生成AIブームを受け、EUは2025年6月に、総額200億ドル規模の「AIギガファクトリー」構想を発表した。そして、国や組織が自国のインフラ、データ、人材を活用して、自律的にAIを開発・運用する能力のことである「Sovereign AI(ソブリンAI)」というキーワードのもと、欧州各国が政策を進めている。
そして、中目立つのは、英国GraphcoreとフランスSiPearlが、AIハードウェアにおける主権争いの競争激化である。
しかし、GraphcoreとSiPearlの累計資金調達額は、米国のNVIDIA 1社の四半期売上にも遠く及ばないのが現状だ。この2社が、NVIDIAという巨人を相手に対等に戦うには、国策をうまく生かし、さらに特定の分野に集中した戦略が必要だろう。本稿では、この2社がNVIDIAにどう挑むのか、現状と今後を考察する。
Graphcore:スパース演算やGNNに強い。高性能エコシステム構築が急務

まず、Graphcoreの現状を見てみよう。同社は、2024年11月に75名の大量採用を発表し、従業員数は約450名へ拡大した。累計資金調達は2024年時点で7.67億ドル、企業評価額28億ドル。
3D WoW技術を用いたBow IPUとIPU-POD256で数兆パラメータ級モデルを狙う。
同社は、「希薄」で「まばら」なデータから学習する「スパース演算」やグラフ構造データを扱うための深層学習技術(GNN)に強いが、NVIDIA社が開発したGPU「CUDA」並みのエコシステム構築が急務である。
SiPearl:AI向けプロセッサ「Rhea1」が本格導入段階へ
SiPearlは、HBM搭載の高性能計算(HPC)およびAI向けプロセッサ「Rhea1」が、TSMCで本格製造への導入が決まっている。また、Rheaプロセッサは、欧州初のエクサスケール機「JUPITER」に導入されることが決定している。
同社は、HPC × AIハイブリッド需要を狙うが、量産までの時間が最大リスクと思われる。
EUと英国の投資状況
英国は、AIスーパーコンピュータである「Isambard-AI」などの開発を推進するため、コンピューティングインフラに10億ポンド(13億4000万ドル)を投資する計画を発表した。
EUは4つのAIギガファクトリー建設を掲げ、電力コストと資金調達格差への対策を急いでいる。
包囲網の鍵は「用途特化」と「共同調達」

以上、2社の状況を見てきた。GraphcoreはGNN・スパースAI、SiPearlはHPC × AIハイブリッドを軸に攻勢をかける。しかし、まだ、技術面など課題も多い。
欧州全体として見れば、NVIDIA包囲網を完成させるには「規模より適所適材」の思想でエコシステムを束ねる必要があると思われる。GraphcoreとSiPearlの今後の動向は、その試金石だと言える。
※この記事は以下のサイトを参考に執筆しました。
参考リンク
Nvidia Announces Financial Results for First Quarter Fiscal 2026
Nvidia Powers Europe’s Fastest Supercomputer
Reuters: Nvidia’s pitch for sovereign AI resonates with EU leaders (2025-06-16)
Reuters: Britain boosts computing power in $1.3 billion AI drive (2025-07-17)
Graphcore Blog: Graphcore begins hiring drive with 75 new jobs (2024-11-07)
Tracxn: Graphcore – 2025 Company Profile & Team
SiPearl Press Release: Final closing of €130 m Series A & Rhea1 tape-out (2025-07-15)