世界の半導体市場は 2024 年に史上初めて 6,000 億ドルを突破し、2030 年には 1 兆ドル産業になると予測されている。しかし、大きな問題ものしかかっている。それは「人材供給」の問題である。市場が大きくなるにつれ人材供給が追いつかず、日本でも今後 10 年間で少なくとも 4 万人が不足すると JEITA は試算している。
一方でこの人材不足は、IT・自動車・化学など隣接業界など他業種から半導体業界への「転職チャンス」とも言える。半導体と関連のある隣接業界で磨いたスキルをベースに少しの学習で、専門職になれるからだ。本稿では、異業種から半導体業界への転職法や成功例を紹介する。
業界が「人材不足」状態になった理由と人材の必要数
まず、半導体業界が「人材不足」状態になった3つの理由を考察する。
一つ目は「投資ラッシュ」である。日本だけでも 2023~24 年に発表された新設・増設プロジェクトは 5 兆円超となる(経産省)。二つ目は「技術ロードマップの加速」である。TSMC 熊本第2工場や Rapidus の 2 nm 開発で装置/材料需要が前倒ししている。そして、「脱炭素の推進」である。Scope 3 削減へ装置効率改善やサプライチェーン再編が急務となっている。
次に、今後の人材不足状について、JEITAが推計した「今後10年間の地域別追加人材需要」を図1に示す。

図1:JEITA推計による地域別追加人材需要(今後10年間)
これを見ると前述したように、日本でも今後 10 年間で少なくとも 4 万人が不足することがわかる。
「企業アカデミー」で半導体業界向けにスキルをアップさせよう
IT・自動車・化学などの半導体隣接業界から半導体業界へ転職するには、既存の業界やポジションから狙える半導体の職種、そして転用できるスキルなどを知る必要がある。それを「ポジション別スキル換算表」として図2に示す。

この図には目安としてではあるが、転職時に転用できるスキルと、そこから何を追加学習すればよいかを学習ギャップとしてまとめてある。これらの学習ギャップを埋めるには、転職後の企業が社員教育のために設置する組織である「企業アカデミー」や MOOC(大規模公開オンライン講座)の利用がおすすめである。
たとえば、東京エレクトロン(TEL)は、「短期集中プロセスエンジニア研修」として、石油化学プラント経験者を装置オペレータに育成している。装置貸与+寮完備で地方在住者にも門戸を開く。
Micron Registered Apprenticeshipは、未経験者を18 カ月でクリーンルーム技術者へ仕立てる「登録実習制度プログラム」を実施している。
TenstorrentとRapidusは、5 年で 200 名 の AI チップ設計者を育成。受講費は経産省補助で 80%減となる。
転職成功の報酬レベルとは?
では、いよいよ転職後の報酬レベルを見ていこう。転職情報サイト「doda(デューダ)」で「半導体プロセスエンジニア×年収1,000万円以上」として検索すると、2025年7月末時点で14件がヒットした。このうち、「光デバイス後工程マネージャー」が目を引く。この提示額は 1,000〜1,400 万円レンジが中心だった。
また、マイナビ転職の 2025 年調査では全業種平均 488.1 万円であるのに対し、半導体求人は同社集計で 550〜600 万円帯がボリュームゾーン(経験者)で高かった。

転職成功シナリオ3選

次に、転職後に報酬額がアップした3つの例を成功例として、その流れをシナリオとし図3にまとめた。これを見ると、130万円~200万円は年収アップしていることがわかる。
今が異業種からの転職好機か

半導体業界は、装置への投資と人への投資が“同時進行”している。異業種出身者が第一線で活躍するまでのリードタイムは、これまでみてきたように企業アカデミーの普及で急速に短縮中である。
自分のスキルや経験を“半導体”という新たな舞台で試してみたいと考える人にとっては、今が転職好機と言えるだろう。
*この記事は以下のサイト参考に執筆しました。
参考リンク
- JEITA「我が国の半導体関連産業の人材動向 2024年版」
- McKinsey「Reimagining labor to close the expanding US semiconductor talent gap」
- Reuters「Japan taps US chip startup Tenstorrent to help train new wave of engineers」
- Tokyo Electron「SEMICON JAPAN 2024 (プラチナスポンサー告知)」
- Micron Blog「Pioneering New Semiconductor Career Pathways with Micron’s Registered Apprenticeship Program」
- Ansys Icepak 製品紹介