これが中国半導体政策基金の流れ!──国家VC指導基金×メガバンク系テック・ファンドの資金ルートを可視化

SEMICON.TODAY
この記事を読むのにかかる時間: 4

2025年、中国の半導体産業政策は「国家集成電路産業投資基金(大基金)」の第3期を控え、新たな資金供給の枠組みが立ち上がった。2025年3月6日、国家発展改革委員会(NDRC)が「国家ベンチャーキャピタル指導基金(国家VC指導基金)」の設立方針を明らかにし、約1兆人民元の社会資本を動員してハードテックへ長期資金を供給する方針を示した。

続く3月12日、中国工商銀行(ICBC)が80億元(約110億USD)の技術革新ファンドを、3月14日には中国銀行(BOC)が50億元(約69億USD)のテクノロジー発展ファンドを設立した。

本稿は、資金の通り道(国家→地方→企業)をわかりやすく提示し、資金が装置・材料の現場KPI(受注、資格取得、出荷)にどう使われるかを検証する。

国家VC指導基金の設計思想──“大基金”の延長線か、別路線か

国家VC指導基金は2025年3月6日に公表された。狙いは、公的資本と民間資本を組み合わせた公民連携により、リスク許容度と投資期間の“上限”を引き上げることだ。従来の基金は、前工程の製造能力(とくにファウンドリ)の短中期の増強に比重があり、成果も分かりやすかった。

一方で、装置・材料は研究開発(R&D)から顧客認定(qualification)まで10年規模の時間軸を要するため、短期収益志向の資金が入りにくかった。新基金はこの「時間の壁」を埋める設計である。対象は半導体、再エネ、AIなどの「ハードテック」が中心で、シード〜成長の各段階を市場型スキームで支える。

大基金が「短中期の能力押上」に偏りがちだったのに対し、国家VC指導基金は「長期回収領域の資金空白を埋める」ことで、装置・材料を含むボトルネックの解消を狙う別路線の色彩が濃い。これにより、EUVレジストやCMPスラリ、300mm対応エッチング装置、精密温調など回収が長くリスクの高い領域にも資金が届きやすくなる。

銀行系テックファンド──ICBCとBOCの役割分担

国家VC指導基金の発表直後、銀行系大型ファンドが並走を始めた。資金執行のスピードとパンチ力で政策の推進力を補完する位置づけである。

ICBC(中国工商銀行)は2025年3月12日、80億元(約110億USD)の技術革新ファンドを立ち上げた。重点は「ハードテック」で、インターネットのようなソフト領域よりも半導体・先端製造を重視する。資本性の投資手段で「患者資本(patient capital)」を掲げ、短期利益より長期育成を志向する。これにより、装置のプロトタイプ開発や材料のパイロットライン整備といった初期段階の資金需要を拾える。

一方、BOC(中国銀行)は2025年3月14日、50億元(約69億USD)のテクノロジー発展ファンドを設立した。国家の優先分野を対象とし、新興産業を広くカバーする。

銀行は融資業務で蓄積した産業与信の目利きと回収プロセスを持つ。結果として、国家VC指導基金が提供する「長期枠組み」と、銀行ファンドの「短中期の推進力」が相補関係を成す。中央銀行・監督当局が「民営企業支援」と資金供給拡大を打ち出した政策トーンも、銀行ファンドの後押しになっている。

資金の通り道と実装──“長期安定資本”が現場KPIに変わる条件

資金はファンド内に滞留しては意味がない。受注(order)→資格取得(qualification)→出荷(shipment)という現場KPIに転化して初めて供給力となる。

1. 前払型注文(Prepayment)/設備補助:地方サブファンドが装置メーカーに前払条件付きで注文を出す、あるいは設備導入補助を交付する。これにより、受注残の安定とライン立ち上げの前倒しが可能になる。

2. 長期評価費の継続支援:材料は耐久テストや顧客認定に時間を要する。評価費の継続拠出が切れ目なく続くことで、開発→顧客評価→量産の“谷”をまたぎやすい。

3. 多段階分配の精度:国家→地方→企業の多段分配で、ボトルネック領域(EUVレジスト、CMP、精密温調など)へ直接資金が届くこと。

従来の大基金は設計・製造企業への偏在が指摘されたが、今回の枠組みは装置・材料への波及を意図している点が決定的に違う。途中で資金が途切れにくい“長期安定資本”であるほど、評価〜量産移行を押し上げる確率が高い。

資金の多寡よりも“重なる位置とタイミング”──資金レバレッジと立ち上がりの手触り

資金の実効性は、地域別の設備投資計画と突き合わせると見えてくる。2025年前半は、各地でロジック、メモリ、化合物半導体の能力増強や新設が公表され、地方サブファンドが案件の呼び水として機能している。国家VC指導基金と銀行ファンドが初期のリスクマネーを供給し、民間・地方資本をレバレッジする構図である。

重要なのは、資金の多寡よりも“重なる位置とタイミング”である。どの地域の、どの工程に、どの段階で資金が入るかによって、装置の受注ピークや材料の評価開始時期が決まる。したがって、装置・材料メーカーは地方案件の公告スケジュールと銀行ファンドの投資実行時期を時系列で突合し、リソースを設計すべきだ。

資金ルートが、装置・材料の現場KPIへ直結

2025年の中国は、「大基金」から「国家VC指導基金+銀行系ファンド」へと資金設計を進化させた。この場合の焦点は金額だけではない。資金の通り道が、装置・材料の現場KPIへ直結する構造が整いつつあることだ。

供給力は、資金投入その瞬間ではなく、受注・資格取得・出荷という実装プロセスを通じて初めて現実となる。装置・材料メーカーにとって、資金ルートの可視化は需要シグナルを最速で捉える作業なのである。

今後の評価次第で、投資総額や新設件数といった表層指標に加え、国家VC指導基金とICBC・BOCファンドの投資実行タイミング、地方サブファンドの公告と補助交付、前払付与の有無といった具体論を時系列で地図化する視点が不可欠になってくる。「資本性×前払×長期評価費」の三点が揃う地域・工程から、実需の立ち上がりが見えてくるだろう。

*この記事は以下のサイトを参考に執筆しました。
参考リンク

TOP
CLOSE
 
SEARCH