Arterisプロダクトマネジメント兼マーケティング・ディレクター
Rick Bye氏インタビューより
米国の半導体専門メディアである SemiWiki のセミコンダクター・インサイダーズ・ポッドキャスト・シリーズでは、業界の各分野のプロフェッショナルを対象にした同メディアの創設者である Daniel Lenny 氏によるインタビューを掲載している。
今回は、米国のインターコネクト IP 開発企業 Arteris(アルテリス)のプロダクトマネジメント兼マーケティング・ディレクターである Rick Bye 氏をゲストに、Arteris が開発した NoC 生成機能を IP 自体に組み込んだ FlexGen SOCIP について聞いている。この記事ではこのインタビューの要旨をお伝えする。
Rick Bye 氏は、現在 Arteris でプロダクトマネジメント兼マーケティング・ディレクターを務めている。英国生まれの Rick Bye 氏は、子供のころに急速に小型化し使いやすくなる家電やコンピュータ関連機器に魅了され、その核となる半導体に興味を持ったという。そして英国の大学では半導体設計(エンジニア)に携わり、米国 Texas Instruments(テキサス・インスツルメンツ)に入社しキャリアをスタートした。その後まもなく設計という技術的な側面よりビジネスや商業面、つまりマーケティング面に興味を持つようになり、エンジニアからプロダクトマネジメント兼マーケティング・ディレクターに転身した。
2022 年に英国の Arm Holdings plc(ARM)に転職し、そこでフラッグシップ・モバイルフォン SOC の開発者と協力し高クラスのスマートフォンを手がけた。そして Arteris から声がかかり現在に至る。
最大のメリットは NoC 実装速度の高速化
Rick Bye 氏はこのインタビューで Arteris が開発した NoC 生成機能を IP 自体に組み込んだ「FlexGen SOCIP」について、「最大のメリットは NoC 実装速度の高速化」と語り、「業界を革新する製品」と自信を持つ。その理由として、業界で高評価されている「FlexNoC 5 IP」をベースにしており、さらに RTL 出力を最適化し、手動によるトポロジー調整の必要性を 90% 以上削減するスマート・オートメーションシステムを採用していることを挙げている。また、機械学習ベースの AI を活用できることもポイントの一つだという。AI を活用することで、手動時にかかるセットアップ時間が削減でき、さらに非コヒーレント NoC IP トポロジーを数分または数時間で自動化することができるのだ。手動の実装においては数日または数週間かかっていたが、FlexGen では数分または数時間で完了できるというわけである。
手動実装と比較して 10 倍の生産性向上も
NoC の実装法にはいくつかの種類がある。しかし、これまではそれぞれの方法を試すのに時間がかかるため、一つの実装法に目安を付け、その方法で実装作業を行うしかなかった。ところが、これまで説明したように FlexGen SOCIP は実装速度が高速なため、その分 10 種類もの方法を試す時間を確保することができるのだ。
ここで、この自動化による高速化について Daniel Lenny 氏から自動生成されたスマート NoC 実装について、これまでのほぼ手動による NoC 設計と比べ電力性能と面積、品質面で及ばなくなる危険性について聞かれた。それに対し Rick Bye 氏は、むしろ逆で、専門の FlexNoC エンジニアが実施した SOC 設計の手動実装と比較して 10 倍の生産性向上、全ワイヤ長の最大 30% の削減を確認している。また、レイテンシーは 10% 以上短縮されているとしている。
多数の NoC 実装の場合の生産性向上にもメリットが
さらに、Rick Bye 氏は実装の高速化だけではなく SOC 設計のほぼ全部においてメリットがあると述べている。まず、多数の NoC 実装の場合の生産性向上と PPA について多大なメリットがあるという。また、IoT や産業用制御などのアプリケーション向けの SOC 設計が、専門の技術者でなくても可能になる。さらに、SOC 設計におけるリスクを軽減し、市場投入までの時間を短縮することができる。これにより、ユーザーであるスマートフォンや自動車メーカーなどの OEM 先がそれぞれ独自の SOC 設計が可能になり、設計方法の幅が広がるとしている。
AI が AI を設計する!?
これまでの Rick Bye 氏のメリットの説明について、聞き手の Daniel Lenny 氏は「つまり、FlexGen は AI を使用して AI チップを設計しているということ」とまとめると、Rick Bye 氏はそれを肯定し、このことで「ユーザーが SOC を設計しやすくするだけでなく、AI アプリケーションの普及をさらに促進する」と述べている。そして、このようなテクノロジーの進化は今後も発展していくと語る。
最後に Arteris の今後の方針として、同社の SOC 設計向けチップエンジニアチームがユーザーや半導体エコシステム向けの新しい機能やそれらをサポートする技術を追求していくとしている。