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SEMICON.TODAY 7 min · 2026.09.03

Samsungが描く3Dメモリの次章ーHBMの先に来る”縦積みAIメモリ”

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この記事のポイント
Samsungは米サンタクララのFMS 2026で、zHBM・zNAND-Oのコンセプトモデルと、400層超のV10 BV-NANDを初公開
zHBMはHBMをAIチップの「横」ではなく「真上」に積む構想。HBM5比で約8倍の性能、10倍超の密度を目標に掲げる
V10 BV-NANDはウエハ接合技術で400層超を実現し、前世代V9比で密度を約58%向上
zHBMとzNAND-Oはあくまで構想段階。実現には製造技術・コスト・顧客チップ側の対応が必要

2026年8月4日、Samsung Electronics(サムスン電子)は米カリフォルニア州サンタクララで開かれたメモリ・ストレージ業界の年次会議「FMS(Future of Memory and Storage)2026」で、次世代3Dメモリアーキテクチャの構想を発表した。中心となったのは、HBMをAIチップの真上に積む「zHBM」、エッジAI向けの高性能NAND「zNAND-O」、そして400層超の「V10 BV-NAND」である。Samsungは、DRAM、NAND、企業向けストレージ、先端パッケージング技術を組み合わせ、AIインフラを支える次世代メモリ群としてこれらを提示した。

発表の意味を一言でまとめれば、「AIの性能を決めるボトルネックは演算チップからメモリへ移りつつあり、その解決策は平面ではなく立体(3D)にある」ということになる。

本稿では、メモリがなぜAIの壁になるのかを整理したうえで、zHBMとV10 BV-NANDが何を変えようとしているのか、そして日本企業にとっての意味を解説する。

Future of Memory and Storage(旧Flash Memory Summit)の略で、毎年8月にシリコンバレーで開かれるメモリ・ストレージ業界最大級の会議。各社が次世代技術を初公開する場として注目され、今年はSamsungのほかキオクシア、SanDisk、SK hynixなども新技術を発表した。

1. なぜ今「メモリの立体化」なのか

図1AIシステムのメモリ階層
速さと容量はトレードオフの関係にありどこかが詰まると全体が遅くなる

AIシステムの中で、データはいくつもの階層を行き来している。演算チップの内部にあるSRAM、その隣のHBM、サーバーのメインメモリであるDRAM、保存領域のSSD、そして長期保管用のHDDやテープ。上の階層ほど速いが容量は小さく高価で、下にいくほど遅いが大容量で安価だ。

生成AIでは、モデルの規模が大きくなり、推論(学習済みモデルを使った回答生成)の回数も爆発的に増えている。学習でも推論でも大量のメモリ読み書きが発生するため、演算チップがいくら速くなっても、データを運ぶ階層のどこかが詰まればAIシステム全体の性能はそこで頭打ちになる。これが「メモリの壁」と呼ばれる問題だ。

平面的にメモリの容量を増やすだけでは、この壁は越えられない。データの移動距離そのものを縮め、単位面積あたりの容量を増やす必要がある。その答えとしてSamsungが示したのが「縦に積む」という発想である。

2. zHBM:HBMをチップの「横」から「真上」へ

図2従来のHBM配置とzHBM構想の違いデータの移動距離を最小化する

現在のAIチップでは、HBMはGPUの横に並べて配置され、インターポーザと呼ばれる中継基板を通じて接続されている。zHBMは、このHBMをAIアクセラレータの真上に垂直に積む新しいアーキテクチャだ。プロセッサとメモリの間でデータが移動する距離を最小化することで、より高い帯域と電力効率を実現し、大規模なAI学習・推論に必要な超高速処理を可能にするという。

Samsungは、zHBMを組み込んだ次世代インターフェースシステムがHBM5比で約8倍の性能、10倍超のメモリ密度、3倍のエネルギー効率、50%超の熱抵抗低減を達成すると説明している。さらに、AIアクセラレータとメモリ層の間に顧客固有のIP(回路設計)を組み込めるようにし、顧客ごとのカスタマイズに対応する構想も示した。

HBMは世代を重ねており、現在の主力はHBM3EからHBM4へ移行中。HBM5はその次の世代で、Samsungは今回HBM4E・HBM5を含むロードマップも併せて示した。zHBMは「HBM5のさらに先」を見据えた構想と位置づけられる。

ただし注意が必要なのは、zHBMが現時点では「コンセプトモデル」である点だ。メモリをプロセッサの真上に積むには、発熱の処理、積層時の歩留まり、接合技術、そして何よりAIチップ側の設計変更が必要になる。業界アナリストも、製造の複雑さ、コスト、エコシステムの対応という三つのハードルを指摘している。

3. V10 BV-NAND:400層超が意味するもの

図33D NANDの層数競争V10 BV NANDは400層超で密度を約58高める

Samsungは同じ会場で、400層超の第10世代V-NAND「V10 BV-NAND」を業界で初めて披露した。BV-NANDはBonding V-NANDの略で、メモリセルの層と、それを制御する周辺回路を別々のウエハで作り、後から貼り合わせる(ウエハ接合)構造を指す。Samsungによれば、V10 BV-NANDは前世代のV9に比べてメモリ密度を約58%向上させ、性能と電力効率も高めた。

3D NANDは、メモリセルを垂直方向に積み重ねることで記憶密度を高める技術だ。層数が増えるほど、同じチップ面積により多くのデータを保存できる。層数を増やすには、深い穴を正確に開けるエッチング、何百層もの薄膜を均一に積む成膜、そして積層後の検査といった製造技術の進化が欠かせない。

従来はセル層と制御回路を同じウエハ上に作っていたが、層数が増えるほど工程が複雑になり、制御回路が高温工程で劣化する問題があった。別々のウエハで最適条件で作ってから貼り合わせれば、高層化と高速な回路を両立できる。キオクシア・SanDiskの「CBA」も同じ考え方に基づく技術で、業界全体がこの方向に向かっている。

4. zNAND-Oとロードマップ:エッジAIまで視野に

Samsungは、V-NAND技術をベースにした次世代高性能NAND「zNAND-O」も紹介した。4層版と8層版が用意され、高い空間効率、改善されたI/O性能、低遅延を組み合わせることで、リアルタイム処理が求められるエッジAI環境に最適化されているという。データセンターだけでなく、端末や現場側でAIを動かす用途まで視野に入れた製品構想だ。

併せて示されたロードマップには、HBM4E、HBM5、LPDDR5X-PIM(メモリ内で演算を行うタイプのモバイル向けDRAM)、企業向けSSDのPM1763などが並ぶ。SamsungはDRAMとNANDの両方を持つ世界最大級のメモリメーカーであり、ファウンドリ、パッケージング、ストレージ製品も抱える。FMS 2026でこれらを一度に見せたことは、同社が単なる部品メーカーではなく、AIインフラ全体に必要なメモリ・ストレージ技術を包括的に提供する企業として自らを位置づけようとしていることを意味する。

5. 日本企業への示唆:3Dメモリは材料・装置・検査の総合戦

Samsungの次世代3Dメモリ構想は、日本企業にとっても重要なテーマである。3D NANDの高層化、HBMの積層化、そしてメモリの立体配置は、いずれも材料、装置、検査、接合、パッケージングの需要を押し上げる。

具体的には、400層超のNANDには高アスペクト比のエッチング装置と成膜装置、ウエハ接合には接合装置とその前後の洗浄・研磨・検査技術、zHBMのような積層構造には熱を逃がす材料と反りを抑える技術が必要になる。日本企業はこれらの領域で強みを持ち、構想段階の技術ほど早期に開発パートナーとして関わる余地が大きい。

まとめ:SamsungのFMS発表は、AIメモリの「未来地図」である

SamsungがFMS 2026で示したzHBM、zNAND-O、400層超のV10 BV-NANDは、AI時代のメモリ競争が次の段階へ入ったことを示している。演算チップの性能競争と並行して、「データをどこに置き、どの距離で読み書きするか」というメモリ構造の競争が本格化する。

zHBMは構想段階であり、実現の時期は未定だ。しかし、方向性は明確である。日本企業にとって、3Dメモリは大きな商機だ。高層NAND、積層HBM、次世代接合、検査、熱対策は、材料・装置・部材メーカーの技術を必要とする。

用語解説

用語解説
HBMHigh Bandwidth Memory(広帯域メモリ)。DRAMを縦に積層し、AIチップの隣に配置する高帯域メモリ。現在はGPUの横に並べて実装される。
zHBMSamsungがFMS 2026で示した構想。HBMをAIアクセラレータの真上に積み、データの移動距離を最小化する。コンセプトモデル段階。
V-NAND/3D NANDメモリセルを垂直方向に積み重ねて容量を増やしたNAND型フラッシュメモリ。Samsungは自社の3D NANDをV-NANDと呼ぶ。
BV-NANDBonding V-NAND。セル層と制御回路を別々のウエハで作って貼り合わせるSamsungの新アーキテクチャ。V10で400層超を実現。
ウエハ接合2枚のウエハを高精度に位置合わせして貼り合わせる技術。セル層と回路をそれぞれ最適条件で作れる利点がある。
エッジAIクラウドではなく、端末や現場の機器側でAI処理を行うこと。低遅延・省電力のメモリが求められる。
メモリ階層速度と容量が異なるメモリを階層的に組み合わせる構成。SRAM→HBM→DRAM→SSD→HDDの順に遅く大容量になる。

参考リンク(出典)

本記事は公開情報(各社プレスリリース、決算資料、報道)に基づき、SEMICON.TODAY編集部が作成した。数値は発表時点のものであり、為替換算は概算。投資判断の勧誘を目的とするものではない。

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