近年、米MSCIなどの株価指数機関もESGの格付けを始めるなど、ビジネス全体におけるESGの位置づけが大きくなっている。これは、半導体市場も同じで、ビジネスのやり取りにおける新たな評価軸として「CO₂排出量が少ない」というポイントが重視され始めている。
これに伴い、大手自動車メーカーやクラウド事業者がサプライチェーン全体の環境負荷を可視化・削減する流れが加速している。事実、半導体製造工程のカーボンフットプリント(CO₂などの排出量を把握すること)は従来比で大幅に増加中であり、供給契約の検討項目に「グリーン半導体」が定着しつつある。本記事では、このような脱炭素対応で進む「グリーン半導体」の評価軸の多様化と、それに対応する日系企業にはどのような強みと課題があるか、考察する。
グリーン半導体推進の現状
1. 製造工程のCO₂排出量はウエハ製造工程が最多

半導体業界向けの情報プラットフォームTechInsightsによると、半導体製造工程ではウエハ製造工程におけるCO₂排出が最も大きく、しかも増加傾向にあり、パッケージング工程を超えて今後の削減焦点になるとしているという。
また、ある欧州プロジェクトの調査では、Scope 1(直接排出)とScope 2(電力間接排出)が、2023年にそれぞれ18.9 MMTCO₂e、間接排出38.9 MMTCO₂eに達したとしている。
2. 高性能チップほど単位当たりのCO₂排出が高まる
トランジスタあたりの炭素排出量とグリーン実装指標である Carbon Per Transistor (CPT)によれば、CPU 1個あたり60–125 kgCO₂が製造過程で排出されるとしている。製造工程のCO₂排出量は製品の設計段階である程度決まってしまうため、設計と製造プロセスの両方で脱炭素が求められる時代に入ったと言える。特に高性能チップほど製造工程が複雑になり、単位当たりのCO₂排出も高まる傾向がある。
3. 海外で進む「グリーンプレミアム化」
欧州では、域内で生産されるレガシーチップ(自動車用など)が、相対的に環境負荷が小さい。この環境負荷の小ささが欧州企業の強みと認識され、各企業ともこの強みをもとに戦略を展開しつつある。
また、台湾では同国の大手ファウンドリの半導体製造が、2021年時点で国内電力の6.4%を占めている。このため、電力費用削減のためにも再エネ化の必要性が急務とされている。
このように海外では「グリーン半導体」に、価格を上乗せする「グリーンプレミアム」が徐々に形成されつつある。
日系企業の強みとは

それでは、ここで進む「グリーン半導体」における日系企業の強みを各企業ごとにみていく。
1. 東芝:製造過程でCO₂再利用するCO₂電解&「P2C」技術
東芝エナジーシステムズは、工場排ガス中のCO₂をCOに電解変換する装置「C2One™」の実証運転を開始している。この技術には100℃未満の低温で水素も不要という特徴があり、製造過程でCO₂再利用するという新たな技術として注目されている。
2. 東芝:パワー半導体によるCO₂削減
東芝は、電気自動車やインバータ用途に向けたSiCやGaNの次世代パワー半導体を展開しており、エネルギー変換効率の向上によるCO₂削減効果が期待されている。
3. ルネサスエレクトロニクス:工場エネルギー効率改善
ルネサスエレクトロニクスは、2024年にはエネルギー使用量を前年比で6.6%削減した。日本国内工場の効率的な運用と改善を続けたことがCO₂排出削減につながっており、取引企業からの評価が高まりつつある。
4. 課題は再エネ導入や脱炭素投資でのスケールメリットが得にくいこと
では、日系企業の課題は何だろうか。日本の半導体メーカーはファウンドリと比べて量産規模が限られており、再エネ導入や脱炭素投資でのスケールメリットが得にくい。再エネ確保の鍵となるPPA(電力購入契約)制度についても、日本は欧米に比べて制度整備が遅れており、産業全体での連携と制度的な後押しが求められる。
「グリーン半導体」で新たな国際競争力を獲得せよ

半導体業産業が、脱炭素社会の構築に果たすべき責任はますます大きくなっている。この「グリーン半導体」に日本の製造業が持つ強みを生かし、新たな国際競争力を築くことができるか。今後の展開から目が離せない。
※この記事は以下を参考に執筆しました。
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