【前編】半導体産業の未来図―ティアンドエスグループが拓く、高成長を支える「生産システム」とその先にある展望―

AI関連株として市場の注目を集めるティアンドエスグループ株式会社(以下、T&S)。その成長を語る上で忘れてはならないのが、「半導体」セグメントの存在だ。同社は30年以上にわたり培った現場力と技術力で、半導体工場に特化したSIer(システムインテグレーター)としての独自ポジションを確立している。競合が容易に参入できない分野で、なぜ同社が圧倒的な存在感を示すのか。その理由と今後の展望について、本紙はCEO武川義浩氏とCOO木下洋氏に独占インタビューを行った。
30年の信頼と技術が築いた“越えられない壁”
T&Sは、もともと社会インフラ向けの大型システム開発を得意とするSIerとしてその歴史をスタートさせた。「弊社は、原子力発電所や半導体プラントといった、大規模で重厚なシステムの設計開発に長く携わってきました。人の生活に不可欠な分野で培ってきた経験は、T&Sの揺るぎない基盤となっています。」とCOOの木下氏は語る。これらの分野では、高度な技術力、緻密なプロジェクト遂行能力に加え、極めて高い秘匿性と信頼性が要求されるシステムを長期間にわたり支え続ける実績が求められる。これこそが、T&Sが半導体工場という社会インフラの根幹を支えるシステムの構築・運用を任されている理由なのだ。
中でも、旧東芝(現キオクシア)との長きにわたる取引を通じて、半導体工場向けの生産管理システム領域で圧倒的なノウハウを蓄積してきた。CEO武川氏は「弊社のキオクシア様とのお付き合いは30年ほど前、外資系のパッケージシステムの導入支援から始まりました。」と話す。この実績は、T&Sの技術力の深さと幅広さを如実に示している。以来、T&Sはこのシステムの保守・カスタマイズ・再構築といった一連のライフサイクルを長年にわたって担い、半導体生産管理の専門知識を蓄積してきた。この共同作業を通じて得られた知見は、T&Sが他のSIerとは一線を画す、独自のポジションを確立する上で不可欠な財産となっている。
この実績がもたらすのは、単なる高度な技術力だけではない。半導体工場のIT環境や日々の業務フローに対する深い理解、そして顧客との間に築き上げられた“ツーカー”の関係性こそが、T&Sの真の強みである。驚くべきは、現場での対応を担う30名を超える専属部隊がキオクシアの施設に常駐し、日々の運用支援を行っているという事実だ。これは単なる受託開発を超え、T&Sが顧客の事業に深く組み込まれた“組み込み型パートナー”として不可欠な存在であることを証明している。
半導体は現代社会の生活基盤であり、その需要がなくなることは考えられない。特に、T&Sが提供する半導体工場向けシステムのITサービス(保守運用サービスを含む)は、工場が操業している限り必須のサービスであるため、景気の波がある新規開発に比べ、非常に安定した収益源となっている。
また、同社は現在、DX、半導体、AIの3つのカテゴリーに業務を分類し、中でも半導体とAIにさらに力を入れている。これは、国を挙げた半導体推進という大きな追い風を捉え、自社の強みを最大限に活かす戦略の一環であり、T&Sの将来的な成長をさらに加速させる布石と言えるだろう。
生産管理システムの複雑性と戦略的重要性:売上・経理システムと一線を画す理由
なぜ製造業の生産システムは、一般的な企業の売上管理システムや経理システムと比較して、桁違いに複雑なのだろうか。それは、製造プロセスそのものが持つ極限の複雑さに起因する。
T&Sが手掛けるような生産管理システムは、「需給管理」「工程管理」「品質トレース」「進捗管理」「歩留まり分析」など、多岐にわたる機能群で構成されており、それぞれが複雑に連携しながら稼働している。この極めて複雑な環境下で、いかにしてシステムを「動かし続け、最適化し、改善し続ける」ことが重要か、T&Sは熟知している。
加えて、生産システムは製造企業の“ノウハウの塊”でもある。工程や装置の使い方、歩留まりの改善手法、部材の手配ロジックといった知見は、競争優位の源泉であり、第三者に開示されることは少ない。そのため、開発段階で要求仕様が明確に示されることはまれであり、現場への深い入り込みや、業務そのものの理解が欠かせない。言い換えれば、開発は「コードを書く」だけでは終わらず、顧客と伴走しながら暗黙知を形式知化し、それを再現性のある形で実装するという、高度な技術と関係構築力が求められる。
一度導入された生産管理システムは、企業の業務プロセスに深く組み込まれるため、他社のベンダーに容易に切り替えることはできない。切り替えには莫大なコストと多大なリスクが伴い、いわゆるスイッチングコストが非常に高いのだ。そのため、既存ベンダーによる継続的な保守や追加開発の重要性はますます高まり、顧客との関係も長期にわたり、戦略的なものとなっている。これにより、T&Sは一度顧客を獲得すれば、安定した長期的な収益を享受できるビジネスモデルを確立している。
半導体だからこそ実現できる“継続収益”の仕組み
T&Sのビジネスモデルの核心は、半導体産業という極めて精密で複雑なフィールドの特性を深く捉え、それを安定収益に直結させている点にある。半導体業界の生産システム開発は請負契約が通例だが、その実態は長期的な関係性を前提とした“実質的なストック型”ビジネスなのだ。開発フェーズは複数年にわたり、その後も保守・運用契約へと自然につながる構造がある。システム導入後も、追加機能の開発やカスタマイズといった「開発保守」、そして工場内の運用支援やヘルプデスクを行う「運用保守」が継続的に発生し、T&Sの売上は安定的に積み上がっていく。
CEO武川氏によると、「現在、その蓄積されたノウハウを活かし、半導体製造の後工程を中心としたお客様の老朽化したシステムの“スクラッチでの再構築”を進めています。既存システムの課題を根本から解決し、最新の技術を取り入れることで、さらなる最適化を目指すことにより、よりお客様の生産性への貢献をさせていただいております。」とのことだ。ここでもT&Sの専門性が光る。
T&Sが提供する半導体向けソリューションの特に注目すべきは、「開発保守」である。これはシステム導入後に発生する追加機能開発やカスタマイズを指し、工場内の運用支援やヘルプデスクを行う「運用保守」と比較して、高単価・高収益性を持つとされている。これは、T&Sの提供するソリューションが単なるシステム運用に留まらず、顧客のビジネス成長に直結する専門性の高い価値を提供していることの証であり、T&Sの収益性の高さの秘密がここにある。
COOの木下氏は、「工場やラインが増えれば、必要なIT支援人員も増えます。つまり、顧客の設備投資と連動するかたちで、当社の売上も自然と伸びていくのです」と語る。これは、顧客の成長がT&Sの成長に直結する、まさに共存共栄のビジネスモデルを示している。半導体市場が拡大し、各社が設備投資を積極化するほど、T&Sのビジネスチャンスも拡大し、安定した収益基盤がより強固になっていくのだ。
T&Sの生産システムが創る「安定成長」
これまでの解説で見てきたように、T&Sのビジネスモデルは、半導体市場の拡大という追い風に乗りつつも、その根幹は極めて安定している。特に工場の保守運用サービスは、シリコンサイクル(半導体市場の景気循環)や地政学的リスクの影響をほとんど受けず、安定的な収益基盤となっている。新規システム開発は顧客の設備投資に左右されるものの、その後の「開発保守」や「運用保守」が工場の安定稼働に不可欠なサービスとして継続的に積み上がることで、中長期的に安定したストック型モデルが強化されている。
T&Sは、30年以上にわたる信頼と実績、そして顧客に指名されるほどの専門性で、半導体製造という社会インフラの深淵を支えている。複雑極まる生産管理システムを動かし続け、最適化し、改善し続けるノウハウは、他社には決して真似できないT&S独自の強みである。
日本の半導体産業が新たな局面を迎える中で、T&Sのような縁の下の力持ちが果たす役割はますます大きくなるだろう。彼らの技術と信頼が、これからの半導体産業、ひいては日本のものづくりを支え続けることは間違いない。
この安定した基盤の上に、T&Sはどのような未来を描いているのか。後編では、T&Sが目指す半導体産業の未来図に迫る。彼らの進化が、日本の、そして世界の半導体産業にどのような影響を与えていくのか、期待が膨らむ。
参考リンク
- ティアンドエスグループ株式会社: https://www.tecsvc.co.jp/
※本記事の内容は、T&Sへの独自取材に基づいて構成されています。