生成AIや自動運転など、高性能半導体への需要が急拡大している。この需要拡大に応えるために、2.5D/3Dパッケージが主流化しており、チップの高密度実装が進行している。しかし、その高密度実装により構造が高集積しているため、チップ製造においてこれまでよりも高熱化するため、従来技術だけでは冷却が追いつかないという状況を招いている。
そこで、この冷却問題の解決策として注目を集めているのが、IMAPS 2025(San Diego開催)で紹介された「冷却戦略の新潮流」と言える、半導体チップと基板の間で熱を効率的に伝達するために用いられる、液体冷却に対応したインターポーザ(中間基板)である「液冷インターポーザ」だ。本稿ではこの「液冷インターポーザ」はじめ新しい冷却技術が、生成AI時代のパッケージ冷却にどのような変革をもたらすか、考察する。
高熱化の解決技術として期待される「液冷インターポーザ」
IMAPS 2025で実施された熱管理(サーマルマネジメント)についての新技術発表会では、AI・HPC向けパッケージの熱流の合計が従来比で30〜50%増加する可能性も提示された。これが、基板内外での熱流体解析とモジュール設計の一体化における大きな課題と言える。
このような課題の解決策として登場したのが「液冷インターポーザ」である。これは、基板そのものに流路を掘り、冷却液をその流路に直接循環させる構造となっている。この構造によってチップ直下の熱を即座に冷却する方式で、高熱化を抑える技術として期待される。前述したIMAPS 2025の技術発表会では、この液冷インターポーザがAI・HPC分野のパッケージの課題に対する解決策として注目を集めた。

1.熱伝導材料も進化
一方、熱伝導材料(TIM)も進化している。米Arieca社がIMAPS DPC 2025で紹介した「LMEE(Liquid Metal Embedded Elastomer)」は、液体金属を弾力ある高分子材料中に分散させた構造で、低熱抵抗と高信頼性を両立している。この材料は、日本のROHMとの協業により、SiCパワーモジュールへの適用が進むなど、実用化が始まっている。
さらに3Dパッケージの表面の放熱を強化する材料として、LMEE以外にも、発熱体と放熱体の間に挟むことで隙間を埋め、熱伝導率を高める「相変化TIM」など複合材料への注目が高まっている。特にそれぞれの熱の温度に応じて特性が変化する材料は、冷却負荷の変動に柔軟に対応できるため、期待されている。
2.望まれる冷却技術、材料、ソリューションのセット戦略
以下にチップ冷却の技術を表にまとめた。
| 項目 | 最新技術 | 対応方法 |
|---|---|---|
| 微細流路加工技術 | 高精度ドリル/エッチング | 適切な寸法の流路を作成 |
| 冷却液 | フルオロケミカル/絶縁液 | 漏洩や材料への悪影響を防ぐ |
| 解析技術 | 熱流体CFD+熱電構造解析 | 複数の場の相互作用を考慮した解析 |
| 材料(TIM) | LMEE/相変化TIMなど | 接合安定性や長期信頼性の確保 |
また、これら以外にもIMAPS Thermal 2025で、コールドプレート(発熱部品を冷却するための部品)や二相冷却システム、効率的な冷却が可能であるジェットインピンジメント技術など、新たな複合冷却ソリューションが多数登場している。
今後は、これら様々な冷却技術や材料、そしてソリューションをうまく複合しながら、活用していくことが大切だと思われる。
生成AI時代のパッケージ冷却で日本は優位に立てるか

生成AI時代のパッケージ冷却は、もはや単なる付帯技術ではなくメイン技術へと昇華することは間違いないだろう。日本はこの変化において、以下の分野で優位に立てる強みを有していると思われる。
• 精密材料:信越化学工業、富士フイルムらの高性能TIM素材
• 解析力:JSOLや構造計画研究所による熱流体CAE技術
• 実装加工力:京セラなど精密基板加工企業の実績
今後、液冷インターポーザやLMEEなど革新技術の本格的導入が始まった時こそ、日本が世界をリードする絶好のチャンスなのだ。
参考リンク(出典一覧)
(参考:IMAPS 2025「Thermal management」セッション概要)
(参考:Arieca:IMAPS DPC 2025へのLMEE講演予定)
(参考:AriecaとROHMによるLMEE搭載SiCパワーモジュールの共同開発)
(参考:IMAPS DPC 2025(Device Packaging Conference)概要)
(参考:IMAPS Thermal 2025:複数冷却技術セッションによる新潮流)