“低空飛行”が続くアナログ半導体市場──Texas Instrumentsの在庫調整の出口戦略

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生成AIドリブン(意思決定から実行、改善までを一貫して自動化するアプローチ)で先端ロジック/メモリが復調する一方、産業機器や車載を主戦場とするアナログ半導体は、なお“低空飛行”が続いている。2025年7月に発表されたTexas Instruments(TI)の決算は、4–6月期売上44.5億ドル・EPS1.41ドルと実績は改善しつつ、7–9月期ガイダンスは売上44.5〜48.0億ドル/EPS1.36〜1.60と慎重だ。経営陣は関税動向による前倒し発注(プルイン)の影響可能性にも触れ、投資家心理は一段と用心深くなっている。

では、アナログの回復が遅行する構造は何か、在庫調整の出口はどこにあるのか。本稿では、TIの示す“長期戦の勝ち方”を手がかりに、製販体制の見直しポイントを整理する。

“数字は戻るが見通しは慎重”という移行期に

TIの最新四半期は、アナログ/組み込みの底堅さで増収・増益。ただし、次四半期見通しは“勢いの持続”に留保を付けた。背景には、

  • 産業・車載で続く在庫の偏在(用途・地域・チャネルで進捗差が大きい)
  • 関税・地政学を意識した前倒し発注が混ざる可能性
  • 価格・条件交渉がランレート需要とスポット需要で混線しやすい

といった移行期特有のゆがみがある。実績は改善、だが“質”を見極めないと躓く――これが現在地なのだ。

各社の直近1年の開示:相場の“戻り”は銘柄・ポートフォリオ構成によって時間差が生じる

アナログ各社の直近1年の開示からは、底入れ感と慎重論が共存する絵柄が見えてくる。

  • NXPは2025年Q2売上29.3億ドル(前年比-6.4%)。自動車は横ばい、産業・IoTや通信インフラが重荷という構図で、在庫正常化はなお途上と読み取れる。
  • Analog Devices(ADI)は2025年8月、産業セグメントの強さを背景にガイダンスを強気化。足元の受注・バックログの改善を示した。一方で5月時点の開示では、関税情勢を見越した短期プルインの影響に言及しており、実需へのブリッジが必要。
  • Microchipは2025年5月に「この長いダウンサイクルの底を打った」との見解を示しつつ、顧客・流通在庫の削減継続を強調。“底打ち≠即反騰”が示唆される。

結論として、産業・車載の在庫是正は非同期で、相場の“戻り”は銘柄・ポートフォリオ構成によって時間差が生じる、というのが実務的な前提である。

TIの出口戦略:「コスト曲線の底」を下げる投資×運転

TIは米国内7工場に総額600億ドル超の投資計画を掲げ、300mmアナログ量産の内製比率を一段と引き上げる。循環の谷でも投資を止めない狙いは明確で、

  • 300mm化×歩留まり学習で製造原価の絶対値を下げる
  • 国内製造×複数拠点で供給確実性とリードタイムを改善
  • エネルギー・人件費・関税など外部変動を“吸収できる体幹”を鍛える

という次サイクルの取り分を最大化する布石。シャーマン(テキサス州)の300mm群(SM1–SM4構想)は、その象徴と言える。投資は短期の利益率を圧迫するが、在庫調整明けに価格・数量・シェアの“三つ巴”で取り返す設計である。

在庫の“量”ではなく“質”を制御できる組織に

アナログは遅行セグメントだが、底打ちの芽は確実に伸びている。対応するポイントは、①実需とプルインを見分ける運転、②300mm化と国内製造でコスト曲線の底を下げる、③用途別のP/L感覚で製販を一体化すること。

TIの示す投資と運転のロジックは、在庫調整明けの価格・数量・シェアを同時に取り戻す“勝ち筋”になり得る。在庫の“量”ではなく“質”を制御できる組織こそ、次のサイクルで最初に加速する――ここが、今の意思決定の分かれ目なのだ。

*この記事は以下のサイトを参考に執筆しました。

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