品質・信頼性エンジニアの“設計イン”時代に必要な武器とは? ──異業種のスキルをそのまま生かせる

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AIや電動化でプロダクトは複雑化し、小さな不具合が大規模リコールやブランド毀損に直結するようになった。直近の海外事例からみても、ソフトもハードも含めた“最初の設計”で信頼性を作り込む重要性が目立つようになった。

そこで脚光を浴びているのが品質・信頼性エンジニア。難しく、ハードルが高い専門職に思えるが、実は製造業の品質管理、ソフトQA、データ分析、PMといった“スキル”がそのまま通用するのだ。本稿は、①製品の使われ方を数字にする設計、②学ぶテストと量産の見張り台、③信頼性と安全の証明をデータで行う、の3本柱で要点を深掘りし、最後に④スキル変換×面接成果物という実践ガイドを示す。

製品の「使われ方」を数字にする

品質・信頼性エンジニアとは、製品の使われ方を数字で表し、設計の余裕(マージン)を見える化するだけの仕事である。それは1点ではなく、どの条件が、どれくらいの頻度で起きるかをベースに合意形成するのが必須である。

アウトプットの具体例
• 使用環境マップ:温度、振動、湿度、電源の揺れ、ソフト更新頻度などを分布で可視化。
• マージン台帳:熱・電源・機械ごとに、安全側の余裕と根拠(簡易モデル/実測/過去不具合)を1枚で管理。
• 自己診断・フェールセーフの“要求化”:後付けではなく最初から仕様化しておく。

他職種スキルの活かしどころ
• 製造業品質・FMEA経験→ 故障の起点洗い出しと優先度付けがそのまま転用可。
• ソフトQA・要件定義→ 曖昧な要望を数値に落とす習慣が強み。
• データ分析→ 分布とばらつきの“見せ方”で合意形成を促進。

つまずきポイント&回避策
• 係数を重ねるだけの“盛りマージン”はコスト悪化を招きがち。モデルと実測の相関を必ず取る。
• 熱だけで閉じず、電源のふらつき/ノイズ/機械応力の横断確認を忘れない(壊れ方は複合要因が多い)。

「学ぶテスト」と「量産の見張り台」

具体的には高加速寿命試験(HALT)と高加速ストレススクリーニング(HASS)をメインに行う。

• HALT:開発中に“わざと厳しく”温度や振動をかけ、どこが壊れやすいかを学ぶテスト。合否ではなく学習目的。
• HASS:量産で短時間のスクリーニングを行い、潜む初期不良の芽を摘む仕組み。

現場で役立つ運用
• HALT報告の型:①条件 ②限界(どこで症状が出たか)③原因→対策 ④再試験での効果 ⑤設計標準へ反映。
• HASS条件の最適化:“過激すぎ=良品も落とす/ぬるすぎ=欠陥を通す”の綱引きを、量産歩留まり・現場不良率との相関で調整。
• 変更管理(PCN/ECN):材料・工程が変わるたびに再試験の要否ルールを明文化。

他職種スキルの活かしどころ
• ソフトQA・自動テスト→ 再現手順の自動化、“失敗から学ぶ”レポートの筋書きづくり。
• 製造業品質(抜取検査・工程能力)→ HASSの過不足判定、工程との行き来に強い。
• PM→ 試験計画×BOM×スケジュールの三点管理、変更時の影響把握。

つまずきポイント&回避策
• テストを“通す”ことが目的化しがち。「学習→設計反映→再現」のループが回っているかをKPI化。
• 複合ストレスで短時間に脆弱部位を出せる。単独試験だけに頼らない。

信頼性と安全の証明をデータで行う

• Weibull(ワイブル):故障が初期の立ち上がり/偶発/摩耗のどこにいるかを判別する“地図”。
• FIT:10億時間あたりの故障数。保証費や契約(SLA)に直結する“経営言語”。
• FMEDA:どんな壊れ方でも、どれだけ見つけられるかを定量で示す“安全の証明書”。

現場で役立つ運用
• 試験条件から実使用への換算は“やりすぎないモデル選び”が肝。
• 右打ち切りデータも取り込み、ローリング更新で“最新の壊れやすさ”を見える化。
• ダッシュボードは技術+経営をつなぐ。
• FMEDAは部品→サブシステム→システムの積み上げ。

他職種スキルの活かしどころ
• データ分析/BI→ 可視化と“意思決定につながる示し方”。
• 監査・薬機・認証対応→ 証跡作成と改訂履歴の管理。
• SRE/運用→ OTAや緩和運転の運用目線が強み。

つまずきポイント&回避策
• 統計の“当てはめ”に寄りすぎると物理的な壊れ方の理解を外しやすい。
• 資料は“何を決められるか”で作る。数字の列挙ではなく、対策案とコスト影響を一枚で。

“異業種経験を即戦力化する”実践ガイド

ねらい
他産業・他職種の強みを“設計イン時代の品質・信頼性”に接続し、採用面接で刺さる証拠まで落とし込む。

スキル変換マップ(自身の経験 → 現場での役割)

• 製造業の品質・工程:使用環境の分布づくり、HASS条件の過不足判定、変更管理の再試験要否。
• ソフトQA/自動テスト:HALT/HASSの再現性ある手順化、診断ソフトやチェックリストの標準化。
• データ分析/BI:RMA・試験・工程のデータ統合と可視化、Weibull/FITの意思決定資料化。
• PM/調達:試験計画×BOM×スケジュールの三点管理、ベンダ連携の共通KPI設計。
• 安全・品質監査:FMEDAの証跡化、設計変更時の影響評価。

面接で評価される“3点セット”

  1. 使用環境の可視化シート:分布で提示し、設計余裕を決めた実例を添える。
  2. 学習するテスト報告書:限界→原因→対策→再試験の改善度を1枚で。
  3. “経営が読める”信頼性ダッシュボード:WeibullとFITを保証費・回収コスト・SLAに結び付けて示す。

“使われ方を数字で語り、テストから学び、証拠で説得する”

品質・信頼性エンジニアは、製品製造の最後ではなく最初から関わる仕事である。だからこそ、要件定義・テスト設計・データ解釈・文書化・変更管理といった汎用スキルがそのまま武器になるのだ。

迷ったら、今日の業務で①使用環境の分布、②学習するテスト報告、③経営が読めるダッシュボードの3点を試作してみよう。“使われ方を数字で語り、テストから学び、証拠で説得する”——この姿勢が、面接でも、現場の設計審査でも通用する。

参考リンク

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