ファウンドリ大手が進める「グリーンファウンドリ」 脱炭素圧力対応は「事業継続の必須条件」に

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2024年以降、TSMC、Intel、Samsung Electronicsといった世界トップの半導体ファウンドリが「グリーンファウンドリ(環境負荷を低減するための取り組み)」戦略を強化し始めた。それぞれの企業は、自社の再生可能エネルギー活用や工場内の排出削減にとどまらず、取引先にも温室効果ガス排出(GHG)量の報告や削減を求める動きが加速している。これらは単なるCSR(企業の社会的責任)ではなく、サプライチェーンにおける「取引条件」として実装されつつある。

本稿では、こうしたScope 3(企業の事業活動に関連する、自社以外から排出される間接的な温室効果ガスの排出量)への対応が単なる環境保全だけではなく、収益を上げるためのビジネス戦略としても必要性を持ち始めた背景と、この状況に日本の材料・装置メーカーがどのように備えるべきかを具体的に解説する。

Scope 3に対応せよ ファウンドリ各社が突きつける現実と基準

まずはScope 3とは何かを表にまとめた。これをもとに各社の動向を説明する。

1.TSMC:装置メーカーにGHG排出量の可視化、材料メーカーに原材料のCFP開示を要求

TSMCは2024年、全世界の生産拠点において100%再生可能エネルギー(RE100)達成を発表した。この動きに伴い、TSMCはすでに2023年から主要なサプライヤに対し、「カーボンフットプリント(CFP)」の報告と削減計画の提示を求めている。

具体的には、装置メーカーに対しては納入機器の製造過程におけるGHG排出量の可視化、材料メーカーには原材料の採掘~製造~輸送の一連のCFP開示を要求しており、対応が遅れれば今後の調達対象から外れる可能性も示している。

2.Intel:ISO認証や製品単位の報告を義務化

Intelは「2040年までに自社の全世界製造をネットゼロ(温室効果ガスの排出量と吸収量を差し引きゼロにする状態)にする」ことを掲げるだけでなく、2024年にはサプライヤ全体にISO 14064準拠でのGHG報告を要請した。加えて、一部の高額装置や化学材料については「製品単位」でのCFP提出を求めており、開示されるデータは監査対象にもなる。

また、調達先の環境パフォーマンスを点数化し、年間契約更新時にこのスコアを反映する「Supplier Sustainability Scorecard」制度を導入。これにより、取引装置・材料メーカーにとっては、環境対応が価格・納期と並ぶ競争軸となっている。

3.Samsung:Scope 3削減目標を初開示、Tier 2以下企業にも影響波及

Samsung Electronicsは2023年、サプライチェーンを含むScope 3の排出量削減に初めて数値目標を設定。2030年までに主要サプライヤ排出量を17%削減する目標を掲げた。

特筆すべきは、同社が2024年から「Tier 2以下」(部品・素材のサプライヤ)にもデータ提供を要請し始めたこと。つまり、日本の部材メーカーが韓国や台湾のTier 1装置メーカーを通じてSamsungと取引している場合でも、間接的に排出情報の提出を求められる構造ができつつある。

4.日本企業:早急なCFP開示対応がカギを握る

日本企業はこれまで、環境対応を「自主的な改善」「ESG報告書レベルの開示」で済ませてきた例が多い。しかし今後は、国際的な取引関係において「製品単位」「工場単位」でのCFP開示を求められ、未対応であればサプライヤからの除外リスクが高まるという現実が待っている。

とくに中堅規模の装置メーカー・材料メーカーにとっては、次の2点が今後の重要課題となる。①CFP算出の標準化とトレーサビリティ構築、②再生可能エネルギー(PPA等)導入や工程改善による実排出の削減。

日本の装置・材料メーカーに求められる持続可能性の「開示力」を高める必要性

もはや今後、ファウンドリ各社は価格や性能だけでなく、「CO₂効率(単位製品あたりの排出量)」を調達判断基準に組み込んでくることは避けられない。日本の装置・材料メーカーが持つ加工精度や品質保証力は依然高評価されているが、それをCO₂削減と両立させることが求められる。

このため、CFP算定ツールやLCA(ライフサイクルアセスメント)への投資、人材育成、エネルギー供給の多様化など、多面的な対応が必要になってくる。特に、中小企業においては、業界団体や自治体と連携した共通プラットフォーム構築も急務となるだろう。

このように装置や材料という物理的なスペックでは測れない「情報の透明性」が、新たな競争軸になりつつあるのだ。「グリーンファウンドリ」との取引を継続するには、サプライヤ自身が持続可能性の「開示力」を高める必要がある。「脱炭素への対応=余分なコスト」ではなく、「事業継続の必須条件」と捉え直すべき時が来ているのだ。

参考リンク(出典一覧) ※この記事は以下を参考に執筆されました。

(参考:TSMC、「2024年に全工場でRE100達成」
(参考:Intel、「Climate Action Plan 2024」
(参考:Samsung Electronics、「Sustainability Report 2024」

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