OSATが「プロダクト」へ進化する理由とその実態

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半導体の「後工程」は、長らく企業が自社の製品の加工を、外部の業者に委託する契約形態である「加工請負」のイメージが強かった。しかし、ここ1年で大きな変化が起きている。OSAT(アウトソーシング半導体アセンブリ&テストサービス)企業が、単なる組み立て・テストから、設計段階に深く関与し、独自のパッケージングIP(設計資産)や技術プラットフォームを武器に、「サービスからプロダクト」へと進化しつつある。この動きは、チップレットや先端パッケージング(PKG)市場で特に顕著だ。

この記事では、JCETやASEなどグローバルOSAT企業の最新戦略を整理し、日本の後工程企業が目指すべき「価値創造の形」について、定量データや最新事例を交えて解説する。

OSAT市場の拡大とパッケージング技術の進化

1.「単なる組立」から「中核技術」へ

OSAT市場は2024年に約431億米ドル、2032年には791億米ドルに達すると予測され、年平均成長率(CAGR)は7.9%と高い成長を維持している。成長の主因は、AI、自動車、5G、IoTなど、高性能半導体デバイスへの需要増加だ。

従来のOSATは、半導体チップの組み立てやテストが主な役割だったが、現在は「チップレット」や「システム・イン・パッケージ(SiP)」など、複数チップを1パッケージに統合する技術が主流となり、OSATの役割は「高付加価値を生み出す中工程」へと進化している。

2. パッケージングIPとプラットフォーム戦略

パッケージングIPとは、再利用可能な電気的・熱的検証済みレイアウト設計やSiP構成など、設計段階からパッケージングに最適化した設計資産を指す。これにより、設計から製造までのリードタイムが大幅に短縮され、コスト削減と品質向上が実現できる。

例えば、ASEは「VIPack」と呼ばれる垂直統合プラットフォームを展開し、FOCoSブリッジやTSV(スルーシリコンビア)技術を活用した高度な2.5D/3Dパッケージングを実現している。また、JCETは「XDFOI」など独自の多次元ファンアウトヘテロジニアス集積技術を開発し、AIやHPC向けの高性能パッケージングを提供している。

3. DFTで強まるOSATの上流志向

Design-for-Testability(DFT)は、パッケージ設計段階からテスト容易性を考慮する技術だ。これにより、製造後の不良品率低減やデバッグ効率化が実現できる。

OSAT企業がDFTに積極的に取り組むことで、設計段階からテスト戦略を組み込む「上流志向」が強まっている。特に、複雑化するSoCやチップレットのパッケージングでは、DFTの重要性が高まっている。

DFTによる製造プロセス上のメリット

項目従来DFT導入後
テスト容易性低い高い
不良品率高い低い
デバッグ効率低い高い
リードタイム長い短い

4. JCET・ASEが牽引する「プロダクト化戦略」

ここで、これまでみてきた「プロダクト戦略」を牽引していると目されるJCETとASE の現状を解説する。

JCETは2024年上半期、売上高154億9,000万人民元(前年比27.2%増)、純利益6億2,000万人民元(前年比25.0%増)を達成した。特に、先進パッケージ技術へのR&D投資を強化し、AIや車載向けの高性能パッケージングを拡大している。

ASEは「VIPack」プラットフォームを活用し、AIやHPC向けの高度なパッケージング技術を提供。FOCoSブリッジ技術は、AIアプリケーションの高速処理やHPCのデータ伝送を最適化している。

5. 日本の後工程企業に求められる価値創造

日本の後工程企業は、従来の「加工請負」モデルから脱却し、独自のパッケージングIPや技術プラットフォームを開発・提供する“設計主導”モデルへの転換が求められている。RapidusやTSMCジャパン3DIC研究開発センターなど、先端パッケージ技術開発に官民一体で取り組む動きも活発化している。

特に、チップレット技術やSiP構成など、設計段階からパッケージングに最適化した“PKG IP”の開発・活用が、今後の競争力強化のカギとなる。

「プロダクト化」が後工程企業の未来を拓く

OSAT企業が「サービスからプロダクト」へ進化する流れは、半導体業界全体の価値創造モデルを変えつつある。PKG IPやDFTなど、設計段階から付加価値を生み出す技術が、後工程企業の新たな競争力となる。日本の後工程企業も、グローバル競争に勝ち抜くためには、独自の技術プラットフォームや設計資産の開発・活用が不可欠だ。

今後は、IP/設計サイドとの連携をさらに強化し、チップレットや先端PKG市場での存在感を高めることが、日本の後工程企業に求められる「価値創造の形」である。

参考リンク

  1. JEITA・JSIA「国際競争力強化を実現するための半導体戦略 2024年版」
  2. PeeksMedia「半導体後工程企業(OSAT)ランキング」
  3. JCET 2024年第1四半期決算
  4. ASEの最新パッケージング技術
  5. 特許庁「半導体パッケージング技術特許出願動向」
  6. Synopsys「SoCの設計におけるDFTの重要性」
  7. SDKI「OSAT市場分析」
  8. 矢野経済研究所「半導体市場調査」
  9. JCET 2024年第2四半期決算
  10. JEITA「LSIの多様化に対するテストの更なる挑戦」
  11. 経済産業省「半導体・デジタル産業戦略」
  12. https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/10799/
  13. https://semicon.jeita.or.jp/news/docs/20250514_JEITA-JSIA_teigensyo.pdf
  14. https://www.prnewswire.com/jp/news-releases/2024320243jcet319-5-302287860.html
  15. https://newscast.jp/news/8932286
  16. https://developer.ukg.com/general/changelog/september-2024-pro-content-updates-are-now-available
  17. https://riscv.or.jp/2024/11/2024plusonehalf/
  18. https://www.semiconjapan.org/jp/news-press/blogs/semiconjapan2023-perspectives-on-the-future-10
  19. https://www.swtest.org/swtw_library/2024proc/pdf/M03_03_PEREIRE_SWTest-2024.pdf
  20. https://www.businessresearchinsights.com/jp/market-reports/osat-market-118684
  21. https://www.jcetglobal.com/jp
  22. https://www.forinsightsconsultancy.com/ja/reports/outsourced-semiconductor-assembly-and-test-osat-market
  23. https://www.semi.org/system/files/MemberOnly/SEMI%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%91%E3%83%B3_Member%20%E5%B0%82%E7%94%A8%E3%83%AC%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%8814.pdf
  24. https://www.provej.jp/column/st/ase-technology-holding-2/
  25. https://www.jetro.go.jp/biznews/2024/11/afac2973e3d91ecd.html
  26. https://mixpost.app/blog/july-2024-product-update-new-features-improvements
  27. https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/joho/conference/semicon_digital/0012/handeji3rr.pdf
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