200mmウェハラインの再稼働ラッシュ──レガシーロジック製造の舞台裏

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生成AIが脚光を浴びる一方で、実世界のモーター・電源・通信を支えるのは28〜90nm級の“レガシー”ロジックやアナログ群だ。直近1年を振り返ると、200mm(8インチ)工場をめぐる動きが相次いだ。

まず2024年11月13日、タワーセミコンダクター(TSEM)が200mm能力の資格取得と量産立ち上げを含む投資計画を公表。続いて2025年2月26日には、独インフィニオンが、米国テキサス州オースティンの200mm工場をスカイウォーターへ譲渡することで合意し、同年7月2日に取引が完了した。
さらに2025年4月23日の台湾UMCの1Q決算では、22/28nmが売上比37%、22nmは前期比46%増と開示され、レガシーノード需要の厚みが示された。

これらの出来事は、車載・産業・通信で「必要十分の性能を、時間通りに、長く」届けるために、既存ラインの再稼働と中古装置の再流通を軸に生産能力を確保する潮流が強まっていることを物語る。

本稿では、このようにあいつぐ200mmウェハラインの再稼働に伴う“レガシー”ロジックやアナログ群の製造の舞台裏を探る。

なぜ今、200mmなのか――“過不足ない”性能を時間通りに

200mmウエハ(直径200mmのシリコン基板)は、先端300mmに比べ一世代古い。
しかし車載ボディ制御、産業インバータ、基地局やWi-Fi周辺ICなどで評価軸は、「反応速度より信頼性・供給安定性」となっている。
結果として、28〜90nm級のロジック/アナログ混載の「性能は過不足なく、高信頼性、安定供給」が好まれることになる。

2025年4月23日のUMCの1Q決算は、この構図を決定づけたと言ってよいだろう。22/28nmは売上の37%を占め、22nmは前期比46%増となった。具体的にはOLED用DDI、画像処理、デジタルTV、Wi-Fi、オーディオCodecが伸びた。
さらに、同社はシンガポールでの新能力を披露し、22nmの将来拡張を示した。稼働率は1Qで69%とまだ拡張の余地を残すが、2Qガイダンスでは「ミッド70%」と改善見通しを出した。成熟市場ほど、設計移行の手間と品質保証のハードルが高く、既存ノードの継続採用に合理性がある。

ここで重要なのは「必要性能の最適点」が需要の中心にあることだ。E/Eアーキテクチャ刷新やセンサ追加で制御点が増えるほど、ユニットあたりの半導体の点数は微増する。にもかかわらず単価を急上げできない領域では、歩留まりが高く、価格が安定しているレガシーノードを使うのが最短路なのである。

“再稼働”はM&Aとライン再編から始まる

2024年11月13日、タワーセミコンダクターは約3.5億USDの投資計画の中で、米国サンアントニオとイスラエル・ミグダルハエメクの200mm能力を資格取得→ランプする方針を発表した。
2025年2月26日には、インフィニオンがオースティンの200mm工場譲渡でスカイウォーターと合意し、2025年7月2日に取引完了。

これにより、130/90/65nm級のロジックやアナログの量産プラットフォームを、設備・人材・品質システムごと継承する形で米国内の受託生産能力が拡張された。2025年8月12日にはTSMCが6インチ生産の段階的フェーズアウトと8インチの統合再編を公表している。

この1年の連鎖は、残す・増やす・中止する、の仕分けを通じて、成熟ノードの供給網を時間価値(立ち上げの速さ/停止確率の低さ)で再最適化する動きだ。既存工場の再活用は、立地・人材・品質記録(PPAPや顧客監査)を一体継承でき、立ち上げリスクを下げることができる。

中古・再生装置の“再流通”が増産のボトルネックを解く

200mm向けの新装置は選択肢が限られ、主要サプライヤは300mmを中心にポートフォリオを組む。200mmの増産は中古・再生装置の再流通と、既存ラインの再構成が定石になる。ボトルネックは(1)装置確保、(2)レシピ移管、(3)顧客資格取得の速度だ。

2024年11月13日にタワーセミコンダクター(TSEM)が示した200mm能力の資格取得と量産立ち上げを含む投資計画は、既設資産を活かし短期で供給能力化する代表例である。装置を移設した場合は、OOC/OOS監視、プロセスウィンドウの再最適化、信頼性試験(温度・湿度・電気ストレス)を効果的に行う必要がある。2025年7月2日のスカイウォーターによるオースティン200mm取得完了は、M&Aで設備・人材・品質システムをパッケージ継承し、Qualification(評価プロセス)短縮で初期ロット立ち上げを加速するモデルとなっている。

さらに2025年2月12日の市場報道では、中国の装置購入が前年比6%減の見通しとしている。成熟ノードのキャパ拡張が続く一方で装置需給は地域差が出やすく、“欲しい装置が欲しい時に手に入るか”が各社の立ち上げ速度差を生む。

価格と供給の綱引き──成熟ノードの“地政×需給”

成熟ノードは価格決定力が相対的に弱く、装置投資の動向や為替の影響を受けやすい。
2025年3月26日の統計では、中国が2025年も装置投資額で首位を維持する見通しだが、前年比24%減の380億ドル(USD 38,000,000,000)とされる。供給側はTSMCの6インチ撤退・8インチ再編(2025年8月12日)に象徴される選択と集中でコスト構造を引き締め、需要側は長期供給契約(LTSAs)で数量の平準化と価格安定を図る。

用途別には温度差がある。UMCの内訳が示すように、ディスプレイドライバ、通信周辺、デジタルTVなど22/28nmへの“移行案件”が波を作り、車載ボディ系や電源監視など40〜90nmの“維持案件”が底を支える。工場運用では、フォトマスク世代やデバイススペックごとに資格取得の並列度をどこまで上げられるかがKPIになる。

再稼働を“継続供給”へ変換できる組織が勝つ

この1年で起きた出来事はいずれも、レガシーロジックを止めずに供給するための布石だ。
LTSAs(長期保守契約)で発注の“谷”を減らし、中古・再生装置の再流通により、初期歩留まりを上げ立ち上げ時間を短縮する。クリティカルスペア(重大な予備部品)の先回り確保と予備チャンバー化で停止確率を下げ、監査・変更管理の記録を一体で継承する。

AIが牽引する最先端テクノロジーの陰で、実は成熟技術であるレガシー半導体が世界を動かすのだ。
だからこそレガシーノードでは、「使い切る運用設計」と「残す・増やす・中止する」の仕分けが競争力を左右する。

次の1年は、再稼働を“継続供給”へ変換できる組織が勝つ。

*この記事は以下のサイトを参考に執筆しました。
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