3. 電力効率(GB/s/W):I/O性能をどれだけ少ない消費電力で得られるか

HBMは“最速のチップ”として不可欠だが、DDR5とNANDは“土台”として不可欠な存在だ。そして、I/Oの更新(MT/s・Gb/s)と電力効率の改善が、全体TCO(総所有コスト)を押し下げる。SKU(最小在庫管理単位)を“帯域密度×容量密度×電力効率”で見比べ、その用途によって“ちょうど良いバランスの技術”を選ぶ——これが“HBM以外”選択の最適解ではないだろうか。

*この記事は以下のサイトを参考に執筆しました。
参考リンク(公式・一次情報のみ)

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