新しい産業地図の描き直しは九州から!――「第2回[九州]半導体産業展」から読み解く最新状況

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このところの九州の半導体の盛り上がりは、もはや「復権」とは言えない。量産の現場と人材の供給源が同じ圏内に立ち上がるという、新しい産業地図の描き直しが始まっているのだ。象徴的なのが、2024年12月27日にJASM(TSMCの日本子会社)第1工場が量産に入った事実である。熊本での本格稼働は、装置・材料・物流・人材の投資について、具体的な判断材料を与えている。

このような中、2025年10月8日(水)・9日(木)にマリンメッセ福岡A・B両館で「第2回[九州]半導体産業展」が開催される。出展約400社、来場者約1万人、講演25セッションという規模で、量産直結の要素技術からEHS(環境・安全衛生)、物流、人材までを横断的に俯瞰できる場となるだろう。また、「[九州]次世代物流展」も同時開催される。

本稿は、この「第2回[九州]半導体産業展」を、装置・材料・EHS・物流・教育の点から俯瞰し、九州の半導体の盛り上がりを考察する。

現場課題を一つの導線で結ぶ展示配置

今回はA・B両館を使った会場拡張開催となる。前工程・搬送・クリーン部材・計測から、保全・EHS・人材まで、ラインのKPI(歩留まり、スループット、ユーティリティ負荷)に直結する要素群を同一会場で横断比較できる。出展約400社、来場1万人、25セッション、ならびに同時開催の次世代物流展という構成は、製造—EHS—物流—人材を連続課題として捉え直すのに適していると言える。

「要素技術」ブースで見る“量産の地力”

搬送・ベアリング・クリーン対応部材・シール・計測は、歩留まりと保全コストを左右する地力の領域である。たとえばジェイテクト(A館 A5-59)は、硬脆材料ウエハ研削盤「DDT832」などを出展する。ライン停止時間や保全費用に直結する摩耗・潤滑・クリープ対策は、実機前提での適用可否確認が効率的である。

ケミカル・表面処理では、メルテックス(A館 A8-51)が、UBM形成に対応する無電解めっき技術、Cu/Tiシード層のダメージ低減エッチング、二流体現像機による高精度パターン形成など、プロセス安定化に直結する処方・機器を展示する。材料・装置・計測の三位一体最適化を現場目線で検証できる点が価値と言える。

25セッションが示す「規制×品質×SCM」の新しいあり方

全25セッションのプログラムはもともと公開済みで、経済産業省、九州大学、熊本県・福岡県、ならびにデバイス/後工程企業などが登壇する。化学物質管理やSDS(安全データシート)、変更管理、ロット追跡、校正・計量の標準、薬液置換時のリスク評価、廃液処理の体制整備といった“量産のルール”を、講演—ブース—現場運用の三段で詰められる構成である。

同時開催の次世代物流展では、半導体専用物流、温湿度・静電気管理、危険物・薬液輸送と保安など、最終コストや立上げ速度を左右する論点が補完される。調達—輸送—保管—地域規制対応の“確からしさ”まで含めたSCM設計が、設備能力だけでなく供給安定を決めるのだ。

JASM、熊本の量産開始がもたらした「安定供給」の新しいあり方

JASM第1工場の量産開始(2024年12月27日)は、量産=装置と人が動き、歩留まりやユーティリティ負荷というKPIの“分母”が動き始めたことを意味する。展示会での実機確認は、既設ラインの増強から新設ラインの立上げまで、停止時間、据付条件(床荷重、電力、排気、薬液)、遠隔監視や予防保全メニューといった導入要件の差配に直結する。

量産移行後は、装置据付前のFAT/SATの適合範囲、予備品の在庫規模と補給リードタイム、消耗材の年間使用量見積りが意思決定の核心になる。薬液はSDS・排出規制と置換手順の整合、排気は濃度監視とスクラバー能力の確認、電力は立上げカーブと瞬低対策を合わせて積み上げ始めている。さらに、工程変更管理(MOC)と校正計画、計量トレーサビリティを同時に設計し、停止時の復旧手順まで標準化しておくことで、立上げの「初期歩留まり」と「安定歩留まり」の差を最小化している。

官学の取り組みから読み解く、九州が「人」を囲い込む理由

10月8日(水)午前は、九州大学と九州経済産業局が人材育成コンソーシアムの取り組みを紹介(11:00–12:00)、熊本県知事講演(11:30–12:30)も並び、教育・政策・地域連携を同一テーブルで俯瞰できる。午後は九州大学/熊本高専が「“人”と“知”の連携戦略/高専における半導体人材育成」(14:15–15:15)を担当。翌9日(木)は福岡県による「半導体産業振興に向けた取組」(15:00–15:30)が行われ、採用・育成・配置の意思決定に資する最新像が提示される。

展示会外でも“人材の地力”は積み上がっている。福岡半導体リスキリングセンターは受講者1万人超を公表し、初学者からベテランまでの再教育スキームが稼働中である。さらに、福岡県は2025年8月に「福岡超集積半導体ソリューションセンター」を開所し、後工程の先進技術をワンストップで支援する枠組みを整えた。

官学の統合面では、九州経済産業局が主導する「九州半導体人材育成等コンソーシアム」が2025年10月17日に第7回会合を開催し、KPIの進捗や産学マッチングを報告予定である。展示会のセミナーと行政側のKPI運用が同一四半期でシンクロすることで、来期の採用・育成投資を判断しやすくなった。

最新技術や、量産開始後の結果検証の最適な場に

量産の課題は、安定供給と運転コスト最適化に尽きる。JASMの量産開始で需給と時間軸が明確化し、第2回[九州]半導体産業展は、それを実務まで落とし込む最適な検証場となるだろう。搬送・軸受・シール・クリーン材・計測・保全・EHS・物流は、歩留まり・スループット・ユーティリティ負荷のKPIを直接動かす部位であり、25セッションは規制・品質・SCMの“新しい標準”を提示する。九州は、半導体における新しい産業地図の描き直しを示してくれているのだ。

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