“ボトルネックの移動” ──“後工程”が半導体供給の速度決定の要因へ

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最先端の露光が進んでも、出荷はテストで止まる——。生成AIの拡大でHBM(High Bandwidth Memory)搭載製品が急伸し、2.5D/3D実装と電気特性・信頼性評価を含む“後工程”が半導体供給の速度を決定づける大きな要素へとなってきた。

2025年2月、ASEは先端パッケージ/テストの売上を年16億USDの規模へ倍増させる見通しを示し、8月にはJCETが上期・第2四半期で過去最高を更新した。日本勢は一部で外部委託に頼らず、工程間の距離を詰める内製×自動化でCT(Cycle Time:組立から信頼性評価・最終出荷までの総タクト)短縮に挑んでいる。3月、東芝は姫路の新後工程棟の完成を公表した。

本稿は、OSAT(アセンブリ、パッケージング、およびテストを請け負う企業群)の拡張政策と、日本のIDM(垂直統合型デバイスメーカー)群の選択的内製の対照から、“ボトルネックの移動”を読み解く。評価軸はCT(工程別寄与)・テスト並列度・再測率の三つである。

ASE──“テストを収益ドライバーへ”変換

世界最大のOSATである台湾ASE Technology Holdingは2025年の見通しとして、先端パッケージ/先端テスト合計で年16億USD規模を掲げる。軸はHBM向けのシリコンインターポーザ実装や、チップレット前提の2.5D/3D組立だ。

HBMは1スタックのビット密度が高く、初回合格率の小さな揺らぎが再測の行列を一気に膨らませる。対策は明快で、高並列テスタの導入と自動搬送(ハンドラ、ストッカー、AGV)最適化を併走させ、サイト数(同時測定CH)×UPH(Units Per Hour)の積を押し上げることに尽きる。

ASEは装置+フローの両輪で“詰まり”を外し、テストキャパシティそのものを収益ドライバーに変換しにいく構えだ。

JCET──“過去最高”を支える高稼働とデータ連携

ASEに次ぐOSATである中国のJCETは、2025年の中間報告で上期・第2四半期ともに過去最高売上を示した。背景はHBMと高性能ロジックの後工程需要である。テスト部門の稼働は高止まりしやすく、装置導入スピード/並列度/歩留改善を同時に回す運転が求められる。

ここで鍵を握るのは、工程横断のデータ連携である。組立直後の不良モード(接続抵抗、TSV、熱影響など)をテスト条件へ即時フィードバックできれば、条件最適化→初回合格率改善→再測率低下の好循環が回る。足元の開示情報が示す範囲では、JCETは投資拡張と並行して、このデータ運用の精度を高める方向へ舵を切っており、先端ラインの拡張とデータ連携の強化が収益の土台になっている。

日本のIDM──“選択的内製”でCTを短縮する

少なくとも東芝の事例では、後工程の内製×自動化により、組立→電気特性→信頼性→最終の工程別CT(サイクルタイム)を短縮する取り組みが進む。HBM世代は1ロットのスタック数が多く、初回合格率の数ポイントが再測行列の消失=総CT短縮に直結する。内製の利点は品質・機密の担保に加え、設計・製造・検査の距離が近いことだ。歩留データの即時還流でテスト条件を細かく切り直し、不良モードの収束を早められる。

ただし、これは日本IDM全体に一律適用できる帰結ではない。内製は設備・人材の固定費負担が大きく、製品ごとに“どこまで自社で持つべきか”の線引きが要る。合理的な落としどころは、機密・品質責任・応答速度が重い製品は内製、ピークキャパやコスト最適はOSATという混成ポートフォリオだ。勝敗は、工程間データの粒度と反応速度で決まる。

“ボトルネックの移動”を三つの指標で測る

前工程の露光能力が律速だった局面から、2.5D/3D実装+HBMテストに重心が移りつつある兆候は、公開された一次発表および主要報道からも読み取れる。企業差を踏まえつつ、次の三つを四半期KPIとして定点観測したい。

1. CT(工程別寄与)
どの工程の待ち行列が最長か。HBMでは信頼性工程(温度サイクル、バーンイン、Soak)が長引くため、前段の高速化だけでは全体CTが縮まらないことがある。工程別の“詰まり位置”を四半期で更新する。

2. テスト並列度×UPH
スループットは並列サイト数×UPHで概観できるが、HBMの高帯域テストでは“Gbps/W”(テスタ処理効率)が上限を決める。電源・発熱・信号品質(ジッタ、アイマージン)が並列化の天井を規定し、台数増が直線に効かない。治具熱設計や電源系マージン、搬送のチョコ停対策まで含めて全体最適を図る。

3. 再測率(=初回合格率の裏返し)
初回合格率の数ポイント改善で、再測行列の長さは大きく変わる。主要因(マージン不足、治具要因、条件過不足、温調安定化不足)を潰し込むには、組立→テストの即時フィードバックが効果的だ。

量のOSAT vs 質の内製——四つの比較軸

次に四つの軸で、量のOSAT と質の内製を比較してみる。

1. キャパシティ
装置台数ではなく、実効並列度とGbps/Wを含めた“テスト実効キャパ”で比較。OSATは設備密度と稼働で優位、内製は対象製品の選別で効率を出す。

2. スピード(CT)
OSATは多段ラインでピーク処理に強い。内製は工程間距離の短さから条件変更→再測縮小→CT改善の反応速度で勝ちやすい。

3. 品質(初回合格率/再測率)
OSATは多数顧客の横断知見で初期条件の立ち上げが速い。内製は顧客別・製品別の細かなカスタム条件を高頻度で反映できる。

4. 柔軟性(仕様変更への応答)
HBM世代は、テスト仕様の個別最適が増える。OSATは標準化領域で強く、内製は機密性・頻繁な変更への追従性で優位だ。

“自社の詰まりはどこで、なぜ生じているか”を早く診断すべし

これまで見てきたように、ASEは装置×自動搬送の強化でテストを収益ドライバーへ押し上げ、JCETは高稼働×データ連携で追随する。日本側は、少なくとも東芝の事例として、内製×自動化×即時フィードバックでCTを短縮する動きが見える。

実務への落とし込みは、①工程別CT、②並列度×UPH、③再測率の三つを四半期で可視化→レビューすることだ。OSATか内製かという構えより、“自社の詰まりはどこで、なぜ生じているか”を早く診断し、対策のPDCAを回す運用能力が、HBM時代の供給力と収益性を決めるのだ。

*この記事は以下のサイトを参考に執筆しました。
参考リンク

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