アムコー、70億ドル規模の大プロジェクトスタート!――アリゾナ州が先端パッケージのクラスター拠点に

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2025年10月6日、アウトソーシング半導体組立・試験(OSAT)大手の米国Amkor Technology(アムコー・テクノロジー)は、米国のアリゾナ州ピオリア市で先端パッケージ/テスト拠点の起工式を行った。アムコーはこの拠点について、2段階の建設を通じて最大70億ドル規模のプロジェクトになると説明している。新キャンパスのクリーンルーム製造スペースは最終的に75万平方フィート(約7万㎡)超、雇用はエンジニアリングや先端製造分野を中心に最大3,000人規模を見込む。同社は同拠点を「米国最大かつ最先端のアウトソーシング半導体パッケージング工場」と位置づけている。

本稿では、このアムコーピオリア拠点を「OSAT版メガファブ」と捉え、①投資・設備・スケジュールの全体像、②米国半導体サプライチェーンにおける「後工程シフト」の意味、③日本の材料・装置・パッケージング企業への示唆、という3つの観点から整理し、日系企業がどのような視点でこの動きを捉えるべきかを考察する。

アムコーピオリア拠点の全体像

1.投資規模とレイアウト

アムコーは、2023年にアリゾナ州ピオリアでの先端パッケージ/テスト施設計画を発表して以来、用地と投資規模を段階的に見直してきた。2025年8月時点の発表では、次のような計画が示されている。

  • 建設地:ピオリア市北部の「Peoria Innovation Core」内
  • 敷地面積:104エーカー(約42ヘクタール)
  • 初期投資額:約20億ドル
  • 雇用:約2,000人
  • 量産開始:2028年初頭を予定

その後、2025年10月6日の起工式に合わせて、プロジェクト全体の計画は「最大70億ドル規模」「クリーンルーム製造スペース合計75万平方フィート超」「最大3,000人の雇用創出」へと拡大した。

この規模感は、単一のパッケージ工場というよりも「キャンパス型」の拠点とみる方が実態に近い。複数棟から成る先端パッケージ専用メガファブを段階的に立ち上げていく構図が想定される。OSAT企業が単一拠点に最大70億ドルもの投資を行う例は多くなく、AI・HPC向けパッケージ需要への期待の大きさがうかがえる。

2.技術ターゲットと用途

アムコーは、ピオリア拠点を「ウェハレベルパッケージング」や「システム・イン・パッケージ(SiP)」などの先端パッケージング技術を用い、自動車、通信、高性能コンピューティング、人工知能市場向けのアプリケーションに対応する拠点と説明している。

想定されるのは、次のような技術要件を満たすパッケージ群である。

  • 複数チップ(CPU/GPU+HBM+I/Oなど)を高密度に実装する2.5D/3Dパッケージング
  • 高速インターフェースに対応するRDL形成技術
  • 高信頼性要求に応える封止材料・熱設計

従来、こうした先端パッケージの多くは台湾や韓国などアジア地域の拠点に集中していた。アムコーは、これら高密度実装ニーズの一部を米国内で処理できる能力を整えようとしている。

3.CHIPS法との関係

2025年1月の報道によれば、米商務省はCHIPS法に基づく補助プログラムの一環として、アムコーのアリゾナ施設に対し最大4億700万ドルの資金支援を決定した。これは総額20億ドル規模の初期投資の一部をカバーするものであり、米国内における先端パッケージ施設整備を後押しする位置づけにある。

CHIPS法は、前工程ファブだけでなく、パッケージ/テストといった後工程拠点も支援対象に含めている。アムコーピオリア拠点は、その後工程側を担う重要プロジェクトとなる。

TSMCアリゾナとの接続

1.前工程投資との組み合わせ

TSMCは、米国アリゾナ州フェニックス近郊で複数のファブ建設を進めており、2025年1月には4nmプロセスのチップ生産開始が報じられている。前工程と後工程をアリゾナ州内で完結できる体制が構築されつつある。

これにより、次のような新しいサプライチェーン像が現実味を帯びてくる。

  1. TSMCアリゾナで先端ロジックを製造
  2. ウエハをアムコーピオリア拠点へ搬送
  3. 先端パッケージングおよびテストを実施
  4. 完成チップとして米国内およびUSMCA圏に出荷

従来は米国内で製造されたウエハでも最終パッケージングはアジアで行うケースが一般的だった。しかし、アムコーピオリア拠点の本格稼働により、国内完結型の流れが拡大する可能性がある。

2.Appleをはじめとする米系大口顧客の動き

報道によれば、アムコーのアリゾナ施設はAppleを最初で最大の顧客とし、TSMCアリゾナで製造されたチップをパッケージングする計画が示されている。

米系大口顧客にとって、米国内パッケージ拠点を確保することは次のメリットがある。

  • 地政学リスクの低減
  • 政府インセンティブの活用
  • 国内生産比率・サステナビリティのアピール

3.OSATの役割変化

アムコーの大規模投資は、OSATが次の領域でも存在感を高めつつあることを示している。

  • 高度な先端パッケージ技術の主戦場
  • 巨額設備を投じるメガファブ級拠点の運営主体
  • 国家戦略・サプライチェーン戦略にも関与するプレーヤー

日本企業への示唆——材料・装置・パッケージングの戦略再設計

1.材料・装置メーカー:アリゾナ対応力の再点検

日本企業はパッケージ材料や装置で高い世界シェアを持つ。アムコーピオリア拠点のような先端パッケージキャンパスが米国内に立ち上がることで、次の論点が重要性を増す。

  • アリゾナ州や近隣州でのサポート拠点整備
  • 材料供給のローカル体制
  • 米国規制に対応した材料・装置仕様

特にアリゾナ・クラスター比率が高い企業は、“現地で一緒に開発・改善する体制”が求められるようになっている。

2.日系OSAT・IDMのパッケージ戦略の見直し

米国で「前工程も後工程も国内で完結」できる流れが強まると、米国内パッケージ指定の案件は増える可能性が高い。

日系企業には次の切り分けが求められる。

  • どの製品・顧客は自社拠点(日本・アジア)で対応するか
  • どこを米国内OSATと協業していくか

パッケージングをコスト最適化だけではなく、市場戦略として再設計する局面に入っている。

3.人材・組織:グローバル運用の前提としてのアリゾナ

アリゾナはTSMC・アムコーを中心にクラスター化が進み、日本企業にとっても人材・組織面での対応が必要となる。

  • 先端パッケージ技術を理解したFAEの配置
  • 前工程〜後工程を理解する営業・企画人材の育成
  • 日本・米国間の人材ローテーション

アリゾナを「顧客のいる場所」「技術を鍛える現場」と捉えることが競争力向上につながる。

米国の半導体政策と産業構造の変化を象徴する出来事

1.後工程の選択がサプライチェーン戦略の主題に

アムコーピオリア拠点の起工は、米国の半導体政策と産業構造の変化を象徴する出来事だ。ポイントは3つ。

1つ目:CHIPS戦略が前工程のみならず後工程にも重心を置き始めたこと。
2つ目:OSATがメガファブ級投資主体としてサプライチェーンを左右し始めたこと。
3つ目:日本企業にとって「どのOSATと組むか」が戦略上重要度を増していること。

アムコーピオリア拠点は2028年初頭の本格稼働を目指す長期プロジェクトだが、サプライヤ認定や人材確保など前工程はすでに始まっている。アリゾナ・クラスターに関与するかどうかは、今後数年の経営判断テーマとなる。

2.「後工程をどこまで戦略テーマとして据えるのか」

日系企業には以下の検討が求められる。

  • アリゾナ・クラスターでの立ち位置をどう描くか
  • 米国内前後工程チェーンの中で自社が担う領域
  • それを支える人材・組織デザイン

アムコーのアリゾナ先端パッケージキャンパスは、日本企業に「後工程をどこまで戦略の中心に据えるのか」という問いを突き付けている。

*この記事は以下のサイトを参考に執筆しました。
参考リンク

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