TSMCの熊本進出を合図に、九州は日本の半導体拠点としてひときわ重要なポジションを占めるようになった。とはいえ、発表資料やオンライン報道だけでは、官(国・県)と金融、企業、そして研究がどういった距離感でつながり直され、それぞれの本音や本当のつながりなどが見えづらい。そんな中、マリンメッセ福岡のA・B両館にまたがる「第2回[九州]半導体産業展」に一歩踏み込むと、その“見えにくさ”に光が当たり、視界が開けてくるのがわかるだろう。
今年は出展約400社、来場1万人規模の見込みへと拡大し、セッションは全25本。甘利明氏(自民党 半導体議連 名誉会長)を皮切りに、経済産業省、熊本県、Q-BASS(九州・沖縄地銀連携)、SIIQ、そしてDENSO、三菱電機、ルネサスエレクトロニクス、Amkor、Micron、ITRIなど、九州の“今”を作る顔ぶれが同じ建屋に集うのだ。
また、同時開催の「[九州]次世代物流展」もあり、製造とロジスティクスの間に潜む課題まで見えてくるだろう。昨年(第1回)に比べ、今年はさらにスケールアップし、出展数やセッション数も多くなる。このため、各分野それぞれが力を入れているポイントや課題などが一気通貫した流れとしてとらえやすくなるはず。
本稿は、この「第2回[九州]半導体産業展」で行われるセミナーに焦点を当て考察した。それらをより深く理解するためのガイドとして参考にしていただければ幸いである。
経済産業省の政策・制度と熊本県の地域戦略を、わかりやすく理解するには

10月8日10:30に「半導体政策にみる日本経済復活の道筋」から始まる特別セッション群は、経済産業省の政策・制度と、熊本県の地域戦略を同じ観点からで捉える機会になるだろう。政府の方針は法令やガイドラインをもとに語られる。しかし、これをそのまま現場での判断(今回は熊本県の地域戦略)に生かすには、無理がある。この二つをつなぐのが、同日13:30~15:00のQ-BASS(九州・沖縄地銀連携)による「半導体を味方に ― 半導体ユーザ企業の価値創造」である。この二つのセミナーを参考にすれば、地域の信用・投資・補助の組み合わせを、事業のライフサイクルに沿ってどう設計するかが具体化することができる。
さらに、同日14:30~15:30のSIIQ(九州半導体・デジタルイノベーション協議会)による「新生シリコンアイランド九州を実現するSIIQの役割」も逃せない。人材・設備・研究・サプライヤを“点”でなく“線と面”で動かすコンソーシアムが、自治体や地銀と同じ壇上に立つことで、制度を実現場に生かしやすく解説してくれるだろう。
量産・後工程・パッケージングと製造DXの現時点の姿

10月8日10:30~11:30のDENSOによる「自動車産業における半導体動向」は、車載の信頼性とコスト、サプライチェーン再設計という三つを一直線にした現在地を示す起点になるだろう。
また、九州には三菱電機のパワー半導体、ルネサスエレクトロニクスの後工程といった“核”があり、その周辺をAmkorのOSAT、Micron Technologyのメモリが囲んでいる。このため、10月9日12:15~13:15のルネサスエレクトロニクスによる「IDMの強みを活かしたルネサス後工程工場の2030アスピレーション」や同日13:10~14:10のアムコー・テクノロジー・ジャパンによる「Amkorの活動と九州への貢献」は、量産・後工程・パッケージングの九州での現時点の姿を見せてくれるはずだ。
次に製造であるが、10月8日15:45~16:45の東芝/東芝デジタルソリューションによる「東芝のスマートファクトリー(ものづくりDX)と半導体への取り組み」は、MESや画像解析AIを使った不良削減・稼働向上・人員最適化の“手順”を、具体的に解説する。
人材戦略と研究の最前線

人材不足についてのセミナーも重要だ。10月8日11:00~12:00の九州大学と九州経済産業局の共同セッション「グローバルな半導体人材育成例のご紹介/九州半導体人材育成等コンソーシアムについて」や、同日14:15~15:15の九州大学と熊本高専による「グローバル競争を勝ち抜く!半導体産業の未来を支える“人”と“知”の連携戦略/高専における半導体人材育成の取り組み」は、採用・教育・配置転換・リスキリングを現実的にどう行うかのヒントに満ちている。学生インターンから社会人再教育までの“層の厚み”は、そのまま研究開発力と量産立ち上げ力の将来値に直結するのだ。
そして、研究の最前線については、10月9日14:00~16:30の産業技術総合研究所九州センターの「産総研セミナー 九州センター研究講演会」がある。ここでは、beyond 2nmの先端ロジック、先進パワーエレクトロニクス、3D集積・先端パッケージングといった成果と課題を語る。これと10月8日12:00~13:00のITRI技術研究院による「台湾半導体産業の発展及び九州との連携展望について」を重ねると、国際連携まで見据えた共創の現状が見えてくる。
川上から川下まで一気通貫して観覧

今年はA・B両館での開催に拡大されている。このため、設計ツールやIPから前工程の装置群、材料・部材、検査・計測、クリーン設備、さらに人材サービスまで、川上から川下まで一気通貫して観覧することができる。
昨年のB館単独からの拡大は、九州拠点のプレイヤーと国内外の企業の連携が増えている証左でもある。約400社が一堂に並び、1万人規模の往来が見込まれる会場では、あらかじめ予定された商談だけではなく、突発的な商談や連携も起こりうる。
また、同時開催の「[九州]次世代物流展」が隣接することで、装置・材料の搬入/保管/輸送/検査といった“製造の外縁”が同じ視界に入ることになる。シリコンのプロセスだけでは解けないボトルネック――たとえば、薬液・ガスのサプライや梱包破損率、リードタイムの揺らぎ――が、製造×物流の動線を歩くうちに具体の問題として立ち上がってくるはずだ。
*この記事は以下のサイトを参考に執筆しました。
参考リンク
- 会場案内図公開:第2回[九州]半導体産業展(A・B両館/出展400社予定・来場1万人見込み・全25セッション)— 株式会社イノベント プレスリリース(2025年9月3日)
- セミナー一覧(特別セミナー:経済産業省/熊本県/Q-BASS/SIIQ/DENSO/三菱電機/ルネサス/Amkor/Micron/ITRI ほか)— 公式登録サイト(イベントス内)
- 産総研九州センター 研究講演会(第2回会期内、beyond 2nm・先進パワエレ・3D集積など)— 産業技術総合研究所(2025年9月2日掲載)
- 第1回[九州]半導体産業展 開催結果(来場7,314名/出展261社)— 株式会社イノベント プレスリリース(2024年10月4日)
- Q-BASS(九州・沖縄地銀連携) 概要資料— 九州経済産業局(2024年10月)