連載:半導体の世界をのぞいてみよう⑦ エヌビディア・TSMCそして日本勢──半導体業界をビル建設にたとえる

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ニュースでは「NVIDIA(エヌビディア)が最高益」「TSMCが新工場を建設」といった見出しが頻繁に登場します。
しかし、あらためて「この会社は半導体業界のどの部分を担当しているのか?」と聞かれると、すぐに答えられない人も多いのではないでしょうか。
半導体ビジネスは、ひとつの会社がすべてを担っているわけではないのです。

巨大な“まちづくり”のように、

• 新しい半導体を考える企業 = どんなビルを建てるか考える人(企画・オーナー)
• 半導体の設計図を作る企業 = 図面を引く設計事務所
• 半導体を作る工場 = 実際に工事を進めるゼネコン
• 製造装置や材料メーカー = クレーンや生コン、ガラスを供給する装置・材料メーカー

といった役割を、多くの企業が分担して進めています。
本稿では、この構造を「ビル建設プロジェクト」にたとえながら、それぞれどのポジションで仕事をしているのかを、具体的な企業名とともに見ていきます。

まず“設計図”を描く:半導体ビジネスは5つの役割に分かれる

最初に、これからの章立ての“前提となる設計図”だけをシンプルに整理しておきます。
半導体ビジネスは、ビル建設プロジェクトにたとえると、次の5つの役割に分けて考えることができます。

① 企画・オーナー(最終製品メーカー)
スマホメーカー(AppleやSamsung Electronics:サムスン電子)、クラウド事業者(Amazonなど)、自動車メーカー(トヨタ、ホンダなど)。

② 設計事務所(ファブレス)
エヌビディア、Qualcomm(クアルコム)、MediaTek(メディアテック)など。

③ ゼネコン(ファウンドリ)
TSMCやサムスン電子のファウンドリ事業。

④ ハウスメーカー型(IDM)
Intel(インテル)やRenesas(ルネサス)など。

⑤ 重機・建材・特定ビル(装置・材料・特定デバイス)
東京エレクトロン、信越化学、SUMCO、Sony、キオクシアなど。

この“5つの役割”という地図を頭の片隅に置きながら、順を追って企業とビジネスモデルを見ていきます。

「設計事務所」としてのエヌビディア──ファブレスの強み

1. エヌビディアは“図面とソフトウェア”で稼ぐ会社

エヌビディアは、自社工場を持たないファブレス半導体企業。
GPUおよびデータセンター向けプラットフォームを中核とし、AIチップ市場でも支配的な立場にあります。
“フルスタック”でリードし、設計+ソフトウェアまで含めた高付加価値ビジネスを展開しています。

2. ファブレスの強み:設備投資よりも“頭脳”と“プラットフォーム”

ファブレスは、工場投資を避け、設計技術とソフトウェアに集中できるモデル。
エヌビディアはGPUに加え、CUDAやAIフレームワークとの統合、リファレンス設計なども提供しています。

3. エヌビディア以外の設計事務所たち

• クアルコム:Snapdragon設計
• メディアテック:中価格スマホ向けSoC
• AMD:TSMCに委託する設計型プレーヤー

ファブレスは、軽やかな反面、ファウンドリの状況に影響されるリスクも持ちます。

ゼネコンとハウスメーカー──TSMC・サムスン電子・インテル・ルネサス・ラピダスのポジション

1. TSMC:世界最大の“ゼネコン専業”ファウンドリ

ファブレス企業からの設計を受託し、先端プロセスで製造。
製造サービスに特化し、自社ブランドチップは持ちません。

2. サムスン電子:メモリ+ロジック受託の二刀流

メモリ製品ではIDM、ロジックではファウンドリを展開するハイブリッド型。

3. インテル・ルネサス:ハウスメーカー型IDMの現在地

インテルはファウンドリへ転換中、ルネサスはHondaと協業でSoC設計をTSMCに委託。
IDMも単独完結型から協業型へ変化しています。

4. ラピダス:日本発の“2nmゼネコン候補”

北海道で2nmパイロットラインを構築中。
IBMやimecと連携し、先端技術導入を進めています。

クレーンと建材、専門ビルで支える日本勢──装置・材料・特定デバイス

1. 東京エレクトロンなどの製造装置メーカー:現場の“重機”

成膜・エッチング装置、テスト装置を提供。
前工程に不可欠な“重機”を供給しています。

2. 信越化学・SUMCO:地盤となるシリコンウエハ

信越化学・SUMCOは世界的なシリコンウエハ供給企業。
半導体の“基盤”を支えています。

3. ソニーのイメージセンサ:カメラ付きの“高機能ビル設備”

スマホ向けCMOSイメージセンサで世界トップ。
高機能センサを提供する“専門ビル設備”企業です。

4. キオクシアとメモリ勢:NANDフラッシュという“物流倉庫ビル”

キオクシアはNAND専門、Micronは高速HBMで日本拠点を展開。
“倉庫ビル”型のインフラとして重要な存在です。

各企業の“立ち位置確認“が大切

本稿では、半導体ビジネスをビル建設になぞらえて構造を整理してきました。
「この会社は設計事務所か? ゼネコンか? 建材メーカーか?」と俯瞰することで、業界全体の理解が進みます。
これは、投資やキャリア選択にも役立つ視点です。

今後も本シリーズでは、半導体業界のさまざまな側面を解説していきます。

知りたいテーマがあれば、画面右側のコメント欄からお寄せください。
読者の疑問にもできるかぎりお応えしながら進めてまいります。

*この記事は以下のサイトを参考に執筆しました。
参考リンク

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